520321213 神原 駿河 自転車よりも速い脚
【戦場ヶ原】 神原、久し振り 元気そうで何よりね
戦場ヶ原は言った
彼女は、彼女の想いを 口にする
【神原】 私は、 戦場ヶ原先輩が、好きだ
彼女は、彼女の願いを口にする
【戦場ヶ原】 そう 私はそれほど好きじゃないわ
【戦場ヶ原】 それでも、そばにいてくれるのかしら
【戦場ヶ原】 いっぱい待たせて、 ごめんなさいね
全く―― かませ犬もいいところだった
我ながら、あつらえたような 三枚目を演じたものである
戦場ヶ原ひたぎが、どれだけ強欲で、 諦めの悪い女なのか ということくらい、
僕はとっくに知っていたはずなのに
それが本当に大事な物だったなら 戦場ヶ原が、 諦めるわけがないのに
大きなお世話、余計なお節介 ありがた迷惑
しかし、まあ……
それでも、なんというか、 全くもってどいつもこいつも、 本当に、ひねくれるよなあ――
翌日、
意気揚々として戦場ヶ原の家に 向かおうと、門扉を開けて 家から出たところで
何故か柔軟体操をしている 少女に、出会うことになった
【神原】 おはよう、阿良々木先輩
【阿良々木】 ……おはようございます、 神原さん
【阿良々木】 で、何か用なのか?
【神原】 うん、今朝戦場ヶ原先輩から 電話があって、阿良々木先輩を 迎えに行くように言われたのだ
【神原】 あ、鞄を持たせてくれ
【神原】 さ、行くぞ、先輩
【阿良々木】 ……しかしお前、 部活はいいのかよ
【阿良々木】 日曜だって 練習はあるはずだろう?
【阿良々木】 ほら、そろそろ 試験休みなんだから、 気合入れてかないと
【神原】 いや、バスケットボールは、 もうできないのだ
【阿良々木】 え?
【神原】 少し早いが、引退だ
【神原】 全てが中途半端だったからな
【神原】 悪魔は去ったが、結局、 腕は元には戻らなかったのだ
【神原】 いくらなんでも、 この腕でバスケットボールを 続けるわけにはいかないからな
【神原】 でもまあ、これはこれでパワフルで、 結構使い勝手はいいみたいだぞ
【阿良々木】 ……僕の鞄を今すぐ返せ
なんというか
半分とはいえ、 願いが叶ったのだ
それくらい、 当然の代償のようだった
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