320081213 ペルーン・聖鎖・マスティマ 慈悲なき指導
マスターの隊は なんとか危機を乗り切った
敵兵士の追撃を避けるため、 森の奥へと逃れる
【ペルーン】 ……
助けられたことが不本意だったのか もしくは疲労のためか ペルーンの表情は暗い
マスターは ここで一旦休もう と隊の姫たちに指示する
【ペルーン】 そんなの危険よ! このまま森を抜けちゃった方が いいわ!
異を唱えたのは 一番疲弊しているであろう ペルーンだった
マスターが これ以上、無理をするのは危険だ と言うが
【ペルーン】 あたしなら全然大丈夫よ!
明らかに無理をしているのに 強がるペルーン
そこでマスターは 僕の決定だ、これは命令だよ と押し通す
【ペルーン】 ……ふん
命令だと言われ、 不本意ながらも受け入れ 一人で森の奥へと行ってしまう
連日の戦闘で 隊の姫たちも疲弊していた
各々が体を休めている しかし……
【ペルーン】 やぁっ! えいっ!
森の奥から ペルーンの声が聞こえてくる
マスターが見に行くと そこではペルーンが 斧を振っていた
何をしているのかを尋ねると、 手を止めることなく 答える
【ペルーン】 見てわからない? 特訓よ! 見張りを兼ねてね
少し休んだ方がいいと マスターが言うと 逆に素振りの勢いが増していく
【ペルーン】 ダメよ! また、足を引っ張っちゃうわ
【ペルーン】 二度とあんなことがないように 特訓しなくっちゃ!
足を引っ張ってもいいんだよ マスターの言葉に ピタリと動きを止めるペルーン
【ペルーン】 …え?
一人で背負い込むことはない 仲間がいるんだから 助け合えばいいんだよ
【ペルーン】 ……でも
もう少し、周りを頼っても いいんじゃない?
【ペルーン】 誰かに助けてもらうなんて 誰かに頼るなんて 堕落だと思う…
【ペルーン】 堕落は悪よ 悪を退治するのが あたしの正義なんだから…
【ペルーン】 正義を貫けないなら、 あたしは…
正義って、悪を倒すから正義なの? 悪を倒すことでしか 正義って示せないものなの?
【ペルーン】 え? えっと…それは…
ペルーンは マスターの疑問に 答えることができず、戸惑う
僕はね、人を助けることだって 正義なんじゃないかって思うんだ …君がいつもしているような
【ペルーン】 …あたしの…ような?
そう 君はいつも僕たちを助けてくれる 自分がどんなに辛くても
僕にとっては それが正義を貫いているように 見えるんだ
【ペルーン】 ……
それはすごいことだと思うし、 僕もそうなりたいって 思ってるんだ
ねえ、僕にもできるかな? 君みたいに正義を貫くことを そう、問いかけるマスター
【ペルーン】 うん!できるよ! あたしが保証する マスターなら正義を貫けるよ
その言葉を聞いて、 ニコリと笑うマスター
じゃあ、見張り交代 君は休んでてと言うマスターに 目を丸くするペルーン
【ペルーン】 …どういうこと?
人を助けることが僕の正義 だから、君を助けるんだ
【ペルーン】 で、でも…
あれ? やっぱり僕には無理なのかな? 正義を貫くこと
【ペルーン】 …あー、もう わかったわ あたしの負け
その場にペタンと座るペルーン
【ペルーン】 なんか騙されたーって感じだけど 今回はマスターの正義を 貫かせてあげる
ありがとう、と微笑むマスター
【ペルーン】 あーあー 堕落よ 悪だわ
ため息をつくペルーンに 堕落と休息は違うよ と言うマスター
【ペルーン】 …そっか 休息かぁ
【ペルーン】 ふふっ、なんだろ 体だけじゃなくって 気持ちまで軽くなった気がする
誰にも頼ってこなかった彼女は いつもどこか張りつめていた
だが体と心の緊張が解けたことで 眠っていた彼女の力が 目覚めた
『慈悲なき指導』 新しい力が解放された瞬間だった
そんな彼女に、マスターは もう一人で頑張らなくてもいい 今は仲間がいるんだから
何も心配いらないよ 今日はゆっくりと休んで と語りかける
【ペルーン】 …いいのかな
もちろん、とマスターは頷く
【ペルーン】 …だったら
彼女はおずおずと こう切り出すのだった
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