560111212 ヴァナルガンド・聖鎖・サリエル 自分らしくあるために
心の中の…獣……? 緊張しながら尋ねるマスター
【熊】 グルルルル…
マスターを見据える巨大な熊は、 今にも飛び掛かってきそうな 迫力がある
【ヴァナルガンド】 はい、わたしの中の獣…… それは…
…ゴクリ 緊張を噛み殺すマスター それは…?
【ヴァナルガンド】 怠惰の獣です
……え?た、たいだ…? 予想とは違う答えが出て、 力が抜けるマスター
【ヴァナルガンド】 は、はい…つまり… 怠け者の獣です……
【熊】 クアァァァ…
大きなあくびをする熊に、 顔を赤らめるヴァナルガンド
怠惰の獣が暴走するって、 どういう意味…? マスターが尋ねる
【ヴァナルガンド】 はい…わたしが司る 『七つの大罪』は“怠惰”です
【ヴァナルガンド】 心の中の「怠けたい」と言う気持ち… そんな獣の想いが強くなって
【ヴァナルガンド】 主を守るという任務を 放棄してしまうんじゃないか…
【ヴァナルガンド】 それがとても怖いんです……
でも君は頑張ってくれているよ? と励ますマスター
【ヴァナルガンド】 今はサリエルの力で みなさんを仕切ろうと、 なんとかやってますけど…
【ヴァナルガンド】 元々のわたしは 決して勤勉な方じゃないから…
【ヴァナルガンド】 いつ心の獣が 暴れ出すんじゃないかって…
【ヴァナルガンド】 すごく心配なんです
【ヴァナルガンド】 だから己を律し続けなければと… 気を張り過ぎてしまい……
【ヴァナルガンド】 でも、そのせいで… 邪視まで使って、 仲間を傷つけようとするなんて……
【熊】 ………zzz
スヤスヤと眠ってしまった熊の隣で、 苦悩するヴァナルガンド
【ヴァナルガンド】 あぁ…わたしはどうすれば……
わかった!じゃあ…と 立ち上がるマスター
【ヴァナルガンド】 なにかいい方法があるんですか?
気晴らしに、街に遊びに行こう! そう彼女に提案した
【ヴァナルガンド】 も~、だから サボっちゃダメなんですってばぁ~!
口を尖らせる彼女を 連れ出すマスター
お茶をしたり、 買い物をしたりして過ごす
【ヴァナルガンド】 だからサボッちゃ…!
【ヴァナルガンド】 ダメ…
【ヴァナルガンド】 なんですけど……
【ヴァナルガンド】 で、でも……
始めは「サボることはいけない」と 言っていた彼女も、
【ヴァナルガンド】 うふふ…うふふふ
今じゃ、 すっかりと楽しんでいる様子だ
そんな彼女にマスターは言う
【ヴァナルガンド】 え?なんですか、マスターさん?
穏やかな、 いい顔になってるよ、と
【ヴァナルガンド】 …!
【ヴァナルガンド】 ………
その言葉を聞き、 彼女は我に返る
【ヴァナルガンド】 サボることで、 心穏やかになるなんて…
楽しそうだった彼女の顔が曇った
【ヴァナルガンド】 主を守るキラープリンセスを 名乗る資格はありませんね…
ショックを受ける彼女に、 マスターは優しく告げる
やるべきことをやらずに 怠けるのは“怠惰” だけど…
休まないで働き続けて、 本来の自分の姿を見失うのも“怠惰” …とする考え方もあるみたいだよ、と
【ヴァナルガンド】 ……!
目から鱗が落ちるヴァナルガンド
【ヴァナルガンド】 そう……なんだ…
【ヴァナルガンド】 わたしは今まで怠けないよう、 サボらないよう、 必死に自分を戒めてきました
【ヴァナルガンド】 でも、その考え方は 間違っていたんでしょうか
【ヴァナルガンド】 本当の怠惰とは… “本当の自分の姿になること”を 怠けるという意味だったんですね…
【ヴァナルガンド】 少し難しいですけど…
【ヴァナルガンド】 本来やりたいことをやらず、 本来の自分から永遠に逃げることこそ 真の怠惰…
【ヴァナルガンド】 …そっか… …そういう考え方もあるんだ
俯き、考え込んでいた彼女が 顔を上げた
【ヴァナルガンド】 マスターさんの言葉で、 心がスッと軽くなりました
【ヴァナルガンド】 これからは――
…と言い掛けた時、
【熊】 ……!
【ヴァナルガンド】 話してる途中だったのにぃ
目の前に、敵の大軍が出現した
しかし彼女は焦ることなく、 穏やかな笑みを浮かべ言う
【ヴァナルガンド】 任せて下さい、マスターさん
【ヴァナルガンド】 わたしの真の姿… 真の力を解き放ちます
【熊】 グアァァァッ!!
【ヴァナルガンド】 行こう!!
Next: 560111213