510471213 戦場ヶ原 ひたぎ 偏差値七十四
【戦場ヶ原】
目を開けていいわよ
言われるがまま そして、満天の星だった
【阿良々木】 ……………………………… ………うおお
【戦場ヶ原】
どうかしら――
阿良々木くん
【阿良々木】 すげえ―― 正直、言葉にならない
【戦場ヶ原】
語彙が足りないのね
【戦場ヶ原】
あれがデネブ。アルタイル。ベガ
有名な、夏の大三角――ね
【戦場ヶ原】
そこから横にすーっと逸れて、
あの辺りがへびつかい座よ
【戦場ヶ原】
だからへび座は、あの辺りに
並んでいる星になるわね
戦場ヶ原が、夜空を指をさして、 滔々と説明する
【戦場ヶ原】
あそこのひときわ明るい星がスピカ
……だから、あの辺りはおとめ座ね
あっちにかに座……
【戦場ヶ原】
これで、全部よ
【阿良々木】 ん……？ 何がだ？
【戦場ヶ原】
私が持っているもの、
全部
【戦場ヶ原】
勉強を教えてあげられること
可愛い後輩と、
ぶっきらぼうなお父さん
【戦場ヶ原】
それに――この星空
【戦場ヶ原】
私が持っているのは、
これくらいのもの
【戦場ヶ原】
私が阿良々木くんに
あげられるのは、
これくらいのもの
【戦場ヶ原】
これくらいで、全部
【阿良々木】 全部……
【戦場ヶ原】
まあ、厳密に言えば、
毒舌や暴言があるけれど
【阿良々木】 それはいらない！
【戦場ヶ原】
それに、
私自身の肉体というのも
あるけれど
【阿良々木】 …………
【戦場ヶ原】
それもいらない？
【阿良々木】 え、いや……その
【戦場ヶ原】
けれど知っているでしょう？
私はその昔――下種な男に
乱暴されかけたことがある
【阿良々木】 ああ……うん
【戦場ヶ原】
あの下種が私にしようとしたことを、
阿良々木くんとするのは、
正直言って、怖いわ
【戦場ヶ原】
私は今、阿良々木くんを
嫌いになることが、
とても怖い
【戦場ヶ原】
私は今、
阿良々木くんを
失うのが怖い
【戦場ヶ原】
でもね――これまで私の人生は
あんまり幸福とは言えないもの
だったけれど……
【戦場ヶ原】
不幸だからこそ、
阿良々木くんの
気を引けたというのなら──
【戦場ヶ原】
それで、よかったと思うの
【戦場ヶ原】
それくらい、私は、
阿良々木くんに
参ってしまっている
【戦場ヶ原】
だから、絶対に何とかするから、
少しだけ、それは待って欲しい
【戦場ヶ原】
だから私が、現時点で
阿良々木くんにあげられるものは
――今のところ、この星空が最後
【戦場ヶ原】
……子供の頃、
お父さんとお母さんと――
私とで、来たことがあるのよ
【戦場ヶ原】
私の、宝物
【戦場ヶ原】
ねえ阿良々木くん
私のこと、好き？
【阿良々木】 好きだよ
【戦場ヶ原】
私も好きよ
阿良々木くんのこと
【阿良々木】 ありがとう
【戦場ヶ原】
私のどういうところが好き？
【阿良々木】 全部好きだ 好きじゃないところはない
【戦場ヶ原】
そう。嬉しいわ
【阿良々木】 お前は、 僕のどういうところが 好きなんだ？
【戦場ヶ原】
優しいところ
可愛いところ
【戦場ヶ原】
私が困っているときには
いつだって助けに駆けつけてくれる
王子様みたいなところ
【阿良々木】 嬉しいよ
【戦場ヶ原】
そう言えばあの下種は、
私の身体だけが目当てだったから
【戦場ヶ原】
――私の唇を奪おうとは、
全くしなかったわね
【阿良々木】 ふうん？
【戦場ヶ原】
阿良々木くん
だから
【戦場ヶ原】
キスをします
【阿良々木】 ………………
【戦場ヶ原】
違うわね。こうじゃないわ
キスを……キスをして……
いただけませんか？
【戦場ヶ原】
キスをし……したら
どうな……です……
【戦場ヶ原】
キスをしましょう、阿良々木くん
【阿良々木】 最終的に、そう落ち着くか
【阿良々木】 こうして―― 今日は記念すべき日になった 僕たちにとって
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