60291214 エンメル 浄化の器
【エンメル】 いい天気ね、マスター! 風が気持ちいいわ
エンメルに誘われ、 散歩に来たマスター
隣を歩くエンメルの足取りは軽く、 スキップでもしそうな勢いである
【エンメル】 気分転換って大事よね いつも戦ってばかりだと 気が滅入るもの。そう思わない?
それはそうだ 常に気が張り詰めていては、いつか 破裂してしまう
唐突な誘いではあったが、 エンメルの気遣いに感謝をする マスター
【エンメル】 お礼なんかいいのよ 兄さんはいつも、決めたら 立ち止まらなくなるタイプだったから
兄さん? と聞き返すマスター
【エンメル】 ああ…元の世界にね、いるの 私の兄さんが
元の世界に未練があるの、と 問いかけるマスター
【エンメル】 未練…はないかな でも、あなたといると思い出すの 兄さんのことを
【エンメル】 年齢も外見もタイプも全然違うのにね …不思議
【エンメル】 …うん! 兄さんはきっと大丈夫 私、信じているから
【エンメル】 さ、この話題はこれでおしまい! ねえマスター、お腹空かない?
朝から何も食べていないことに 気づくマスター
【エンメル】 この間のお礼に…はい!!
エンメルの手には、 弁当の包みが握られていた
【エンメル】 座って食べよう? あなたのために作ったの 喜んでもらえるといいけど
腰を下ろし、エンメルの作った弁当を 眺めるマスター
見た目がものすごく個性的だ
【エンメル】 遠慮しないで、さあどうぞ!
弁当を一口、口に運ぶ 感想を告げる前に むせてしまうマスター
【エンメル】 あ…あれ…? …そういえば… 味見しなかった…かも…
【エンメル】 …!! …これは…
気持ちは嬉しい、と返すマスター しかし、エンメルはすっかり 落ち込んでしまったようだ
【エンメル】 はあ…良かれと思ったのに… ごめんなさい…
【エンメル】 …慣れないことは するものじゃないわね
きっと、まだこの世界の調味料に 慣れていないからだ、とマスターは 慌ててフォローする
そして、マスターはこっそりと 持って来た調味料を取り出す
【エンメル】 え…それ…?
朝、たまたま料理をするエンメルを 見かけて、万が一の時のために 持って来たことを告げるマスター
【エンメル】 あれ…料理したことないって バレてたの? 恥ずかしいなあ…もう…
持って来た調味料をエンメルの弁当に そっと添え、再び口に運ぶマスター
思った通り、味が整う エンメルにもそれを勧めるマスター
【エンメル】 …うん これなら、食べられなくない… かな
【エンメル】 …あなたには敵わないわ いつも、私のことを助けてくれる
仲間なんだから助けるのは当たり前 もっと頼っていいよ、とマスター
【エンメル】 頼ってばかりじゃダメだけど… そうよね、この世界に もう少し慣れるまでは…
【エンメル】 もう少し、頼らせてもらおうかしら
もちろん、とマスターは言う
【エンメル】 戦うことだけじゃなくて…日常でも あなたは、助けてくれるのね
仲間だから そうマスターは力強く告げる
【エンメル】 ありがとう …その気持ちに、応えたいって思うわ
【エンメル】 この力、あなたのために振るいます そう、ここに誓う…
【エンメル】 だから、これからもよろしくね マスター
そう言い放つエンメルの笑顔が あまりにも眩しく、マスターは 目を細める
そして、照れ隠しのように 一緒に弁当を食べよう、と 慌ててエンメルに言うマスター
【エンメル】 ふふ、そうね
穏やかな時間をエンメルと 二人で過ごすマスター
その穏やかさと、空腹が満たされた 心地よさで、眠くなってしまう マスターであった
【エンメル】 少し眠る? いいわ、私がそばについてるから
【エンメル】 だから、安心して?
Next: 60301211