810101 天上編 第8章 王都決戦 第1話 内壁 バトル開始前の会話
【トト】 あれが…内壁…!
【ディーン】 第一城壁… あの壁の向こう側が 俺達が目指す王都だ…
【ディーン】 こんな形で辿り着くことになるとは 思いもしなかったけどな
【リベリオン】 まぁ、そう言うな ともあれ、時間がない… さっさと王都に乗り込むぞ
【デュリン】 ねぇ… ずっと気になってたんだけどさ、 どうしてそんなに急いでるのよ?
【リベリオン】 あ…?
【デュリン】 だって、アンタの戯れ言を 真に受けるなら、
【デュリン】 アンタの世界の時間が流れる速さは このラグナ大陸で流れる時間の速さの 何百分の一なんでしょ?
【リベリオン】 …? だから、なんだよ?
【デュリン】 だから…
【デュリン】 ここでいくら時間を費やそうと、 アンタの住む世界の時間で換算すれば ほんの一瞬ってことになるじゃない?
【デュリン】 なのに、 なんでそんなに 慌てる必要があるのよ?
【リベリオン】 …俺はこの世界へ来るのに、 正規のルートを経ていないからだ
【リベリオン】 しかも、記憶を維持したままで 来ているからな…
【リベリオン】 負担がデカ過ぎて、 ここでの活動時間が限られてるんだよ
【デュリン】 記憶を維持したまま…?
【リベリオン】 本来なら、この天上世界へ至る前に、 地上世界の記憶は失われちまうんだ …お前らみたいにな
【デュリン】 …!
【デュリン】 アタシ達の記憶が失われているのは、 当然ってことなの…!?
【デュリン】 どうして… なんで、そんなことになるのか 教えなさいよ!!
【リベリオン】 んー… なんて説明すればいいんだろうな…
【リベリオン】 この世界は、 人々の記憶を受け入れられるだけの 容量が決まってるんだよ
【デュリン】 記憶の…容量…?
【リベリオン】 例えばだな… 天上世界という名の箱が あるとするだろ?
【リベリオン】 その箱は今、この世界で紡がれて来た 歴史や、人々の記憶で、 すでにパンパンな状態だ
【リベリオン】 だがそこに、俺達のような 異世界の記憶を持つ者達が大量に 送り込まれたらどうなると思う?
【デュリン】 箱は耐えきれずに 壊れてしまう…?
【リベリオン】 その通り
【リベリオン】 だから異世界から到来する者は、 箱の容量を圧迫せぬよう外部記憶を 極限まで排除されてしまうんだ
【デュリン】 つまり… この世界を維持するために、 アタシ達の記憶は排除された…?
【リベリオン】 ああ
【デュリン】 …もし、その箱が壊れたら、 具体的にはどうなっちゃうわけ?
【リベリオン】 落ち着け。今、話したところで、 容易に理解できるもんじゃない 記憶を取り戻せばいずれわかることだ
【デュリン】 …………
【レン】 …ねぇ、 正規のルートを経ていないって 言ったわよね…?
【レン】 それって…“現の扉”以外に、 異世界と繋がる 正規の道があるってことなの?
【リベリオン】 あぁ、“現の扉”… つまり、俺が利用したルートは、
【リベリオン】 いわば正規ルートに不正アクセスして 作り出した即席の抜け道だ
【リベリオン】 二つの世界を繋ぐ 正規のルートはあれだよ
【レン】 あれって…?
【リベリオン】 見えるだろ、 どデカくそびえ立っているのが?
【リベリオン】 この大陸に張り巡らされた アイツの根に“特異点”を見つけ出し この世界へアクセスしてきたわけだ
【デュリン】 まさか…!?
【リベリオン】 “ユグドラシル”…
【リベリオン】 この世界の中心に 根差したあの大樹こそ、すべての “多層世界”を繋ぐ正規のルートだ
【デュリン】 …!
【ティルフィング】 ハァ…ハァ…
【ティルフィング】 ごめんなさい… 私には、待ってくれている人がいる… ここで費やす時間はないの
【マサムネ】 グッ… ざ、戯れ言を…
【ティルフィング】 …! アナタ、まだ…!
【マサムネ】 は、母親だと…?笑わせる… 我らキラープリンセスに、 家族などいようはずがない
【ティルフィング】 私もそう思っていた… でも、その常識自体が、 ねつ造されたものだとしたら…?
【マサムネ】 なに…?
【ティルフィング】 私達が当然のように 行っている淘汰…
【ティルフィング】 そこには、統合することで 失われた記憶を取り戻したい という衝動がある
【マサムネ】 …それが なんだと言うのだ?
【ティルフィング】 もしも…その失われた記憶の中に、 私達を待つ家族の存在が あるとしたら…?
【ティルフィング】 その大切な人達が、 今も私達を 待ち続けているかもしれないのよ?
【マサムネ】 …くだらんな
【ティルフィング】 マサムネ…
【マサムネ】 たとえ、そうだとして… それがなんになる?
【マサムネ】 ただ、自らの甘さに繋がるだけ… 我らの行動を妨げる情を生む存在など 無用なだけだ
【ティルフィング】 そんな…
【マサムネ】 拙者はかような妄想に かどわかされはせん
【マサムネ】 いずれ始末はつける… 覚悟しておけ
【ティルフィング】 マサムネ!
【ティルフィング】 …妄想かどうかは、 確かめてみなければわからない
【ティルフィング】 すべての答えはすぐそこにある… あの壁の向こうに…!
【ノーブル】 だから…! すべての責任は自身で負うと 言っておるだろう!
【ゲートキーパー】 そう申されましても…
【ゲートキーパー】 政府関係者以外の通行を 禁ずるというのが、 王都からの指示でして…
【ノーブル】 王政府の関係者…? ならば、問題ない 私は、王都学術院の…
【ゲートキーパー】 無論… ご高名は存じ上げております、 ノーブル教授
【ゲートキーパー】 ですが…通行を許可されているのは、 あくまで王政府に属する者に 限られておりまして…
【ゲートキーパー】 教授がおられる学術院などの 関係機関は…
【ノーブル】 そんな話はどうでもいい! 事態は急を要しておるのだ! こうしている間にも…
【ゲートキーパー】 なんと申されましても、 人民区への入域を 許可することは出来ません
【ゲートキーパー】 戒厳令下にある、 現在の状況をご理解ください
【ノーブル】 ぐぬ…!
【ゲートキーパー】 申し訳ありません …じきに戒厳令も解かれましょう さすれば…
【ノーブル】 …この入域が 貴族階級からの指示だとしてもか?
【ゲートキーパー】 …貴族?
【ノーブル】 そうだ。此度の人民区行きは 王政府の中枢を担う、 さる貴族から授かった密命だ
【ノーブル】 それでも 入域を許可出来んと言うのか?
【ゲートキーパー】 …さる貴族とは?
【ノーブル】 …密命と言っておるだろう 名前を明かすことはできん
【ゲートキーパー】 …人民区での受け入れ先は?
【ノーブル】 ルシドラの町の教会だ 祀官殿に申請書を送ってある
【ゲートキーパー】 送ってある…? 承認の書類を お持ちではないのですか?
【ノーブル】 まだ届いておらん 急な出立になったものでな… だが、問題はないはずだ
【ゲートキーパー】 …………
【ゲートキーパー】 その密命を証明するものは なにもないと…?
【ノーブル】 この顔と名前だけだ
【ノーブル】 …知っての通り、良くも悪くも、 世の人々に私は知られておる どこにいようと、逃げも隠れも出来ん
【ゲートキーパー】 …………
【ノーブル】 無理を言っていることは承知している だが、それほどまでに差し迫った 事態であると理解してほしい
【ノーブル】 …決して、迷惑はかけん どうか、信頼してもらえんだろうか?
【ゲートキーパー】 しかし…
【???】 …身元引き受けの書類ならば、 こちらにございます
【ゲートキーパー】 …?
【黒奏官】 ルシドラの教会から参った者です 緊急の事態ゆえ、 急ぎ書類をお持ちしました
【黒奏官】 教授がおっしゃられますように… 政府の中枢を担う、 さる貴族からの密命と伺っています
【ゲートキーパー】 …確かに、 これは正規の書類に間違いない
【ノーブル】 …祀官殿の使いの者か?
【黒奏官】 はい… お迎えに上がりました、ノーブル教授
【リベリオン】 …コイツを そのノーブルって男に 渡そうとしてんのか?
【トト】 うん 爺ちゃんから託されたんだ
【レン】 エクスジェラルド・ヴァン・ ルステンシュタイン3世… この世界の天文学者よ
【レン】 父さんやノーブル教授とともに フレンネル大公と繋がりが あったと思われる人物なの
【リベリオン】 ねつ造された歴史を暴く、か…
【リベリオン】 やれやれ、教会だけじゃなく、 この国そのものを ひっくり返すつもりかよ
【レン】 え…?
【ディーン】 ティルフィング、 思いのほか時間がかかってんな…
【ディーン】 あのマサムネには、 ウチのレーヴァテインも してやられたからな…
【デュリン】 …大丈夫よ 欲のないあの子にしては珍しく、 王都行きに燃えていたもの
【デュリン】 目の前の勝負より、 王都に行くことを優先するはずよ
【ディーン】 だといいんだけどな …なにしてんだ、お前ら?
【デュリン】 !? アンタ、それ暦じゃない!! また軽はずみに…!!
【トト】 軽はずみなんかじゃないよ! よく考えた上で、 おじさんには見せとくべきだって…
【デュリン】 このバカ…!なんの相談もなしに 見せるのが軽はずみだって 言ってんのよ!
【リベリオン】 まぁ、そう怒るなよ。俺にとって、 コイツは取り立てて必要のない物だ… 別になにもしやしないよ
【レン】 …アナタには 必要ない物なの?
【リベリオン】 ああ。これを必要としているのは、 むしろこの世界の人間達だろうな
【リベリオン】 こっちの住人の目を覚ますのに コイツは役立つはずだ
【デュリン】 …どういう意味?
【リベリオン】 ざっと見た限りだが… おそらくここに描かれているのは 星の巡りから導き出された正確な暦だ
【リベリオン】 …コイツはねつ造された歴史を 暴く代物って言われてるんだろ?
【リベリオン】 この世界で公表されている歴史と 照らし合わせれば、なにかが 浮かんでくるのかもしれないな
【レン】 なにかって…?
【リベリオン】 それは、そのノーブルって男に聞けよ
【リベリオン】 もっとも、そのためには… ヤツらを倒して内壁に辿り着くことが 前提条件だけどな
【ディーン】 異族…!? ヤベェ、囲まれてるぞ!!
【ティルフィング】 みんな下がって! 異族の群れが来るわ!
【デュリン】 ティルフィング…! 無事だったのね!?
【ティルフィング】 ごめん、少し手間取っちゃった …マスター、行きます!!
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