510231212 アスカロン・D. plug・レヴィアタン 嫉妬の先に
数日後――
『敵が出た』 報せを受けたマスターの隊は、 その地に向かっていた
山道を進む姫達
【アスカロン】 ………
【アスカロン】 あ、あの…マスター
俯き加減で歩いていたアスカロンが、 遠慮がちに口を開いた
【アスカロン】 今回の戦い…… 私を外してもらえませんか…?
どうして? と尋ねるマスター
【アスカロン】 だって…
【アスカロン】 『大罪の獣』の力も上手く使えず、 仲間のことを羨むばかりで、 チームワークも乱す…
【アスカロン】 そんな私がいたら…
【アスカロン】 め…迷惑ですよね……?
暗い目を落とす彼女
【アスカロン】 私、自分が嫌いなんです… 嫉妬ばかりして…… 結果を出せない自分が…
泣きそうな声を出す彼女に、 マスターは言う いいかい、君の嫉妬は……
――と、その時
【アスカロン】 !!
崖の上からたくさんの落石が!
突然のことで虚を突かれた姫達は、 その下敷きとなってしまう
【アスカロン】 ま、まさか…敵の罠…!?
列の少し後ろを歩いていたため 無事だったアスカロン
【アスカロン】 だ、大丈夫ですか…!?
みんなを救出しようと すぐさま駆け出す
すると、岩の下敷きになった姫が 敵の存在を知らせるように 崖の先を指差す
【アスカロン】 すぐにどけますからっ…! 崖の上の敵も 私がなんとかしますからっ!
次々と岩をどかせていく彼女だが 数が膨大なので、 なかなか進まない
【アスカロン】 うぅ…! 私…本当に自分が嫌いです…!
【アスカロン】 いつも助けてくれる仲間を… 助けられないなんて…!!
そんな彼女の隣に立ち 一緒になってマスターも 岩をどかそうとする
【アスカロン】 マスター… 私……
悔し涙を流す彼女に、 マスターは語る
君は『自分が嫌い』と言ったね 『人が羨ましい』と言ったね?と
【アスカロン】 え?な、なにを……
それは裏返せば、 『人が好き』ということ いいかい、君の嫉妬は……
人を認めているという 証拠なんだよ、と
【アスカロン】 …!
【アスカロン】 人を…認めている……
マスターは続ける そんな自分を好きになって、 認めてあげてごらん
【アスカロン】 自分を…認める…
人が好きな人はもっと伸びる なぜなら人をよく観察し、
自分の足りないものを 人から学んで埋めようとするからね
嫉妬する自分を好きになれたら、 君はもっと強くなれるよ…と
【アスカロン】 ……
【アスカロン】 嫉妬する自分を…… 好きに…
【アスカロン】 わ、私……
【アスカロン】 みなさんが羨ましかった…
【アスカロン】 でも…
【アスカロン】 みなさんのこと、 嫌いなのかと言われたら、 そんなことはありません
【アスカロン】 むしろ…尊敬しています!
岩をどけようとする手に、 今まで以上の力が入り出す
【アスカロン】 私が嫌いだったのは… みなさんみたいに出来ない自分…
【アスカロン】 でもマスターの言葉で思いました…
【アスカロン】 嫉妬で終わらせるんじゃなく、 嫉妬する心すら取り込んで 成長したい…!
【アスカロン】 いつも私を助けてくれる…
【アスカロン】 大好きな仲間のために!!
その瞬間、彼女の体に 不思議な力が宿り始める
それは、 初めて自分自身を 認められた証だった
【アスカロン】 うおおおおおおおおっ!!
【ドラゴン】 ―――――ッ!!
彼女の叫びに共鳴するように、 ドラゴンが咆哮を上げる
【アスカロン】 お願い!
彼女の言葉で、 今まで制御できなかったドラゴンが、 姫達の上に乗った岩を砕き始めた
【アスカロン】 …ありがとう
【アスカロン】 『いなければいい』とか、 ひどいこと言ってゴメンね…
【アスカロン】 あなただって… 認めてもらえなくて、 悲しかったんだよね
【アスカロン】 でも大丈夫… これからはあなたのこと、 ちゃんと大切にするから!
嫉妬の象徴であるドラゴンを 認めてあげた瞬間、 彼女の中で大きな力が覚醒した!
【アスカロン】 はぁぁぁぁぁぁぁっ!!
それはすべての岩を 木っ端みじんに砕き去る
【アスカロン】 行くよ!
頭部に飛び乗り、 敵を目指して飛んで行く彼女
【アスカロン】 ありがとう、マスター
【アスカロン】 私はもう…迷いません!!
【アスカロン】 自分の心を受け入れて… 戦っていきます!!
【アスカロン】 『嫉妬の狂濤』―――――ッ!!
敵を発見した彼女は、 上空からそれを討ち果たすのだった
【アスカロン】 みなさん! ただいま、戻りました!!
戦いを終え、 みんなの元に戻ってきた彼女
ドラゴンから飛び降り、 マスターの前に立つ
【アスカロン】 ありがとうございました! マスターのおかげで、 少し自分を認めてあげられました!
笑顔の彼女に、 じゃあ、もう誰かを羨む必要は ないね?と返すマスター
だが、彼女は言う
【アスカロン】 いいえ、今は…
【アスカロン】 あなたが羨ましいです!
え?なんで? 驚き、尋ねるマスター
【アスカロン】 わかりません
【アスカロン】 どうしてこんなに、 マスターが羨ましいんでしょうか…?
【アスカロン】 でも、不思議と嫌な感じはしないです
マスターを見つめ、照れて微笑む彼女
その目には、 新たな希望の光が宿っていた
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