60221203 ツクヨミ 『月影ゆりかご』
あれから数日たったある日
マスターはツクヨミの部屋で 慣れない作業に四苦八苦していた
時刻は昼過ぎ 窓から差し込む日が眩しい時間に ふたりせっせと手作業に勤しむ
【ツクヨミ】
お人形はね、いっぱい想いを込めて
作ってあげると、本当に心が宿るの
【ツクヨミ】
大切な気持ち、大事な思い出…
それを形に変えて
ずっと手元に置いておける
【ツクヨミ】
それって
とても素敵なことだと思わない？
話ながらも、彼女の手先は 休まず動き続けている
そして時折、苦戦続きのマスターに ツクヨミは笑顔で手を差し伸べる
【ツクヨミ】
あー、ダメダメ！
それじゃ途中で糸が絡まっちゃう！
【ツクヨミ】
ここはね？
こうやって、こうやって〜
あっ…
不意に指先が触れ ツクヨミが慌てて手を離す
【ツクヨミ】
あ、えっと…
彼女はそんな自分の行動に 不思議そうに手のひらを眺めていたが 不意に嬉しそうに笑みを浮かべた
【ツクヨミ】
…なんだかね、マスターと一緒だと
すっごく安心するの
【ツクヨミ】
まるでおねえちゃんやスサノオくんと
いる時みたい…なんでだろ？
そう言って、ツクヨミが慈しむように たった今触れた手を胸に抱く
その刹那、淡くも温かな光が ふたりの間を繋ぐように広がる
それは、ツクヨミが新たなスキル 『月影ゆりかご』 に覚醒した瞬間だった
【ツクヨミ】
…よし、できた！
ふたりで作った初めてのお人形！
【ツクヨミ】
う〜ん、出来の方は
もうちょっと頑張れるかな？
【ツクヨミ】
でもでも、これはわたしが
この世界で初めて作った
新しい宝物
【ツクヨミ】
お人形作り
手伝ってくれて、ありがとね
【ツクヨミ】
もしも…もしも、マスターが
良いなら…
【ツクヨミ】
これからもこうやって、
いっぱい思い出を形にしていこうね
そう言って彼女は、できたばかりの 人形をぎゅうっと抱きしめる
その表情はこれまでに 見たことないほど 幸せそうで
だからか、マスターは思わず 彼女の言葉に頷きを返していた…
Next: 60231201