530281212 ヘレナ・D. plug・ロキ 破滅を穿つ狡智の風釘
あの日以来、 ヘレナの様子は 少しずつ変化していった
【ヘレナ】 みんなで遊びに…? う~ん、止めておく
【ヘレナ】 今日は気が乗らないんだ …くふっ
姫達とあまり触れ合わなくなり、 相談にも乗ってくれないように なったのだ
マスターは、再びヘレナの元を訪れる なにか悩んでいることがあるなら、 教えて欲しい、と
【ヘレナ】 ………いいよ
彼女が、その理由を語り始めた
【ヘレナ】 先輩の隊は… 初めはいい隊だと思った
【ヘレナ】 でも一緒に過ごしていくうちに、 なんていうか…
【ヘレナ】 ベタベタと馴れ合いがひどくて、 うっとうしいと 思うようになったんだ
【ヘレナ】 だから、もうあんまり 一緒にいたくない それだけだよ…くふっ
マスターは尋ねる それは嘘だね?と
【ヘレナ】 ……え?
【ヘレナ】 嘘なんかじゃないよ
【ヘレナ】 どうして、そう思うんだ?
気づいてないかも知れないけど、 君は嘘をつく時、 癖が出るからね、とマスター
【ヘレナ】 …癖?
君は今も仲間を大切に思ってる そうでしょ? とマスターは尋ねる
【ヘレナ】 そんなことはないよ ヘレナは本当のことしか 言ってないから
【ヘレナ】 行こう、ニール
悲し気な目を浮かべ、 ニールと共にヘレナは去っていった
そして……
そこから離れた場所で一人佇む彼女
【ヘレナ】 ………
じっとなにかを考えている
【ヘレナ】 どうして、 あんな嘘ついたんだろう…?
【ヘレナ】 いや、理由は分かってる
【ヘレナ】 それは……
――と、その時
【ヘレナ】 …!
遠くの一点を見つめるヘレナ
【ヘレナ】 …!
さらに背後に気配を感じる
【ヘレナ】 …あ
どうしたの? それは、偶然そこを通りかかった 同じ隊の姫だった
【ヘレナ】 ……
【ヘレナ】 ………なんでも…ない
【ヘレナ】 それより先輩が アナタを呼んでたから、 早く帰った方がいいぞ
【ヘレナ】 なんでも重要な用事があると 言っていたからな…くふっ
とだけ言い残し、 ヘレナはどこかへと行ってしまった
【ヘレナ】 …はぁ…はぁ…!
姫に嘘をついて駆けてきた彼女
その先には…
【ヘレナ】 くっ!あんなにたくさん…!
大勢の敵が、 町に向って進行していたのだ
【ヘレナ】 ニール、いくぞっ! ヘレナに磔にされたい 相手はどこだ!?
単身、戦いを挑むヘレナ
【ヘレナ】 はぁぁぁぁっ!!
だが……
敵の圧倒的物量の前に、 徐々に形勢を逆転され始める
【ヘレナ】 はぁ…はぁ…!
【ヘレナ】 やれやれ…こんなことになるなら、 さっきの子も連れてくればよかったな …くふっ
【ニール】 ヘレナ、これ以上はダメよ! 早く戻りましょ!
強がるヘレナに近づく敵の影
満身創痍の彼女の背後から、 攻撃が振り下ろされた……
【ヘレナ】 …!!
…が、 そこから救ってくれたのは、 隊の姫達だった
【ヘレナ】 みんな…!
【ヘレナ】 それに…先輩!
敵を相手に戦う姫達
マスターはヘレナに近づき、尋ねる どうして、仲間に嘘ついたの? こんなにたくさんの敵が来てたのに
【ヘレナ】 そ、それは……
仲間を失うのが怖いから? ヘレナの目を見据え、 マスターが尋ねる
【ヘレナ】 !!
君が嘘を付いていたのは… 自分の本心を隠すため
みんなと仲良くなり過ぎたら、 失った時が怖いから 嘘をついてたんだね?
【ヘレナ】 ………
さっき姫に嘘をついたのも、 巻き込んで彼女を失うのが 怖かったんでしょ?と
【ヘレナ】 どうして……わかるんだ…?
マスターは答える だって、君は… 嘘で人を傷つけたことがないから
【ヘレナ】 …!
君の嘘はいつもみんなを驚かせたり、 和ませたり、笑わせるための 嘘だったから…と
【ヘレナ】 先輩……
そして、彼女にこう告げる
もし君がみんなのことを思って 行動して、死んでしまったら、 僕達はとても悲しい
これからも共に戦って、 共に生き抜いていきたい だって僕達は…仲間だからね
これは…嘘じゃないよ ……と
【ヘレナ】 !!
【ヘレナ】 ……なか…ま…
【ヘレナ】 ……だったら、 もっと早く助けに来てよ まったく…頼りない仲間だ
【ヘレナ】 ……くふっ
涙ぐんだ彼女の嘘に 微笑む姫達
涙を拭い、ヘレナは叫ぶ
【ヘレナ】 いくぞっ!! これがみんなにもらった 神をも凌駕する力…
【ヘレナ】 『破滅を穿つ狡智の風釘』だーっ!!
ヘレナは姫達と協力し、 敵を殲滅するのだった
その後……
マスターの隣に腰掛け、 自分の想いを語るヘレナ
【ヘレナ】 先輩の言う通りだ
【ヘレナ】 ヘレナは… 仲間を失うのが怖くて、 距離を置いて付き合ってた
【ヘレナ】 自分が傷付きたくなくて 嘘をついて付き合ってたんだ
【ヘレナ】 本当は… みんなことが大好きなのに
【ヘレナ】 先輩は、そんなヘレナを ずっと見てくれてたんだな
【ヘレナ】 ずっと信じてくれてたんだな
【ヘレナ】 ふふっ
微笑んだ後、マスターの目を見つめ、 彼女は呟いた
【ヘレナ】 嘘つきなヘレナを信じるなんて、 先輩はとんだお人好しだな
【ヘレナ】 でも……これだけは言っておく
【ヘレナ】 ヘレナを受け入れてくれて、 あ…ありがとう
はにかんだその笑顔に、 もう嘘はなかった
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