510462213 ミュルグレス・神令・トール 樹令『諸聖人の術計』
何も入っていない袋を持った ミュルグレスが ピタリと立ち止まる
【ミュルグレス】
あれは、だんちょー？
こんな街中で何してるのかしら
…すごい無防備な背中ね
【ミュルグレス】
…………
【ミュルグレス】
わっ！！
急に大声をかけられて 飛び上がるマスター
【ミュルグレス】
あはははっ！
やっぱりだんちょーの反応が
一番好きだわ♪
【ミュルグレス】
で？
こんなところで何してるの？
ふぅ、と呼吸を落ち着かせてから マスターは持っていた 袋をミュルグレスに見せた
【ミュルグレス】
袋？
中に何が…
【ミュルグレス】
って、なにこれ！
ゴミじゃないの！
そう、ゴミ拾いをしてるんだよ とマスターは微笑む
【ミュルグレス】
ご、ゴミ拾い～？
もしかして、イタズラとかで
汚れたものを…全部！？
【ミュルグレス】
ハロウィンは街中でやってたのよ？
ちょっと掃除したって
焼け石に水よ！
【ミュルグレス】
周りを見て見なさいよ！
だんちょー以外、誰も
そんなことしてないでしょ！
うん、でも拾える分だけでも拾って 綺麗にしておきたいんだ と微笑むマスター
【ミュルグレス】
そんなことして
ミュル達に何の得があるのよ～！
なにも得はないかもしれないけど やっておきたいんだ とマスター
【ミュルグレス】
もう、しょうがないわね
さっさと終わらせるわよ！
空の袋を広げ取り出して 掃除を手伝い始めるミュルグレス
なんだかんだ言いつつも 彼女も掃除をするために 袋を持ってきていたのだろうか
【ミュルグレス】
こ、これはだんちょー達が
お菓子くれるかもって思って
持ってきただけよ！
などと言い訳を言う彼女へ 助かるよ、と微笑みながら マスターは掃除を再開した
はじめはふたりでやっていた 掃除だったが…
その行動に感化されたのか 少しずつ街の人達が集まり、街は 見る見るうちに綺麗になっていった…
【ミュルグレス】
お…
終わったぁ～！
助かったよ、ミュルグレス！ とお礼をするマスター
【ミュルグレス】
…ほんとよ！
こんなことして
ミュルになんの得もないのに！
…そんなことはないかも と顔を上げるマスター
【ミュルグレス】
…え？
どういう意味？
「街を綺麗にしてくれて、 ありがとうございました」 と街の人がお礼を伝えに来た
【ミュルグレス】
ふ、ふんっ
お礼なんて言われても
別に嬉しくもなんとも…
「これは細やかなお礼ですが…」 と街の人は一切れのカステラを ミュルグレスに差し出した
【ミュルグレス】
カステラ…っ！
ミュルの大好物じゃない！
【ミュルグレス】
…って、報酬これだけ！？
ミュル達は街中のゴミを
片付けたのよ！？
【ミュルグレス】
…もぐもぐ
こんなの絶対釣り合わないわ
【ミュルグレス】
まあ、報酬が貰えるとは
思ってなかったから
ラッキーだったとは思ってるけど～
文句を言いつつも しっかりカステラは 食べるミュルグレス
【ミュルグレス】
…っ！
このカステラ
なんだか美味しいわね
これは街の人達からの好意だから 美味しいんだよ、とマスター
【ミュルグレス】
好意…
嬉しいイタズラってやつね？
【ミュルグレス】
…この美味しさを知ってるから
アンタは毎日こんなことできるの？
そうかもね？ とマスターは苦笑する
【ミュルグレス】
ふんっ
余計なことばっか首を突っ込む
だんちょーは信じられないけどね～
【ミュルグレス】
…まぁ、そういうミュルも
アンタに毒されて
こんな苦労、背負っちゃったけど…
【ミュルグレス】
…ま、悪い気はしないわ！
人を喜ばせることを率先して できるようになっていた ミュルグレス
ハロウィンの経験を経た彼女は 樹令『諸聖人の術計』 を身に着けていたようだ
【ミュルグレス】
それにしても、
ミュルがこんなこと
するなんてね…
【ミュルグレス】
あ、そっか！
わかったわ！
【ミュルグレス】
これこそがだんちょーが
仕掛けたイタズラだったのね！
【ミュルグレス】
…ふふっ
やるじゃない、だんちょー！
ミュルグレスはそう言うと 悪戯っぽくマスターへ 微笑みかけるのだった…
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