560341212 八九寺 真宵 失礼。噛みました
【阿良々木】 ときに、八九寺
【八九寺】
なんでしょう、
阿良々木さん
【阿良々木】 この住所――
メモをポケットから取り出す
【阿良々木】 ――の、場所には、 一体何があるんだ？
【八九寺】
ふーんだっ
話しませんっ
黙秘権を行使しますっ
【阿良々木】 ………………
【阿良々木】 教えねーと、 連れていってやんねーぞ
【八九寺】
別に頼んでませんっ
一人で行けますっ
【阿良々木】 でもお前、迷子だろ？
【八九寺】
だったら、なんですかっ
【阿良々木】 いや……八九寺、 あのな、後学のために 教えてやるけれど、
【阿良々木】 そういうときは、 誰かを頼ればいいんだよ
【八九寺】
自分に自信が持てない
阿良々木さん辺りは
そうすればいいですっ
【八九寺】
気の済むまで
他人を頼ってくださいっ
【八九寺】
でも、わたしは
そんなことをする必要がないんですっ
【八九寺】
わたしにとってはこの程度、
日常自販機なんですからっ！
【阿良々木】 へえ……定価販売なんだな
【阿良々木】 わかりましたよ、お嬢様 お願いです、
【阿良々木】 この住所の場所に一体何があるのか、 どうかわたくしめに 教えてくださいませ
【八九寺】
言葉に誠意がこもってませんっ
【阿良々木】 妹なら二人とも、 この手で確実に落ちるんだが……
【阿良々木】 八九寺は 馬鹿な子供をあしらうようには
【阿良々木】 いかないというわけか 全く、どうしたものだろう
【阿良々木】 お嬢ちゃん、お小遣いをあげよう
【八九寺】
きゃっはーっ！
なんでも話しますっ！
【阿良々木】 馬鹿な子供だった
【八九寺】
その住所には、
綱手さんという方が
住んでいます
【阿良々木】 ふうん ……で、 どういう知り合いなんだ？
【八九寺】
親戚です
【阿良々木】 親戚ね
【阿良々木】 母の日くらい、 家で親孝行してればいいのに
【火憐】 ――兄ちゃんは、そんなことだから そんなことだから―― いつまでたっても
【八九寺】
阿良々木さんに
言われたくはありませんっ
【阿良々木】 いや、 お前が何を知ってるんだよ！
【八九寺】
なんとなくですっ
【八九寺】
阿良々木さんこそ、
日曜日の朝から
【八九寺】
公園のベンチで
ぼーっとしてるなんて、
【八九寺】
まともな人間のやることとは
思えませんが
【阿良々木】 別に ただの、ツーリングだよ
【八九寺】
ツーリングですかっ
格好いいですっ
【阿良々木】 ま、自転車でだけどな
【八九寺】
そうですか
ツーリングと言えば、
やはりバイクですよねっ
【八九寺】
とても惜しい感じですっ
【阿良々木】 学校が校則で免許の取得を 禁止しているからな
【阿良々木】 でも、どっちみちバイクは 危ないからな、 僕はクルマの方がいいや
【八九寺】
そうですか
でもそれですと、フォーリングに
なってしまいますよねっ
【阿良々木】 この子、ツーリングのスペルを かなり面白く勘違いしてる……
【阿良々木】 でも、本当にややこしいな、 この辺の道
【阿良々木】 お前、 よくこんなところ、一人で 来ようと思ったもんだよ
【八九寺】
別に初めてではないですから
【阿良々木】 そうなのか じゃあ何で迷うんだよ
【八九寺】
……久し振りだからです
そういえば、阿良々々木さんは――
【阿良々木】 々が一個多いぞ!?
【八九寺】
失礼。噛みました
【阿良々木】 気分の悪い噛み方 してんじゃねえよ……
【八九寺】
仕方がありません
誰だって言い間違いを
することくらいはあります
【八九寺】
それとも阿良々木さんは
生まれてから一度も
噛んだことがないというのですか
【阿良々木】 ないとは言わないが、 少なくとも人の名前を 噛んだりはしないよ
【八九寺】
では、バスガス爆発と
三回言ってください
【阿良々木】 それ、人の名前じゃないじゃん
【八九寺】
いえ、人の名前です
知り合いに三人ほどいます
【八九寺】
ですからむしろ、
かなり一般的な名前であると
思われます
【阿良々木】 バスガス爆発、 バスガス爆発、 バスガス爆発
【八九寺】
夢を食べる動物はっ？
【阿良々木】 ……バク？
【八九寺】
ぶぶー
外れですっ
【八九寺】
夢を食べる動物
それは……
【八九寺】
……人間ですよ
【阿良々木】 うまいこと言ってんじゃねえよ！
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