510481211 忍野 忍 たかが時間移動じゃろうが
【阿良々木】 タイムワープって、 そんな簡単にできるもんなのか?
【阿良々木】 ノリでここまで、 言われるがままに ついてきちゃったけど
【阿良々木】 完全にSFの世界じゃねーか
【忍】 アホか、お前様は
【忍】 怪異があるなら 時間移動もあるじゃろ
【阿良々木】 …………
【忍】 しかして儂は 怪異の王とまで呼ばれた、 怪異殺しの怪異
【忍】 やってできんことはないわ
【忍】 よし まあこの鳥居でよかろう
【忍】 混沌を支配する赤き闇よ! 時の流れを弄ぶ球体をいざ招かん!
【忍】 巡りに巡る終末の灯火を ただ繰り返し、 溢れ出す雷で空を満たせ!
【忍】 黒を歩む者、灰を泳ぐ者! 罪深きその忌み名をもって 自らを運び屋とせよ!
ふと見れば―― 内側 鳥居の内側
今にも朽ち果てそうな ただの四角形が―― 向こうの見渡せない、
のっぺりとした黒い壁の ように変化していた
【阿良々木】 なんだよ 異次元にでも 繋がってんのかよ、これ
【忍】 まあそうじゃが
【忍】 初めてやってみたが、 うまくいくもんじゃのう
【忍】 幼女になり、力をほとんど 失ったとは言っても、 さすが儂じゃわい
【阿良々木】 しかしどうだ、
【阿良々木】 異次元を生じさせるほどの力が あるんだったら、それって力を 失ったって言わなくないか……?
【忍】 儂の力ではない 場の力じゃ
【忍】 あの不愉快なアロハ小僧が 言うところの、寄り集まった 怪異の素みたいな
【忍】 霊的エネルギーを、 軽く熱エネルギーに コンバートしただけの話じゃ
【阿良々木】 なんだよ、そのエセ科学
【忍】 ちゅーか急いだほうがよいぞ このゲート、もう一度はたぶん開けん あと一分もすれば閉じてしまうぞい
【阿良々木】 一分?ちょっと待てよ、 まだ心の準備ができてない
【忍】 準備などいらん 普通に飛び込めばよい
【阿良々木】 え? そんな簡単でいいの?
【忍】 そう身構えることではないのじゃ たかが時間移動じゃろうが
【阿良々木】 おっけー、じゃあ行くか!
【忍】 おう!しゅっぱーつ!
【忍】 あ、そうじゃ、お前様
【阿良々木】 なんだよ
【忍】 いや、その時計
【阿良々木】 ん?
【忍】 その腕時計
【忍】 左利きでもない癖に 見栄を張って右手首に 巻いておる、
【忍】 お前様のその腕時計、 ちょっと貸せい
【阿良々木】 そこまで細かく 説明しなくってもわかるわ
【阿良々木】 え? なんで時計を?
【忍】 いいから
僕は言われるがままに、 左利きでもない癖に 見栄を張って右手首に巻いている
僕の腕時計を取り外し、 忍の手のひらの上に載せた
そしてそれを ワンピースのポケットに 仕舞ったかと思うと、
その手を再び僕に差し出してきた
【阿良々木】 ?
【忍】 何をしとるんじゃ
と、その手をもう少し伸ばし、 僕の手を取って来た
指を絡めた恋人繋ぎである
【阿良々木】 お?おお?おおお?
【忍】 いや、この程度で どぎまぎするでないわ
【忍】 トイレも一緒、風呂も一緒、 四六時中生活を 共にしておる癖に
【阿良々木】 いや、でも異性と 手を繋ぐというのは、
【阿良々木】 僕のような生真面目な 人間にとっては、 いつまでもどぎまぎするもんで……
【忍】 やかましい ほれ、さっさと飛び込め
【忍】 儂は時間の観念が薄いので、 お前様のコーナリングに 付き添っていくしかないのじゃ
【阿良々木】 あ、そうなんだ
なるほど ひとりじゃできないのか
【阿良々木】 いいだろう 連れて行ってやるぜ、忍! 未知の世界へな!
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