330201202 ピサール・聖鎖・サマエル 失楽園の大蛇
取り乱し、 部屋を出た彼女に マスターが声を掛ける
【ピサール】
…！
マ、マスター
外の風に当たりに行かない？ とピサールを誘う
【ピサール】
…え？今から？
【ピサール】
出掛けるの…面倒くさいよ
だったら…葡萄酒も持っていこうよ
…と、ボトルを出して見せる
【ピサール】
…！
お酒があるなら、料理も欲しいな
そう言って、 厨房でピザを作り始めるマスター
【ピサール】
言っとくけど、わたし…
面倒くさ～い…でしょ？ 手伝わなくて大丈夫！ すぐ作るから待ってて
【ピサール】
………うん
ピザが完成し、外に出た時には、 もうすっかり夜になっていた
【ピサール】
ねぇ…どこ行くの？
ふふ、もうすぐだから …と、返すマスター
目的地への道中、 マスターは気に掛かっていたことを 尋ねてみた
さっき… どうして、あんなに怒ったの？
【ピサール】
…話すの面倒くさいんだけど
そっか…じゃあ…
【ピサール】
…？
教えてくれなきゃ葡萄酒あげないよ？ …と返すマスター
【ピサール】
…！
【ピサール】
面倒くさいなぁ…
そんな意地悪なマスターなんて
いるの？
ふふふ 微笑むマスターに、
【ピサール】
もう…しょうがないな～
彼女が己の心の内を語り始めた
【ピサール】
私の怠情は臆病さの裏返し…
【ピサール】
ハルモニアに使役されていたときは
違ったのかもしれないけど
今はそう…
【ピサール】
実は誰かに傷つけられるのが
とても怖いの…
【ピサール】
傷つけられると
湧き上がる感情が
抑えられなくなってしまう
【ピサール】
心をおおう黒い闇の感情を
殲滅の欲求を
そして隣り合わせの死への衝動を…
【ピサール】
仲間相手であっても
衝動を向けてしまいそうになる
そうだったんだ… もしかして戦闘に 参加しなかったのも…
【ピサール】
うん…その衝動を…
きっと上手く制御できないから…
【ピサール】
敵も味方も関係なく…
全部をメチャクチャにしちゃいそうで…
【ピサール】
とっても…怖いの
そう言って俯いた後、 彼女が顔を上げた
【ピサール】
さあ、約束よ
話したんだから、
葡萄酒ちょうだい
ちょっと待って …と、答えるマスター
【ピサール】
ずる～い！
話したのに、くれないなんて…
くちを尖らせる彼女を制し、 マスターが指さす
【ピサール】
…え？
【ピサール】
……あ！
そこには満天に広がる星の中で 小さいながらも赤く輝き主張する ある星があった
【ピサール】
わぁ…キレイ！
話し込んでいるうちに、 マスターの言う目的地に 到着していたのだった
【ピサール】
ねぇ、あの星って…
火星なんだって、 肉眼でも見えるんだね
【ピサール】
え？火星…？
そう、 きみに聖鎖＜ジェイル＞された 天使サマエルは…
『火星の天使』と 呼ばれているらしいね
【ピサール】
…うん
『火星の天使』を 聖鎖＜ジェイル＞されたきみに…
火星みたいに赤い… 燃える炎のような熱情を 持って欲しいんだ
【ピサール】
熱情…？やっぱり…
怠惰はダメってこと？
きみは自分の力が、 仲間を傷つけるのを恐れて 怠惰に身を落としていた
でも…
【ピサール】
でも…？
それって仲間を思いやれる 気持ちがあるってことでしょ？ だったら、怠惰に逃げなくても大丈夫
【ピサール】
…！
怠惰の奥に隠した… きみの熱い魂を信じてるよ
【ピサール】
！！
【ピサール】
心の奥に隠した…
熱い……魂
マスターの言葉に、 彼女のバイブスが共鳴した
【ピサール】
な…なんだろ…？
【ピサール】
この…心の奥底から
湧き上がってくるような…
熱いものは！
彼女の体が光輝く
【ピサール】
はああああああ！！
まるで魂から溢れ出ているような 大きな闘気！
『失楽園の大蛇 -ガーデン・オブ・エデン-』に 目覚めた瞬間であった
【ピサール】
マスター
【ピサール】
これからは…
恐れずに戦うわ
【ピサール】
だから…！
真剣な瞳でマスターを見つめる
【ピサール】
その葡萄酒、早くちょうだ～い
あら！？ マスターがズッコケる
【ピサール】
だって、喉かわいちゃったんだもん
【ピサール】
それにそんなすぐには無理だよ～
今まで散々怠けて怠け癖ついてるし
そう言いながら、葡萄酒を飲む彼女 彼女を変えるのは、 どうやっても無理なのか…
【ピサール】
…でも
【ピサール】
すぐは無理かもしれないけど…
少しずつ変わっていく
【ピサール】
こうやって、
いつもマスターが
連れ出してくれるのならね
微笑む彼女 その目には、今までには無かった 小さな光が宿っているように見えた
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