340081202 オティヌス・D. plug・オセ 幻惑の独壇場
あれ以来、 オティヌスのいたずらは 影を潜めるようになっていた
【オティヌス】
まぁ、あたしも少し、
やり過ぎていたからね
と、反省の色を 見せている彼女の元に、 またあの斬ル姫が姿を現した
【パラケルスス】
本当にそう思っているのか？
【オティヌス】
…！
…パラケルスス
【パラケルスス】
君の本心を聞かせて欲しい
【オティヌス】
もちろん、主の命令だからね
【パラケルスス】
いいや、
今の君はウソをついている
【オティヌス】
どうしてあなたに
そんなことが分かるんだい？
【パラケルスス】
わたくしは君を研究し続けてきた
本心かウソかくらいは分かる
君は…
【パラケルスス】
心に“なにか”を隠し持っている
【オティヌス】
…なにか…ねぇ
【パラケルスス】
でも、それが
なんなのかまでは分からない
【パラケルスス】
見せてくれたまえよ？
君の…心の底ってやつを
【オティヌス】
…………
【オティヌス】
…やれやれ
研究熱心な学者は厄介だね
【オティヌス】
隠しているものを、
ズカズカ入り込んできて
見せろと言うんだからね
【オティヌス】
いいよ…
話してあげよう
【パラケルスス】
…！
【オティヌス】
まぁ、
どう言えばいいだろうね
【オティヌス】
悪魔の力をドミネイトされても、
あたしは所詮、奴隷で所有物
【オティヌス】
あたしは…
そんな現状が我慢ならないのさ
【オティヌス】
自分が支配されている、
この状況が…ね
【オティヌス】
だからさ、あたしが
イミテーションを騙すのは
【オティヌス】
自分より弱い者をおどかして、
その不満を発散しているだけだよ
【パラケルスス】
…………
【オティヌス】
どう？失望した？
【オティヌス】
深淵とか偉そうに言っておきながら、
あたしの“底”なんて…
浅くてつまらないだろう？
【オティヌス】
だから、もう…
あたしにつきまとうのは
止めた方がいいよ？
そう言って、 パラケルススの前から去る オティヌス
【オティヌス】
…………
その目には憤怒と絶望が 入り混じっているようだった
【パラケルスス】
…失望？
【パラケルスス】
いいえ…やはり君は…
【パラケルスス】
最高の研究対象だ
それから数日が経った
オティヌスの隊は、 敵対する他国への出撃を 命じられていた
【オティヌス】
くっ…！まだ、いるのか！？
雲霞の如く押し寄せる敵の大群に、 苦戦を強いられる斬ル姫達
【オティヌス】
はぁ…はぁ…！
【オティヌス】
ほんとに…
【オティヌス】
イライラするね…！
【オティヌス】
ここにいる全てが
【パラケルスス】
だったら…
【オティヌス】
！！
また君かいっ？
今、君に構っている暇は―
【パラケルスス】
君の真理を…
本性を見せればいい…
【オティヌス】
本性…？
【パラケルスス】
欲望のままに…
もっと深い深い“底”の部分…
心の“深淵”…
【パラケルスス】
闇をさらけ出すんだ
【オティヌス】
…欲望の…ままに…
闇を…
パラケルススの囁きに、 オティヌスの思考が巡り始める
【オティヌス】
イライラするのは誰に対して…？
イミテーション…？
魔人…？
【オティヌス】
いいえ…そうじゃない
今の立場を受け入れている…
【オティヌス】
弱い自分自身！！
【オティヌス】
ああぁぁぁっ！！
刹那！
【敵兵】 うぎゃぁぁぁっ！！
敵の四肢が弾け飛ぶ
オティヌスが狂気の枷を解放したのだ
【オティヌス】
オ前ガ、我ヲ、喚(よ)ンダ
愚カ者ダナ…
魔人に禁止された幻術を駆使し、 敵を惑わせながら… 嬲りながら切り刻んでゆく彼女
【オティヌス】
ふふふっ！どうだい？
オセに騙された者の末路は、
狂い果てて死んでしまうんだ！！
狂気じみたその戦いぶりを 恍惚の表情で眺めているパラケルスス
【パラケルスス】
…いいぞ
【パラケルスス】
美しい…
【パラケルスス】
君の心の底…怒り…悲しみ！
狂おしいほどの絶望！
今を乗り越えたいという願望！
【パラケルスス】
いや！
そんな風に見える今の君の姿も
幻惑なのか！？
オティヌスの狂気に、 パラケルススも感染してゆく
【オティヌス】
はぁぁぁぁっ！！
【オティヌス】
味わうといいっ！
『幻惑の独壇場
-アサシネイトトリック-』！！
オティヌスに蹂躙された敵勢は、 悶え苦しみながら全滅するのだった
【パラケルスス】
ふふっ…己の心の底…
闇をぶちまけたことで、
さらに強力な術を手に入れたか
【オティヌス】
はぁ…はぁ…はぁ…！
【パラケルスス】
…！
パラケルススの前に、 オティヌスが歩み寄る
【オティヌス】
敵をいたぶり殺すって…
とっても気持ちがいい…
【オティヌス】
まるで…
ダメな自分を
引き裂いているようで…
【パラケルスス】
…………
【オティヌス】
ふふ…
自分に絶望すればするほど、
あたしは強くなれるのかもしれないね
【オティヌス】
きみはどう思う？
パラケルスス…
と、狂気を孕んだ目で パラケルススを見つめる彼女
【パラケルスス】
…！
その恐るべき美しさに ゾクッと身震いをするパラケルスス
【パラケルスス】
素晴らしい！
君はもっと強くなるぞ！
【パラケルスス】
君のもっと底が見たい！
もっと深い闇の部分を！！
【パラケルスス】
君はわたくしの…
【パラケルスス】
永遠の研究対象だ！！！
【オティヌス】
ふふ、きみは狂っているね
【オティヌス】
でも…そこまで言われたら、
もっと楽しませてあげなきゃね？
【オティヌス】
ショウはまだまだ…
始まったばかりなんだから
そう言って 妖しげな微笑みを浮かべる彼女は、 狂おしいほどに美しかった
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