320021212 アイムール・D. plug・モート 色付き始める景色
【アイムール】 …私は武器です。 目の前の敵を駆逐し捕食する 捕食者とも呼ばれていました
昔話を終えたアイムールは、 はっきりとした口調で、 マスターにそう告げる
【アイムール】 戦いの中でしか、 敵の魂を食らうことでしか、 私の飢えは満たされません
【アイムール】 ですから、マスター 戦闘のご命令をください
【アイムール】 終わることなく繰り返される 煉獄の中にいれば、 私は飢えを忘れられるのです
彼女の言葉から伝わってくるのは、 冷静ではあるが、どこか悲痛な想い
話を聞き終えたマスターは すっと立ち上がった
【アイムール】 マスター? どうなさったのですか 急に立ち上がったりして
小首を傾げるアイムール マスターはそんな彼女の手を引いて どこかへと歩き始める
【アイムール】 ま、マスター? どこに連れて行くおつもりですか?
困惑するアイムールに向かって、 連れて行きたい場所があるんだ と、微笑むマスター
【アイムール】 ご命令とあれば従いますが… あ、あの…お手を繋がなくても 進めるのでは…
アイムールは戸惑いの表情を 浮べながらも、導かれるままに マスターの後ろをついていくのだった
ほどなくして町に着く マスターはアイムールに尋ねる この町は何色に見える、と
【アイムール】 …黒と灰色と白色です それが何か…?
じゃあ、これは何? 今度は、民家に飾られた 花壇を示すマスター
【アイムール】 …それは植物です あの…さっきから何がしたいのか わかりかねます、マスター
青い色の花、とても綺麗なんだよ マスターは小さな花を指して、 アイムールにそう伝える
【アイムール】 …そうですか
こっちの花は黄色い 太陽みたいで素敵だと思わない? と、続けるマスター
【アイムール】 いえ…私はそうは思えません
【アイムール】 …なぜこのような場所に つれてきたのですか? 私は斬ル姫、戦う存在です
【アイムール】 戦いをください 出陣の命令をください、マスター
そう訴えるアイムールに、 なおもマスターは 花を示そうとするが…
【アイムール】 無駄です、マスター 私には、無駄なのです
アイムールは顔をしかめる 彼女はマスターの感情に触れて 嫌悪感を露わにしていた
【アイムール】 あなたのような人に出会い 私はむしろ思い知っております
【アイムール】 私の心には、穴があるのです 暗くて深い、冷たく乾いて ぽっかりと空いた、穴があるのです
【アイムール】 だから相対する敵の魂を奪い この飢えを、乾きを 満たそうとしてきました
【アイムール】 こんな花なんかで 私の飢えが満たされるわけが…
かぶりを振るアイムールに向かって 諭すようにマスターは一輪の花を示す
これは赤い色の花だよ 君の髪の色と同じで とても綺麗な色の花なんだ、と
【アイムール】 …キレイ? さきほどからマスターがおっしゃる 「キレイ」がわかりません
それでも教える 「キレイ」とは 心が満たされることなんだよ、と
【アイムール】 心が…満たされる…? この渇きが、飢えが、 満たされるというのですか…
マスターの言葉を受けて アイムールはふと想像する
もし、もっと前からマスターと 出会えていたのなら
血塗られた過去も、 マスターと一緒ならば 何か変わったのではないか、と…
アイムールはそっと目を閉じ、 過去の闘争を思い出していた
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