560341211 八九寺 真宵 わたしは八九寺真宵です
少女八九寺は看板に向かっている
先手必勝とばかりに、 僕はその後頭部を 平手ではたいた
【八九寺】 な、何をするんですかっ!
【阿良々木】 ようやく、 振り向いてくれたか
【八九寺】 後ろから叩かれたら 誰でも振り向きますっ!
【阿良々木】 いや、お前、 なんか困っているみたいだったから、 力になれるかなと思ってさ
【八九寺】 いきなり小学生の頭を 叩くような人に、なってもらうような 力なんてこの世界にはありませんっ!
【八九寺】 全くもって皆無ですっ!
【阿良々木】 いや、だから悪かったって えっと、僕の名前は、 阿良々木暦っていうんだ
【八九寺】 暦ですか 女の子みたいな名前ですね
【阿良々木】 …………
【八九寺】 女臭いですっ! 近寄らないでくださいっ!
【阿良々木】 で、 お前はなんて名前なんだ?
【八九寺】 わたしは、八九寺真宵です わたしは八九寺真宵といいます
【八九寺】 お父さんとお母さんがくれた、 大切なお名前です
【八九寺】 とにかく、話しかけないでくださいっ! わたし、あなたのことが嫌いですっ!
【阿良々木】 なんでだよ
【阿良々木】 別に僕はお前に危害を 加えたりしないよ
【阿良々木】 この町に住んでいる人間で、 僕くらい人畜無害な奴なんて、 一人もいないんだぜ?
【八九寺】 わかりました
【八九寺】 警戒のレベルは下げましょう
【阿良々木】 そりゃ助かるよ
【八九寺】 では、人畜さん
【阿良々木】 人畜さん!? 誰のことだ、それは!?
【八九寺】 怒鳴られましたっ! 怖いですっ!
【阿良々木】 いや、怒鳴ったのは 悪かったけれど、 でも、人畜さんは酷いって!
【阿良々木】 誰でも怒鳴るって!
【八九寺】 では、何とお呼びしましょう
【阿良々木】 そりゃ、普通に呼べばいいよ
【八九寺】 ならば、阿良々木さんで
【阿良々木】 ああ、普通でいいな 普通最高
【八九寺】 わたし、 阿良々木さんのことが 嫌いです
【阿良々木】 …………
【八九寺】 迅速にどっか 行っちゃってくださいっ!
【阿良々木】 いや……、だからお前、 迷子なんだろ?
【八九寺】 この程度の事態、 わたしは全く平気ですっ!
【阿良々木】 意地張ってんじゃねえよ
【八九寺】 意地なんて張ってませんっ
【阿良々木】 張ってるじゃん
【八九寺】 喰らえっ!
言ったと思うと、 八九寺は僕の身体に向けて、
全体重を乗せたハイキックを 喰らわせてきた
【阿良々木】 ぎゃあーーー!
僕はすかさず、 八九寺の足がヒットした直後に、 両腕でかかって、
その足首、ふくらはぎの辺りを、 抱え込んだ
【八九寺】 しまりました!
僕は、片足立ちで不安定な姿勢に なったところの八九寺を、 容赦せず、
畑で大根でも 引き抜くかのような形で、 思い切り引き上げた
そのまま一気に背負いあげる
――決まった 八九寺は背中から地面に、 叩きつけられた
【阿良々木】 全く、馬鹿な奴め―― 小学生が高校生に勝てるとでも 思ったか!
【阿良々木】 ふははははははははは!
【阿良々木】 小学生女子を相手に本気で 喧嘩をして、本気の 一本背負いを決めた末に、
【阿良々木】 本気で勝ち誇っている 男子高校生の姿が、 そこにはあった
【阿良々木】 ていうか僕だった
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