520051211 グレイプニル 祈りの先
新たな街にやってきたマスターの隊
その地には、古びた一つの教会が…
姫達を宿に向かわせ、 ひとりで入ってゆくマスター
すると、祈りを捧げる ひとりの女性を発見した
【グレイプニル】 ………
互いの存在に気付くも、 相手を邪魔することなく、 黙って祈りを捧げる二人
【グレイプニル】 ………
女性はマスターよりも 先に祈りを終わらせ、 その場を立った
数分後――
お祈りを終わらせたマスターが、 その場を立つ
すると……
【グレイプニル】 こんにちは
彼女は、教会の椅子に座っていた
【グレイプニル】 お待ちしておりました
【グレイプニル】 少し、お話をしながら お散歩でもいかがでしょうか
その後、教会の近くの森を歩く二人
微笑みを見せながら、 彼女はマスターに尋ねる
【グレイプニル】 なにをお祈りしていたのですか?
僕は奏官なんだ、 だからキル姫達の安全をね そう答えるマスター
【グレイプニル】 なるほど、皆の安全を
マスターは続ける 僕は指揮するだけで、彼女達には 苦労ばかり掛けているから
戦いが終わった後には、 せめて心穏やかに過ごせる…
そんな幸せな日々が訪れるように 祈っていたんだよ 笑顔で答えるマスター
【グレイプニル】 ふむふむ
頷きながら聞いてくれている彼女
だが……
【グレイプニル】 それは、とても…… 不幸なことかも知れませんね
…!…どういうこと? 尋ねるマスター
【グレイプニル】 あ、申し訳ございません 自己紹介が遅れました
【グレイプニル】 私の名前はグレイプニル
【グレイプニル】 安心してください 私はあなた様を救いに来たのです
救いに…? 訝し気にマスターは尋ねる
すると、鎖を出現させるグレイプニル 彼女もキル姫のようだ
【グレイプニル】 鎖を通じて感じる、 人々の苦しみ、痛み…
【グレイプニル】 “生”に縛られた人々を 救って差し上げたい
【グレイプニル】 “死”こそが、 苦しみからの 解放かも知れない…
【グレイプニル】 ですから、どうか私を… そして、 “死”を怖れないでください
僕を待っていたのは、 姫達に死を与えるためかい…? 警戒するマスター
【グレイプニル】 そのようなことは致しません
【グレイプニル】 ですが… もし、お望みであれば…
彼女の瞳に、 なにやら“不穏な光”を 感じるマスター
しかし、そんなことに 気を取られていると――
【グレイプニル】 あら……
二人は狼の群れに囲まれていた
【グレイプニル】 知らず知らずのうちに、 彼らの縄張りに 入ってしまったようです
グルルルル …と唸り声をあげ、 牙を見せる狼達
【グレイプニル】 可哀そうに… 飢えという苦しみから 解放してあげましょう
そう言って、彼女が鎖を構えた
…が、次の瞬間
【グレイプニル】 !?
マスターが彼女を庇う形で、 狼の前に立ちはだかった
【グレイプニル】 なにを…?
マスターは答える 縄張りに足を踏み入れたのは僕達だ 不必要に死なせる必要はない
【グレイプニル】 …!
僕も死ぬわけにはいかないし、 君も死なせるわけには いかないからね…と
【グレイプニル】 ………
【グレイプニル】 ふふ、おかしなことを
彼女の目から放たれる “不穏な光”を感じ取り、 逃げてゆく狼達
その後ろ姿を見ながら、 彼女は呟く
【グレイプニル】 なぜ… 幸福から逃げようと するのでしょう
【グレイプニル】 この世は 苦しみと不幸の連鎖
【グレイプニル】 死にこそ… 幸福が宿るのに
そう呟く彼女の目を見て、 マスターは気づく
さっき感じた“不穏な光”の正体…
それは、“死への狂信”だったのだ
狼達は彼女に、 得体の知れない恐怖を感じ、 逃げていったのだろう
そんな彼女にマスターは告げる 君さえ良かったら… 僕の隊に来ない?
【グレイプニル】 …!
【グレイプニル】 ………
突然の意外な誘いに戸惑う彼女
【グレイプニル】 あなた様を救いに来て、 このようなお誘いを受けるとは…
【グレイプニル】 自らだけでなく、 他者の死さえも遠ざける姿勢… そこに答えがあるのでしょうか…
【グレイプニル】 ふふ、あなた様に 興味が湧きました
【グレイプニル】 では、お言葉に甘えて、 暫く厄介になります
こうして、彼女は マスターの申し出を 受け入れるのだった
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