60321211 オルフェウス 手に入れた夢のかけら
【オルフェウス】 その日、 あたしは出会ってしまった――
【オルフェウス】 誰の記憶にも残らない そんな呪いのせいで あたしはいつだって、独り
【オルフェウス】 そんなあたしの中に響く 声のような、知らない誰かの音
【オルフェウス】 その音は、ずっとあたしに “世界を救わなければならない” と言っているように聞こえる
【オルフェウス】 不思議と自分でも 世界を救わなきゃって思う 使命感に駆られてるってやつ
【オルフェウス】 でも、こんなあたしに 何ができるっていうの…?
【オルフェウス】 いっそ死んでしまいたい
【オルフェウス】 何もできない自分が嫌で嫌で そんな思いが浮かんだ――
【オルフェウス】 でも、その日 あたしは音楽に―― 彼女に出会った
【???】 ~~~~~~~♪
【オルフェウス】 きれいな歌声… それに格好いい旋律…
思わず声に出ていた しまった、とオルフェウスは 口元に手をあてる
【???】 ちーっす! この辺じゃ見ない系だね
オルフェウスに気付いた少女は ごく自然な流れでオルフェウスに 話しかける
【オルフェウス】 え? あ…その…
必要だからする会話ではない 何気ないやりとりは久しぶりだ そう思うと声が出ない…
【???】 あ、ごめーん! 急に話しかけられたら ビビるよね
【???】 よかったら、ゆっくり 聞いてってよ 観客は多い方がアガるからさ
どうせ明日になれば 自分のことは忘れられてしまう
…なら、いいか
【オルフェウス】 観客って…他に誰もいないよね?
【???】 あたしはね 世界に向けて歌ってるの だから世界そのものが観客なんだ!
言っていることの壮大さに 呆気にとられるオルフェウス
【???】 とりま、一曲聞いてってよ
【オルフェウス】 う、うう……
【???】 ちょっ、マっ… 泣くほどかな~っ
少女の指摘でオルフェウスは 自身が涙を流していることに気付く
理由はわかるようでわからない
ただ、辛くて辛くて どうしたらいいかわからなくて
【???】 でも、そういうときは 思い切りギター弾いて 大声で歌うの!
少女の声がぼんやり、 しかしはっきりと オルフェウスの中に入ってくる
【???】 あたしは音楽があれば 大丈夫だって思えるんだ
【???】 だから、あなたも 思い切り弾いて、歌いなよ
【オルフェウス】 その後、 あたしは彼女に名前を聞いたら 彼女はリュディと名乗った
【オルフェウス】 あたしも名前を教えた そしたら、無性に悲しくなった
【オルフェウス】 どんな言葉を伝えても 想いを伝えても、明日には 忘れられてしまうことに気付いて
【オルフェウス】 そう、リュディは あたしの名前すら忘れてしまう
【オルフェウス】 これほど自分の呪いを 憎んだ日はなかったと思う
【オルフェウス】 でも、それすらどうでもいい あたしはリュディに出会えて 嬉しかったし――
【オルフェウス】 ……悲しかった
【異族】 グギャアアア!
【オルフェウス】 危ない!
異族に襲われていた人をかばい 立ちふさがるオルフェウス
【オルフェウス】 この人、奏官みたいだけど キル姫もいなくてひとり… まるであたしみたい
【オルフェウス】 下がってて! ちょっと八つ当たりしたい 気分だから、巻き込まれないでね!
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