540081212 オティヌス・暴走 終局を煽情する歓心の狂弓
マスターに誘われ、 隊に入ったオティヌス
【オティヌス】 よろしくね
しかし、姫達は 反対したのに…と、 心配な様子
マスターだけは、 まあ様子を見ようよ、 と穏健な態度だった
…だが、
【オティヌス】 わっ!
【オティヌス】 あははは♪ビックリした? 朝だからって気を抜き過ぎ~
【オティヌス】 あんまり油断してると、 後ろから射貫いちゃうよ♪
相変わらず イタズラをする日々
――そして、深夜
【オティヌス】 あれ?
【オティヌス】 マスター起きてたんだ? あらら残念
【オティヌス】 せっかく、濡れタオルを 顔に乗せるって 悪戯しようと思ったのに
姫達の心配通り、 彼女のイタズラの被害に 遭いまくるマスター
【オティヌス】 あははは! さてと、お次は…♪
彼女のイタズラは、 マスターだけでは飽き足らず、 姫達にも及ぶように…
【オティヌス】 あはははははは!! 引っ掛かった~♪ そのリアクション、最高だね!
最初は我慢していた姫達
しかし、 エスカレートしていく イタズラに対し、次第に…
【オティヌス】 ………なに? 怒ってんの…?
【オティヌス】 ………
【オティヌス】 …あ、あはははははは!!
【オティヌス】 いいね、そのリアクション!
なんで、こんなことするのっ!? と、彼女を問い詰める姫達
【オティヌス】 ………なんで?
【オティヌス】 前にも言ったでしょ?
【オティヌス】 あたしは、 人が絶望する顔が見たいの
【オティヌス】 あんた達の顔…最高だよ
その言葉に怒りを感じる姫達
【オティヌス】 …なに?やる気?
両者の間に、 一触即発の空気が流れる
――と、
は~い、そこまで! 仲裁に入るマスター
【オティヌス】 ……ふん
【オティヌス】 せっかく楽しかったのに、 しらけちゃった
そう言って、 オティヌスは、 その場を後にするのだった
【オティヌス】 ………
草原で一人、佇むオティヌス
すると……
わっ!!
【オティヌス】 ……! ……マスター
あれ?あまり驚かないんだね? マスターが彼女を追ってきた
【オティヌス】 どうして、ここに…?
君に聞きたいことがあったから と、マスター
【オティヌス】 聞きたいこと…?
ずっと気になってたんだ 姫達も言ってたけど、
どうしてイタズラばかりするの? そう尋ねるマスター
【オティヌス】 何度も言わせないでよ
【オティヌス】 あたしは、みんなが絶望する顔が…
だったら…どうして、 姫達にイタズラをした後、 悲しげな目をしてたの?とマスター
【オティヌス】 ……え?
教えてよ、 君がイタズラをする…本当の理由を 真っすぐに彼女を見据える
【オティヌス】 ………
【オティヌス】 …わかった、教えてあげる
【オティヌス】 でも…後悔しても知らないよ
彼女が、自身の過去を語り始めた
【オティヌス】 あたしは昔、奏官に仕えてたの
【オティヌス】 当時のマスターはお調子者でさ… 人を驚かせて、その驚く顔を 見るのが好きな人だった
【オティヌス】 そんな、あの人の口癖は…
【オティヌス】 『壮大なイタズラをして、 世界中の人達を驚かせてみたい』
【オティヌス】 …だからかな? アイツと気が合ったのは…
【オティヌス】 アイツとは… うまくやってける気がしてた
昔を思い出すように、 遠くを見つめる彼女
【オティヌス】 でも、あの日… すべてが変わったの……
【オティヌス】 町で起こった大きな火災…
【オティヌス】 あたしとアイツは、 懸命に町の人達の避難や、 消火活動を手伝ったんだ
【オティヌス】 でも…
【オティヌス】 火事が落ち着いた途端、 火災はあたし達2人のイタズラが 原因だと決めつけられたの
【オティヌス】 助けてもらっておきながら…
【オティヌス】 人間はあたし達を 殺そうとしたんだ…
【オティヌス】 そして、あたしを庇ったアイツは…… 人間達に殺された
【オティヌス】 その時、心の中で弾けたの…
【オティヌス】 人間なんて… 世界なんて滅べばいい… って感情が…!
【オティヌス】 それからのあたしは、 死んだように生きていた…
【オティヌス】 でも、絶望の中で思い出したの アイツの言葉を……
【オティヌス】 『壮大な悪戯をして、 世界中の人達を驚かせてみたい』
【オティヌス】 だから、あたしは決めた
【オティヌス】 アイツの願いを受け継いで、 世界中の人間を驚かせよう
【オティヌス】 世界を終わらせるという… 壮大な悪戯で…!
【オティヌス】 ……ふふふ
【オティヌス】 あはははははは!!
彼女がイタズラを仕掛ける理由…
そこに、そんな壮絶な 過去があったなんて… 言葉を失うマスター
【オティヌス】 どう?わかった? そんなあたしを隊に置いとくわけには いかないでしょ?
【オティヌス】 そういうわけだから… じゃあね
マスターの前から、 いや、隊自体から去ろうとする彼女
その背中に向かって、マスターは言う 世界を終わらせる? 君はそんな風には出来ていないよ、と
【オティヌス】 ………
【オティヌス】 どうして、そう思うの…?
答えるマスター だって、君が仕掛けたイタズラで 姫達が絶望した顔を見せた時…
君は悲しそうな目をしているから、と
【オティヌス】 ……!
君がイタズラする本当の理由は、 絶望なんかの為じゃない
本当は…みんなが好きだから みんなを楽しませようと してたんでしょ?と、マスター
【オティヌス】 そ、そんなこと…! あたしは世界を壊したくて 壊れていくのを見るのが嬉しくてっ
そう思い込まないと 絶望に飲み込まれてしまうほど 心が苦しいからじゃないのかな
【オティヌス】 そ、そんなこと…!
不器用だから、それが みんなに伝わっていないのは 歯がゆいけど…
イタズラを仕掛けている時の君は、 とても楽しそうだ
君が楽しそうだと… 見ているこっちも楽しくなるよ そう言って微笑むマスター
【オティヌス】 !!
衝撃を受けた顔を見せる彼女
どうしたの? そんなに驚かせるようなこと 言った?と尋ねるマスター
【オティヌス】 ………
【オティヌス】 ビックリしたよ だって…
オティヌスが楽しそうだと、 見ているこっちも楽しくなる
【オティヌス】 それって… アイツがよく言ってた 言葉だから…
昔のマスターに、 今のマスターを重ねる オティヌス
マスターは彼女に語り続ける
君は、前の主を失った 喪失感と絶望から、 人類を終わらせようとしている
だから、みんなを遠ざけようと しているみたいだけど… でも大丈夫だよ、僕は死なない
【オティヌス】 ………
そして必ず… この世界を驚かせてみせる
終わりじゃなくて… 平和にすることでね、と
そう語るマスターを 真っすぐに見据える彼女
そして、ふと気づく
【オティヌス】 ………あれ?
【オティヌス】 なに、これ…?
マスターの言葉に、 涙ぐんでいたことに
【オティヌス】 …ったく、 そんな綺麗事ばっか 言っちゃって…
【オティヌス】 だったら…見届けてあげる
【オティヌス】 ほんとにそんなこと できるのか…
【オティヌス】 あたしがあんたのそばで
宣言するオティヌス
その目には、 希望の光が灯り始めていた
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