310251211 ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ 蛇の暴威
【ムラマサ】
たぁぁぁっ！！
鬼火を纏った剣を振り、 敵を殲滅する一人の斬ル姫
【ムラマサ】
ムラマサ・獣刻・
ヤマタノオロチと申す！
【ムラマサ】
風を秘めしこの刀を持って、
人々への光を遮る悪しき雲を
吹き飛ばしてみせましょう！
彼女の名はムラマサ
トレイセーマ共和国にいた頃は、 『オーダーキラーズ』に 名を連ねた実力者
その強さから、 マスターの隊でも すぐさま頭角を現した
【ムラマサ】
ふぅ…
この程度の戦など、
準備運動にもなりません…
【ムラマサ】
帰って、食事の準備にでも
取り掛かりましょうか
彼女が獣刻されているのは、 絶大なる力を誇るヤマタノオロチ
それにより大きな自信を手にしたが、 少々厄介な方に向いていた…
料理当番にて…
【ムラマサ】
…え？
塩味が足りないですって？
【ムラマサ】
塩分の摂り過ぎは体に毒、
味の濃いものを美味とするのは、
食として浅はかですよ
自分の味付けが一番だと思い込み、 同じ当番の姫の調理法を認めない
掃除当番にて…
【ムラマサ】
…む、少し磨きが足りないですね
【ムラマサ】
床や家具は磨けば磨くほど、
ツヤと光沢が出ると言うもの
ただホコリを取るだけでは足りませぬ
言っていることには確かに 一理あるものの…
やはり自分のやり方が 最良だと信じ込んでおり、 他の姫のやり方にやたらと口を出す
【ムラマサ】
みなさん、仕事は迅速かつ丁寧に！
それを忘れないようにしましょう！
あくまで丁寧な口調なのだが、 言われ続ける側は堪ったものではない
【ムラマサ】
………ふぅぅぅ
【ムラマサ】
はぁっ！
その口うるささが 最も顕著に出ていたのが 戦闘訓練においてだった
【ムラマサ】
皆、踏み込み過ぎですよ。
【ムラマサ】
無闇に突っ込んでは、
敵に『後の先』を取られる危険性が
高くなります
【ムラマサ】
『後の先』にも対応できるよう、
適切な距離を保つべきです
剣術は、彼女が元来得意だった分野 そのこだわりは相当に強かった
【ムラマサ】
剣の道に“絶対”はありません
とはいえ……
皆の戦い方はあまりに拙いですね
こと戦闘に関しては それぞれに考えも自負もある 姫たちは…
そんな調子のムラマサに とうとう怒りを爆発させた
【ムラマサ】
拙者の指導が…間違っていると…？
ムラマサに他の姫たちが詰め寄る しかし、皆の意見を認めない 彼女は…
【ムラマサ】
だったら…
剣で己の正しさを証明してみせます
【ムラマサ】
誰か一人でも拙者に勝てたら、
その時はそちらのやり方に
従いましょう
尊大な態度を取るムラマサに、 姫たちが一対一の戦いを挑む
【ムラマサ】
ふん！
【ムラマサ】
次！
【ムラマサ】
やあっ！！
【ムラマサ】
次！！
しかし彼女の実力は凄まじく、 誰一人 勝つことは出来なかった
【ムラマサ】
はぁ…はぁ…
【ムラマサ】
やはり…
【ムラマサ】
拙者が正しかったようですね…
そう言い捨て、 立ち去るムラマサだった
そんな彼女を追いかけるマスター
【ムラマサ】
はぁ…！はぁ…！
わたっ、拙者は、間違っていない…
間違ってなど、いない…
彼女は森の奥深くで、 剣の鍛錬に勤しんでいた
【ムラマサ】
！
【ムラマサ】
何奴！？
マスターの気配を感じ、 剣を構えるムラマサ
さすがだね
マスターが、彼女の前に姿を現す
【ムラマサ】
…主君
【ムラマサ】
なにか…御用でしょうか？
【ムラマサ】
え？先刻の件…？
【ムラマサ】
………
【ムラマサ】
主君は…わたっ、拙者が
皆に謝った方がいいと
仰るのですか…？
【ムラマサ】
しかし、拙者は…
なにも間違ってはおりませぬ…
自信を持つことは素晴らしいけど… きみが抱いているのは本当に “自信”なの…？
【ムラマサ】
！！
【ムラマサ】
拙者の思いは…
…自信では…ないと？
【ムラマサ】
………
【ムラマサ】
戦いにおいては強さこそが正義
強さが自信につながるのです
【ムラマサ】
故に拙者は……
【ムラマサ】
間違ってはいません！
その様子に マスターはやれやれと思う
彼女の目は、 まるで蛇のように 頑なだった
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