330312213 カシウス・獣刻・ウロボロス人気投票ver. 円環より出ずる無限の虚空
【カシウス】 やっ!
かぎ爪がなくても、 やはりカシウスは強かった あっという間に敵兵の数は減っていく
【ハルモニア兵】 うわあああ! 化け物め!
怯える残兵たちに カシウスは語りかける
【カシウス】 怖がる必要はないわ 輪廻に還るだけ…
【ハルモニア兵】 何を意味のわからないことを! 忌まわしき獣の化身め! 神の裁きを喰らいなさい!
強気なハルモニア兵は弓を構え、 カシウスに向けて矢を放つ
カシウスはその矢をわずかな動きで 避けるが、その矢先に爆薬が 仕掛けてあることに気づく
【カシウス】 御館様…っ! 避けて!
カシウスはあわててマスターに 声をかけるが間に合わず、 爆薬はマスターの前で大きく爆ぜた
【カシウス】 ああっ!
直撃は避けたが煙に包まれてしまい、 視界と呼吸を確保しようと、 マスターは後ろに下がっていく
【カシウス】 そっちは、ダメ…っ!
もろくなっている崖は 爆発を受けたことで亀裂が走り、 マスターの足元が大きく崩れる
あっと思った時には、 マスターの体は空中に浮いていた その視界はスローモーションになる
【カシウス】 御館様…っ!
ゆっくりと落下する自分の方に、 あのカシウスが慌てた様子で 駆け寄り、手を伸ばす姿が見えた
【カシウス】 御館様…っ! お願い、手をっ!
マスターは手を伸ばし、 カシウスの手をつかむ その手はひんやりと冷たかった
カシウスの手の冷たさが 気になっていたマスターだが…
肩にぐっと体重がかかり、 崖にぶら下がる形で落下が止まる その痛みで我に返った
【カシウス】 くぅっ…
カシウスの腕に、 マスターの全体重がかかる その表情は苦しそうだった
【カシウス】 いま、引き上げる、から… 少しだけ、我慢して…
その時、無防備なカシウスの背後から ハルモニア兵が弓を構える姿が見えた
カシウス、攻撃が来る!手を離して! と、マスターは叫ぶが、 カシウスはその手を離さない
【ハルモニア兵】 我々は神の守護を 受けています! 悪魔も獣も、すべて粛清します!
【カシウス】 つぅ…っ!
矢の直撃を受け、カシウスは 苦悶の表情を浮かべる
マスターが、手を離して、戦って! 僕のことはいいから! と叫ぶが、カシウスは首を横に振る
【カシウス】 大丈夫… 今、助けるから…
【カシウス】 …はああぁぁぁっ!
カシウスは気合を入れ、 マスターを崖の上へと引き上げた
そして、カシウスは肩で息をしながら 自分の手を見つめていた
【カシウス】 御館様の手は、温かい… ただの体温…それだけ? いいえ、違う…
【カシウス】 これが、温もり… これが、人の命の証… 大切な御館様の命…
【ハルモニア兵】 何をごちゃごちゃと! 獣め…神の裁きを受けなさい!
接近してきたハルモニア兵は、 カシウスに向けて剣を振り下ろす しかし、カシウスはそれを槍で受けた
【カシウス】 わたしは、この優しい温もりを… 御館様を…守る!
カシウスの決意が 新たな力を目覚めさせた
【カシウス】 『円環より出ずる無限の虚空』!!
カシウスの新たな奥義を受け、 ハルモニア兵は殲滅された
やっと動けるようになったマスターは カシウスに駆け寄り、 傷に手を押し当てて止血を行う
【カシウス】 御館様… 無事でよかった…
マスターはカシウスに 申し訳ない、と謝る
【カシウス】 どうして?
自分がしっかり指揮していれば、 カシウスが傷つくこともなかったのに と、マスターは不甲斐なさを詫びる
【カシウス】 御館様…
カシウスはマスターの手に、 自分の手をそっと重ねる
【カシウス】 やっぱり、温かい…
その行動に驚き、あわてるマスターに カシウスは静かに語りかけた
【カシウス】 わたしはただ、この温もりを 守りたかっただけ
【カシウス】 この世の全ては円環の理、 御館様があの場所から落ちたことも、 円環の裡にすぎない
マスターのせいじゃない、と カシウスが慰めていることに、 マスターは少し遅れて気がついた
そんなカシウスに、マスターは心から ありがとう と、感謝を伝える
【カシウス】 見て、御館様 日が昇るわ…
気がつけば日の出の時刻になっており 丘の上からは朝日がよく見えた
【カシウス】 恵みの光がわたしを包む 新たに生まれるという感覚…
【カシウス】 今日という世界の始まりを、 御館様といられることが 何よりも大切…
カシウスは詩をそらんじるように 言葉を紡いだあと、 マスターに向かって微笑む
【カシウス】 御館様は、停滞の輪廻から、 わたしを解き放ってくれた かけがえのない存在…
【カシウス】 もしよかったら… その温もりを、 また感じさせてくれる?
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