290601070 インテグラルノア編(擬彩されし不可逆世界編) 第6章 アナザー・コンフリクト―交錯― 第１話 地上からの来訪者-7
【フライシュッツ】
あ！
ラグナロクちゃ～ん
はぐだよ、はぐ～♪
【ラグナロク】
フライシュッツ、
見回りの帰り？
【フライシュッツ】
そうだよ～っ
みんな、おねーちゃんが守るからね～
【ラグナロク】
無理しないで
休息も戦士の義務よ
【フライシュッツ】
は～い！
【アルマス】 …そういえば、色々あって 聞きそびれてたけど
【アルマス】 フライシュッツとスイハのそれ、 一体、何なのっ？
【ラグナロク】
擬装《イミテイト》のこと？
【アルマス】 いや、名称も初耳なんだけどっ 武具種が変わるなんて… どうなってるのよ？
【フライシュッツ】
おねーちゃんも不思議だったんだ～
あのときは嬉しかったから
受け入れちゃったけど～
【アルマス】 私達ってキラーズによって武具種は 決まってるわよね？ 私なら「剣」みたいに
【アルマス】 フライシュッツが槍を持ったら、 彼女自身の存在が 揺らいでしまうんじゃないの？
【アルマス】 ラグナロクが消えかけたときのような ことになったら大変よっ
【フライシュッツ】
ええ～っ？
あたし、消えちゃうのは
ヤだよー…
【ラグナロク】
二人とも安心して
そんなことにはならないから
【ラグナロク】
そうね
概念的というか、
感覚的なものになるけれど…
【ラグナロク】
アルマス
あなたをあなたたらしめている
ものは何？
【アルマス】 ごめん… いきなり分からないわ 哲学か何か？
【ラグナロク】
例えば、剣なら私の武具も剣よ
ダモクレスもダーインスレイヴも
そうね
【ラグナロク】
では、アルマスと私の違いは何？
【アルマス】 それは…キラーズを抽出した神器の 違いでしょ
【ラグナロク】
では、神器の違いとは何？
【アルマス】 違いって…別物は別物としか 言いようがないわっ
【フライシュッツ】
はいは～い！
おねーちゃんは、
伝承の違いだと思うな～っ
【ラグナロク】
そう
伝承が違う
つまり数多ある剣の中で…
【ラグナロク】
神器アルマスには神器アルマスの
伝承が宿っている
それがアルマスたらしめているもの
【アルマス】 まあ、そうかもね…
【ラグナロク】
それなら、伝承とは何？
【アルマス】 また質問っ？ 伝承は…その神器についての物語とか そういうのでしょ？
【ラグナロク】
大まかに言うと、そう
でも、伝承はすぐには生まれない
長い長い年月をかけて…
【ラグナロク】
人々が語り継いできた物語
それが伝承と呼ばれるようになるの
【アルマス】 まあ、そうね 一朝一夕にはできないわよね それで？
【ラグナロク】
神器から抽出されるキラーズは、
この伝承が核なのよ
【ラグナロク】
伝承にあるアルマスの特長や性質、
それこそが本質なの
【アルマス】 私の性格がキラーズにかなり起因して るっていうのは知ってるわよ
【ラグナロク】
そこが大切
その本質に比べたら、
形状はあまり重要じゃない
【アルマス】 いや、待って！ ちょっと飛躍し過ぎてない？
【アルマス】 だってフライシュッツの神器は 銃なんでしょ？
【アルマス】 伝承だって「魔弾」として 伝えられているはずよ
【ラグナロク】
より正確には「射撃手」ね
「魔弾」はフライクーゲルよ
ねえ、アルマス
【ラグナロク】
逆に聞くけれど、どうして神器は
剣、斧、槍、弓、銃、杖の形でだけ
顕現しているの？
【ラグナロク】
例えばケラウノスの伝承だと、
彼女は神の雷霆…つまり雷よ
銃とは伝えられていないわ
【ラグナロク】
それなのに、神器は銃として
顕現した…どうして？
【アルマス】 それは…何でかしら？
【フライシュッツ】
あ！はいは～い！
誰かがそう願ったからじゃないかな～
銃が良いなって
【アルマス】 フライシュッツ 今、真面目な話してるんだけど…
【ラグナロク】
それが正解に近いと思う
【アルマス】 ええっ？
【ラグナロク】
伝承の中には、はっきりどんな武具か
伝えられていないものもあるの
【ラグナロク】
それらは長い年月の中で、
様々な人々がどういうものなのかを
想像してきたでしょうね
【ラグナロク】
そういった想い…願いの結晶体が
神器として顕現するとき、
分かりやすい形状を取ったのよ
【アルマス】 雷だと分かり難いから、 銃の形で現れたっていうの？ 随分と都合のいい話ね
【ラグナロク】
ええ…
そもそも人類に神器がもたらされた
こと自体、都合が良すぎたわ…
【アルマス】 都合が良すぎた…？
【ラグナロク】
まるで誰かが意図的に
そうしたようにね
【アルマス】 余計、ややこしくなってきた…
【ラグナロク】
そう…
この話は今はやめておきましょう
話を戻すけれど
【ラグナロク】
フライシュッツの本質の部分が
変わらなければ、槍を持っても
存在が揺らぐことはないの
【アルマス】 うーん…
【フライシュッツ】
アルマスちゃん
おねーちゃんを受け入れてよ～…
はぐしてあげるから～っ
【アルマス】 少なくとも、 性格は変わってないみたいね
【ラグナロク】
擬装《イミテイト》だからよ
その槍は誰かの模倣《イミテイト》
【ラグナロク】
フライシュッツ、
擬装するとき誰をイメージしたの？
【フライシュッツ】
えっとね～…
ゲイボルグちゃんだよ～！
必中の力を高めたかったから～♪
【ラグナロク】
フライシュッツはゲイボルグを
模倣して擬装した
【ラグナロク】
でも、槍捌きはフライシュッツ
ならではのものになっている
【アルマス】 本質は変わってないから、 って言いたいんでしょ… 少し分かってきたわ
【アルマス】 それに、消えたりしないのなら 何も文句はないから
【アルマス】 むしろ、少し羨ましいかも 自分を変えることができるなんて
【ラグナロク】
羨ましがらなくても、
私達は変わってきたわ
【ラグナロク】
いえ、変わらざるを得なかったと
言うべきかもしれない…
【ラグナロク】
皆、キル姫になる前は
人間だったはずなんだから
【アルマス】 あっ…！ そうよね… だとしたら…
【フライシュッツ】
アルマスちゃん、
どうしたの～？
【アルマス】 何でもないわ 長々とごめんね それじゃっ
【フライシュッツ】
アルマスちゃん、
おやすみなさ～い！
【ラグナロク】
…………
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