540013212 アルテミス・疑彩 罪と罰と
ある日、 マスターの隊で 問題が起こった
【アルテミス】
陣形を崩してはいけません！
すぐに後方支援を！！
一人の姫が戦闘に遅れたことで、 戦局は著しく悪化
【アルテミス】
大丈夫！
前は私が引き受けます！！
【アルテミス】
まだ道半ば…
理想の世界創造のため…
こんなところでは終わらせません！！
【アルテミス】
はぁぁぁぁぁっ！！
機転を利かせたアルテミスの采配と、 彼女自身の奮闘のおかげで 何とか勝利を収めた
だがアルテミスは…
【アルテミス】
…喜んでいる暇はありません
アルテミスは踵を返し、 遅参した姫の元へと向かう
そして、彼女の前に立つと アルテミスは彼女に向け、 弓を構えた
な、なにするつもり！？ 慌てて、アルテミスの前に立つ マスター
【アルテミス】
理想の世界に残るべき者の選定です
なぜ、そんなことを！？ 叫ぶマスターに彼女は返答する
【アルテミス】
それが私の使命であり、
全てですから
矢を引く手に力が込められる
ダメだ！ 姫を守ろうと両手を広げ、 立ちはだかるマスター
隊の他の姫たちも、 仲間を守ろうと武器を構える
【アルテミス】
…なぜ、そこまで
きっと、なにか理由があるはずだ！ そう言って、遅れた姫に 理由を問いただすマスター
彼女はこのところ、いつもどこかに 出掛けて行っていたのを マスターは知っていた
だが、その姫は黙ったまま、 理由を述べようとしない
【アルテミス】
マスター、
そこをどいてください
それは出来ない！！ 断固、拒否するマスター
【アルテミス】
マスターが
そこまで言うのなら…
仕方ありませんね
【アルテミス】
今回だけは、見逃してあげましょう
ただし、次は期待しないでください
弓を下ろす彼女
何の解決の糸口も見つからぬまま、 その場は解散となってしまった
数日後――
【アルテミス】
ふぅ…ふぅ…
また一人で特訓をしているアルテミス
マスターはそんな彼女の元を訪ねる
【アルテミス】
……マスター
【アルテミス】
はっきりと言わせて頂きます
マスターを睨み、彼女が告げる
【アルテミス】
あの子は…やはり始末すべきです
【アルテミス】
マスターには黙ってましたが、
私はこれまで…
【アルテミス】
理想の世界に不要…
そう判断した者を
この手で剪定してきました
【アルテミス】
その姿勢は、今も変わりません
…ですから、規則を破るような者は
剪定しなくてはならないのです
マスターは答える そんな辛そうな目で言われても 困るな、と
【アルテミス】
！！
【アルテミス】
…え？
驚くアルテミス
マスターは続ける
君がいつも一人で、 常軌を逸したような過酷な 特訓をしているのは、
これまで剪定してきた人たちに 申し訳ないと思っているから じゃないの？…と
【アルテミス】
………
マスターの優しく穏やかな目で 見つめられ、アルテミスが 己の心の内を語り始めた
【アルテミス】
誰かに心の内を
見透かされたのは…
初めてです
【アルテミス】
私には理想の世界があります
それを創るため、戦ってきた…
【アルテミス】
でも…
【アルテミス】
マスターの言う通り…
剪定者である己の使命に…
思い悩んでいます
【アルテミス】
理想の世界の為とはいえ、
不要と断じた者に
手を掛けなければいけない事に……
【アルテミス】
苦しみと…悲しみを…
感じているんです…
【アルテミス】
私は理想を掲げ、
誰かの命を奪い、
生き永らえ続けている…
【アルテミス】
でも一体なんの権利があって、
そんなことが許されるのでしょう…？
悲痛な表情で 拳を握り締めるアルテミス
彼女は命を奪った者達への贖罪
そんな自分を痛めつけたい気持ちで、 常軌を逸するほどの激しい特訓に のめり込んでいたのだ
【アルテミス】
私は…
これから、どうすれば…
俯く彼女を連れ出すマスター
【アルテミス】
ど、どこに行くんですか…？
人々で賑わう街
マスターが連れてきたのは、 先の戦いで遅れてきた姫の ところだった
あの日、 彼女はなぜ遅れてきたのだろう？ 見てごらん、とマスター
【アルテミス】
…え？
促され、ある家の中を覗くアルテミス
【アルテミス】
…あっ
中には、 身寄りのない老婆の世話をする 姫の姿があった
【アルテミス】
彼女は…なぜ、あんなことを…？
マスターは答える
誰に頼まれたわけでもない 弱き者を救いたい一心で、 身の周りの世話をしているんだよ、と
先の戦いの時は、 老婆が急な発熱に襲われたため、 応急処置を施していて遅れたそうだ
そして、まだ回復はしておらず、 あの姫は看病のため、 足しげく通っているのだ
【アルテミス】
そ、そんなことが…
アルテミスは思う
【アルテミス】
あの日、彼女の行動は、
間違っていたの…？
【アルテミス】
お婆さんを見捨てて戦闘に参加し、
勝利を重ね、そうやって理想の世界に
近づくことが正しかったの…？
【アルテミス】
分からない……
私は………
苦悶の表情で、 彼女は尋ねる
【アルテミス】
一体、なにが正しいのでしょうか…？
私がこれまで行ってきたことは…
過ちだったのでしょうか…？
それは… 答えを考えようとするマスター
しかし、アルテミスには その間もなく 危機が迫る
【アルテミス】
！！
マスターの答えを 聞く間も無いまま、 敵が襲来！
【アルテミス】
…くっ！
【アルテミス】
理想の世界のために…！
弓を手に取る彼女
【アルテミス】
でも…私の理想とは…
心に葛藤を抱えたまま、 彼女は戦場に出ることと なったのだった
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