277002101 海上編 ストーリー2019年7月 パラディーゾ幻想襲来篇Ⅰ 第10幕「絆される悪魔」戦闘前
銃を収め、 飛び去るティファレト
一瞬の静寂が辺りを包む しかし―
【アルマス】 待ちなさいっ!!
マスターが制止する暇もなく、 アルマスはティファレトを 追いかけてしまった
【ヘレナ】 あれぐらいシンプルに考える方が アルマスにとっては いいことかもね
たしかにアルマスらしいと、 マスターは頷く
出会ってまだ一日も 経っていないのに、 そんな風に思えてしまう
ただ、今はそんな風に 考えている暇はない すぐに追いかけないと―
【ヘレナ】 追いかけるのは 待ったほうがいい
走り出そうとしたマスターを ヘレナは手で制する
【ヘレナ】 今はアルマスの好きにさせて 平気さ
【ヘレナ】 アルマスはどうせ 戻ってくるだろうしね
確信ありげな彼女の言葉に マスターも足を止める
【ヘレナ】 理由かい?
【ヘレナ】 簡単に言うと、 アルマスはシンプルな思考だけど、 決して馬鹿じゃない
【ヘレナ】 しばらくしたら、ヘレナ達を 置いて来てしまったことに 気づいて戻ってくるよ
【ヘレナ】 今はマスターと呼ぶ 大事な存在もいるみたいだし
それは…とマスターは 言葉を詰まらせ、 そして小さく頷いた
【ヘレナ】 アナタもいろんなことが あっただろうし、 少し落ち着く時間が必要だろう?
そう言われると、 途端に疲れを感じる
【ヘレナ】 アルマスを待つ間に ゆっくりと休むといい
【ヘレナ】 その間は、本職じゃないけど 警戒をしてあげようじゃないか
本職という言葉が気になり 尋ねると、ヘレナは 目を逸らした
【ヘレナ】 さっき言っていた ディスラプターズ その一人にいるんだよ
【ニール】 そうなの、 アタチとは違って、 偵察とか大得意
たしかにそういう人がいると 助かるね、とマスターは笑う
【ニール】 ちょっと、ヘレナ? 仲間を教えちゃって 良かったの?
【ヘレナ】 ふふっ…大丈夫だよ あの人は単なるお人好しさ 勘ぐることはしてこないよ
【ニール】 騙されやすそうよねぇ さっき目を逸らしたのも、 わざとでしょ?
【ヘレナ】 くふっ…正直者のヘレナが そんなことを するわけないだろう?
【ニール】 ふふっ、そうね アタチ達は 正直者だもの
何かを話している二人を よそにマスターは 小さく息を漏らした
さっきまでの戦闘が嘘のように、 今は波音が聞こえてくる
そうして少し休んでいると、 そういえば…とマスターが 口を開いた
【ヘレナ】 どうかしたかい?
ヘレナに向かって、 マスターはお礼を告げた
【ヘレナ】 ありがとうって、 なにがだい?
アルマスと自分を助けてくれたこと だと答えると、ヘレナは 小さく笑う
【ヘレナ】 言っただろう? 興味があるだけだって 気にしないでいいよ
それは本当のことかもしれない でも、助けてくれたことが ありがたいし嬉しかった
そう告げるマスターの表情を見て、 ヘレナは目を白黒させて、 そして笑った
【ヘレナ】 ふふっ…アルマスといい、 いろいろ企むのが馬鹿みたいだ ふふふっ…
【ヘレナ】 アナタから感謝されるのは… そうだね…悪くないよ
なにも含みがない笑みは、 今までのヘレナのイメージとは 明らかに違っていた
【ヘレナ】 その顔はなんだい?
怪訝そうなヘレナに、 いや…と、マスターは言葉を濁す
【ヘレナ】 くふっ… 仲間であるヘレナに 言えないのかい?
そんなことは…と、 否定したマスターは… 恥ずかしそうに口を開いた
そうやって笑っているのを 初めて見たから、 なんだか可愛いなって、と
【ヘレナ】 っ…アルマスだけじゃなく、 ヘレナにまでそんなこと 言うんだね…
真っ赤に顔を染め、 うつむくヘレナ
【ヘレナ】 これ…なんだい? この、つながる感じ…
かつてのブラックキラーズ達と 似た反応を返すヘレナに、 マスターは説明する
【ヘレナ】 なるほど、ね… アナタの中にあるバイブス それがつながったんだ…
【ヘレナ】 くふっ… たしかにこの力はすごい…
【ヘレナ】 ふぅ… アルマスがあんなに 強くなるのもわかる…
自分を落ち着かせるように 息をはくヘレナは 納得するように何度か頷いた
【ヘレナ】 この力が欲しかったのは事実だけど、 この感情は…予想外だ…
【ヘレナ】 アナタは… いや、アナタなんて呼び方は なんとなく嫌だね
【ヘレナ】 マスター… ううん、言いにくいから 先輩でいいか?
なんだか新鮮な呼ばれ方だ、 とマスターは笑いながらも 頷く
【ヘレナ】 なら、ヘレナが初めてなんだね くふっ…いいね、すごくいい
【ヘレナ】 ヘレナも先輩の力に 今まで以上になるよ
そう言って、 ヘレナはマスターの手を取る
【ヘレナ】 まずは、そうだな… 島を知るにしても そろそろ夜だ
【ヘレナ】 どこか休めるところを 探すとしよう
アルマスを待つんじゃ…? と尋ねるマスターに ヘレナは笑みを返す
【ヘレナ】 アルマスなら、きっと 先輩の身の安全を最優先した ヘレナを褒めてくれるよ…くふっ
そうなのかな? と 半信半疑なマスターだったが、 素直にヘレナの言葉に従うことにする
しかし…
【???】 ヘレナっ! マスターに何してるのよっ!
【ヘレナ】 何って… 先輩の休める場所を 探すんだよ
【アルマス】 先輩って誰のことよっ! もしかして、マスターのこと!?
【ヘレナ】 もちろん 当たり前じゃないか
【アルマス】 そう…それは別にいいわ
【アルマス】 だからって、 マスターの手を 握る必要ないでしょ!?
【ヘレナ】 先輩はこの島が不慣れなんだし、 怪我をしないように 守らないといけないのさ
【ヘレナ】 だから、ずうっとヘレナが 先輩の手を握っておくよ
【ヘレナ】 アルマスは… ヘレナの邪魔をするつもり?
【アルマス】 もう…なんか、あなたまで 変になっちゃってるじゃないっ! いいから一回頭を冷やしなさいっ!
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