550272211 フライシュッツ・擬装・ランサー 絡みつく恐怖
いつも通りの朝 明るい声が響き渡る
【フライシュッツ】 え~いっ、 おはようのはぐだよ~、 はぐ~♪
…と、隊の姫たちに 抱き着いて回る一人の姫
【フライシュッツ】 うふふっ、 これでおねーちゃん、 今日も一日がんばれちゃう♪
彼女の名は、フライシュッツ・ 擬装(イミテイト)・ランサー
最近、マスターの隊に やってきた新入りだ
誰にでも人懐っこい彼女 食事の時も…
【フライシュッツ】 はい、あ~んだよ、あ~ん♪
【フライシュッツ】 ええ? 恥ずかしくないよ~ これも信頼の証なんだから~
【フライシュッツ】 おねーちゃんにも、してくれる?
距離感も近く、 ボディタッチも多く、
【フライシュッツ】 ありがとう~ じゃあ、はぐしよう、はぐ ぎゅ~~~♪
事あるごとに「はぐ」をする
そういうスキンシップが 苦手な姫もいるが、特に 嫌われているといったわけではない
むしろ、その明るい性格のため、 みんなから好意を持たれていた
だが…
【フライシュッツ】 えぇ~、どうしてダメなの~?
抱き着いている フライシュッツから 逃れようとするラグナロク
【ラグナロク】 風紀の問題よ 誰彼なしに抱き着くのは 感心しないわ
マスターがいるためか、 いつもはされるがままの ラグナロクが注意を口にする
マスターにも同じことを していることがさすがに 見逃せないと思っていたらしい
【フライシュッツ】 も~、 ラグナロクちゃんは 真面目だな~
【ラグナロク】 そんなことより、 調子はどうなの? “新しい力”の方は
【フライシュッツ】 …!
明るかった彼女が、 一瞬真顔になった
【フライシュッツ】 心配してくれるの? ありがとう
【フライシュッツ】 おねーちゃんは大丈夫だよ みんなのこと、 守りたいもんね♪
また瞬時に、 明るい笑顔を返す彼女
【ラグナロク】 ……そう
ラグナロクは 真剣な表情のまま頷き、 立ち去ってしまう
【フライシュッツ】 ……
その様子を 見ていたマスターは なにかが引っ掛かっていた
それから暫くして、 フライシュッツが入隊後、 初めての戦闘がやってきた
そこでマスターは、 意外な光景を目のあたりにする
【フライシュッツ】 ………
いつもは陽気でお気楽な フライシュッツが、 物憂げな表情をしていたのだ
【フライシュッツ】 ………
【フライシュッツ】 ど、どうしよう…
自信無さげに オドオドしている彼女は 全く戦いに集中できていない
そんな調子だから、 上手く戦果を上げられることも できなかった
【フライシュッツ】 ………だめだぁ
戦闘後――
フライシュッツの元を 訪れるマスター
【フライシュッツ】 ……はぁ
大丈夫? マスターは、 肩を落とす彼女に声を掛けた
【フライシュッツ】 ……マスターくん
元気ないね? マスターの問いに、 彼女が答える
【フライシュッツ】 上手くできなかったから…
…と、槍の柄を握る彼女
彼女は元来、 銃の使い手だった
だが、 イミテイトの影響により、 槍を扱うようになっている
マスターは言う まだ新しい力を得てから、 間もないんでしょ?
上手く扱えなくて当然だよ、と
【フライシュッツ】 そうじゃないの…
【フライシュッツ】 上手くできないことは、 練習すればいつか上達する…
【フライシュッツ】 でも、おねーちゃんには無理…
【フライシュッツ】 だって、おねーちゃんには…
【フライシュッツ】 “呪い”が掛けられてるから…
いつも陽気でお気楽な彼女
その目から、涙がこぼれていた
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