610144211 ティルフィング 思い出を巡る旅路
長きに渡って続いていた 揺らぎによる騒動は 一旦の解決をみた
【ティルフィング】 さぁ、行きましょう マスター
その全てを見届けた ティルフィングは、 マスターと二人、旅に出た
ここまでにあった様々な出来事… それらを追憶しながら、 新たな未来へと向かう旅
行き先は特に決めていない
気の向くまま、心の赴くまま、 風の吹くままに二人は歩を進める
【ティルフィング】 新鮮です
【ティルフィング】 こんなにも穏やかで、 心安らぐ時間があったなんて
優しい笑顔を浮かべ、 少し遠くを見つめながら、 感慨深そうに彼女が語る
【ティルフィング】 もう…
【ティルフィング】 どれほどの 時が流れたのでしょう
【ティルフィング】 マスター、 アナタと出会ってから
【ティルフィング】 長く、深く、とても濃密な時間…
【ティルフィング】 今でもはっきりと思い出せます
【ティルフィング】 始まりは、そう…
【ティルフィング】 天上世界
【ティルフィング】 アナタと出会ったのも、 戦いの中
【ティルフィング】 思えばずっと、 苛烈な時を共に 過ごしてきましたね
【ティルフィング】 だからこそ、こんな時間が…
【ティルフィング】 とても愛しいです
――と、彼女が不意に指を差した
【ティルフィング】 見て下さい、マスター
それは、 様々なスイーツが並ぶ 小さなお店
【ティルフィング】 ちょっと覗いてみませんか?
いいね、とマスターが頷き、 二人は、店の中へと入っていった
【ティルフィング】 わぁ…! こんなにも、たくさんのデザートが
彼女が目を輝かせる その姿は、普通の女の子そのものだ
【ティルフィング】 美味しい
試食をしながら、 嬉しそうに頬を押さえる彼女
【ティルフィング】 とても…懐かしいです
懐かしい? このチョコは新商品らしいよ? マスターが尋ねる
【ティルフィング】 チョコが大好きな 『彼女』のことを 思い出したんです
【ティルフィング】 小さな、小さな… でも、とても心の強い 私の大切なお友達
それって…
【ティルフィング】 えぇ
【ティルフィング】 デュリンです
【ティルフィング】 彼女がいたから、 私はなんとか折れずに、 やってこられた
【ティルフィング】 マスターと初めて出会った頃…
【ティルフィング】 私には記憶がありませんでした
【ティルフィング】 キラーズの呪いを恐れ、 誰とも関わらないように 生きてきました
【ティルフィング】 そんな私を変えてくれたのが、 マスター
【ティルフィング】 それに、デュリン
【ティルフィング】 そして… 仲間の 多くのキル姫たちでした
【ティルフィング】 思えば、あの頃は…
【ティルフィング】 人々たちが抱いている 『願い事』というものが、 とても気に掛かっていました
【ティルフィング】 私自身はキラーズの影響で、 大きな願いを叶えると、 呪いが掛かると信じて…
【ティルフィング】 願い事なんて、 とても、とても…
【ティルフィング】 でも…
マスターの顔を真っすぐに見つめて、 彼女が言う
【ティルフィング】 あれから、 たくさんのことを 願えるようになりました
【ティルフィング】 そして、叶えることも出来ました
【ティルフィング】 ほら、今もこうして…
【ティルフィング】 マスターと旅が出来ています
【ティルフィング】 こんなに幸せなことはありません
そう言って、彼女が微笑んだ
店を出ると、 もう日は傾き、 すっかり夕刻になっていた
【ティルフィング】 …きれい
【ティルフィング】 こんなにも穏やかな気持ちで、 夕景を見るのは初めてかも知れません
【レーヴァテイン】 ……あ
【ゼロ】 よう、まさかこんなところで 出会うなんてな
【ティルフィング】 レーヴァ、ゼロ!
【ゼロ】 二人して空なんか見上げて 何してんだ?
【ティルフィング】 地上世界の空も赤かったなと 思い出していました
【ゼロ】 そうだったな…
ゼロとレーヴァテインも 空を見上げる
四人は過去を辿ってゆく
【ティルフィング】 ようやく天上世界での 戦いを終えたと思った後――
【ティルフィング】 向かったのは、 赤い空の世界…地上世界
【ゼロ】 あのとき、お前たちが 降りてこなかったら 俺たちは全滅してただろうな
【ティルフィング】 そこでも戦いの日々でしたね
【ゼロ】 ああ 壮絶だった…
夕焼けを眺めながら、 彼女は過去を振り返り、 大切に言葉を紡いでいく
【ティルフィング】 でも…そんな時でも、 いつもそばにいてくれたのは マスター
【ティルフィング】 アナタでした
夕日を見ながら、マスターが言う 同じ空でも全然、違って見える
【ティルフィング】 地上世界は荒れ果て 多くの建物や自然も 破壊されてしまいました
【ティルフィング】 あの頃は天上世界で 美しく咲き乱れた 花畑が恋しくなって…
【ティルフィング】 それも今となっては、懐か――
【ティルフィング】 …!
と、彼女の言葉が止まった
【ティルフィング】 …花
【ティルフィング】 そうです、花ですよ
【ティルフィング】 私…花が見たいです
【ティルフィング】 心を癒してくれるような、 美しい花を
【ティルフィング】 それを、この旅の目的の 一つにするのはどうでしょうか?
【レーヴァテイン】 ティルフィングらしいね
【ゼロ】 いいんじゃないか?
だったら、いい場所を知ってるよ と返すマスター
これまで目的の無かった旅 行き先を決めていなかった旅 だが――
それは、二人に輝かしい 目標が出来た瞬間
旅が一気に輪郭を帯び始めた
【ティルフィング】 『美しい花を見るための旅』
【ティルフィング】 それは素敵ですね 二人もどうですか?
【ゼロ】 二人の邪魔をする気はない それじゃ、アマネ そろそろ行くか
【レーヴァテイン】 そうだね
ゼロとレーヴァテインを見送る ティルフィングとマスター
明日から始まる新たな旅に 胸を膨らませ、 二人は今日の宿へと向かうのだった
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