530331213 羽川 翼 普通でしょ
場には、黒髪の羽川と、 僕とが、残された
羽川には意識はない―― 眼を瞑って、 眠っている
恐らく明日の朝まで起きないだろう
まあ、こうして道端で、 羽川を見ながら、
羽川と共に夜を明かすのも 悪くはない……
【羽川】 う、ううん
と 羽川が音を立てた 寝言らしい
【羽川】 阿良々木くん…
あるいは―― それは寝言というよりは、 意識が朦朧として、
言葉がただ漏れているだけ なのかもしれない
だから、寝言ではなく―― 本音だ
羽川翼の飾り気ない本音が、 漏れている
【羽川】 私との友情よりも 私に恩返しをすることの方が
【羽川】 ずっと大事だなんて―― そんな寂しいこと、 言わないでよ
【阿良々木】 …………
【羽川】 阿良々木くん…… きちんとしなさい
そして再び―― 深い眠りに落ちる彼女
とことん―― 真面目が堂に入っている
三年生になってから、 伊達に二ヵ月、羽川に 躾けられてきたわけじゃない
こういうときに どう答えるべきかは、 これでもわかっているのだ
【阿良々木】 はい
そんなわけで翌朝
僕は学校に行く前に 学習塾跡へと向かった
学習塾跡に忍野はいなかった
まあ、留守は留守 仕方ないは仕方ない
ということで、 僕は忍を影に潜ませたままで、 学校へと向かった
教室で羽川と会った
【羽川】 あ
【羽川】 遅かったね
【阿良々木】 寄り道してたもんでな
【羽川】 元気?
【阿良々木】 超元気
【羽川】 おはよう
【阿良々木】 おはよう
【阿良々木】 羽川にどのくらいのまでの 記憶が残っているのかは、 僕はまだ知らない
【阿良々木】 いつかは訊かなくては ならないことだが、 それは今ではないだろう
【阿良々木】 羽川にも、 心の整理整頓をする時間が、 必要なはずである
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