520101212 ライカ これ以上の狼藉は許しません!
【ライカ】 …やはり別世界だけあって 見たことのない新種の物がたくさん 取れましたねぇ
辺りが夕闇に沈む頃 両腕いっぱいに薬草を抱えて 二人は帰路に着いていた
【ライカ】 ふふふっ、こんなにたくさんの収穫 アズサ様喜んでくれるでしょうか…
満面の笑顔を浮かべながら ライカは少しばかり足取りが 軽やかになっていた
喜んでくれるといいね マスターは彼女に賛同するように 優しく言いかけた
【ライカ】 もしもアズサ様に褒めてもらえたら 特別にあなたのことも 褒めてさしあげます!
【ライカ】 特別に、ですからね! ちゃんと光栄に思ってくださいよ!
はいはい、と笑って受け流して その後も他愛のない会話を続けて 拠点へと歩みを進めていた…
しかし、そんな遠足の帰り道のような 和気あいあいとした空気は 一瞬にして崩れ去ってしまう
【ライカ】 …っ!?
ぴたりと足を止め ライカは遠くを見据える
【ライカ】 ど、どうして…っ! 今まではこんなこと無かったのに…
静止した足を、今度は慌ただしく 機敏に動かし駆け抜けるライカ マスターも遅れまいと後を追う
…二人は森を抜けると 思わぬ光景を目にする
【ライカ】 あんなにたくさんの魔獣… 一体どこから…っ!?
それは、ざっと数えても普段の 倍以上の魔獣の群れが拠点へと 向かっているところだった
【ライカ】 まさか…少数だと 我に敵わないと知って
【ライカ】 周りの魔獣を 全て束ねて攻めてきたということ?
【ライカ】 そんな知能があるとは…
【ライカ】 はっ! そんなことより、 みんなが危ない!
【ライカ】 すぐに助けに行かないと!
マスターが止めようとするも ライカはそれを振り切って 魔獣の群れへと単身で突っ込んでいく
【ライカ】 はあああぁぁぁぁぁっ!
轟音と共に土煙が上がり 魔獣たちが空中へと吹き飛ばされる
ライカが一人で奮闘している様子が 遠くから見てもよく分かる
【ライカ】 ここからはっ 絶対に、一歩も通しませんっ!
【魔獣】 グオオオオオオオオオッ!
多対一でありながら 圧倒的な力でライカは魔獣を 蹂躙していく
しかし、どれだけ倒しても 魔獣の数は減らず 少しずつ彼女の顔に曇りが見えてくる
【ライカ】 ま、まだまだ…っ! これくらいで折れたりはしません!
そう気炎は吐くも 徐々に疲弊していくライカ
【魔獣】 グオァッ!
【ライカ】 しま…っ!? 後ろから…っ!!
集中力が途切れたライカは 背後からの攻撃に反応が遅れてしまう だが…
【ライカ】 りっ、リーダーさん!
間一髪、ギリギリでマスターが その攻撃を受け止める ライカに損傷はなかったが…
【ライカ】 リーダーさん… 大丈夫ですか…っ! 今すぐ手当を…っ!
ははっ、大丈夫だよ ちょっと痛かったけどね と笑って見せるマスター
その様子にホッと 息をつくライカ
【ライカ】 ですが、依然、 ピンチは続きますね…
いや、もう大丈夫だよ、と マスターが言う
しかし、 その間にも魔獣は数を増やし こちらに迫ってくる
【魔獣】 グオオオオッ!?
【ライカ】 魔獣がっ!? 援軍か…
援軍が到着 危機を脱出した
実はライカが飛び出していた時に マスターが援軍を要請していたのだ
【ライカ】 皆さん… 我たちを助けに…
状況が落ち着くと ライカは大慌てでマスターに 応急措置を施す
【ライカ】 リーダーさんの処置が終わったら 我もすぐに戦闘へ戻ります
戦場へ駆け出そうとする ライカの手を掴み、 マスターは微笑む
ここにいるときは 皆の力を頼ってもいいんだよ 一人で頑張りすぎないで、と
ライカも仲間の中の 一人なんだから、と続ける
【ライカ】 リーダーさん… あなたは、優しい方ですね…
【ライカ】 こんな不器用な我でも そうやって優しく受け入れてくれる…
まるで、アズサ様みたい… ライカの脳裏にその言葉がよぎる
その瞬間、ライカはあることを 思い出す
それは初めて彼女と 会った時のこと…
【ライカ】 …昔、初めてアズサ様に 叱られたときも、こういう風に 優しく怒ってくれました
【ライカ】 あの時のアズサ様と、あなたは なんだかちょっぴり似ている 気がします…
【ライカ】 あの…リーダーさん… こんな我ですけど、これからも よろしくお願いします
それは彼女の中にマスターへ対する 尊敬の念が生まれた瞬間
アズサに向ける忠誠心とは別に 一人の人間として、敬いたい そんな純粋な気持ちだった
そして、それと同時に 援軍が魔獣達の一掃を 完了する
マスターは、そんな彼女に こちらこそよろしく。と 笑顔で返したのだった
Next: 520101213