903040001 地上編 3章 人間の本質は強欲 第4話 自然の摂理
【マモン】 外はクソ暑かっただろう 冷たい飲み物が幾らでもある 好きなだけ飲め!
【マモン】 それから食い物もだ! たらふく食らえ! 俺様が許す!ガハハハハ!
【ヴァリン】 …ちょっと どうなってんのよ、これ?
【アルン】 ボクに聞かれても…
【アルン】 ここは、 ものすごく豪華な部屋ですね
【アルン】 それに贅沢な料理の数々… 町はあんなに困窮しているのに…
【ゼロ】 全部、 ここの人間達から奪った物だろっ 胸くそ悪いぜ…
【マモン】 どうした!?食わんのかっ? 口に合わんのなら全部捨てさせるぞ!
【ゼロ】 なんのつもりだ、マモン!? 他の仲間は皆、 牢屋に放り込んだくせに
【ゼロ】 俺達だけ連れてきて 歓待しているつもりかっ?
【マモン】 ガハハハハ!威勢の良い小僧だ 嫌いじゃねえ 俺の手下にしてやってもいいくらいだ
【ゼロ】 ふざけるな、貴様っ!
【ヴァリン】 ちょっと! ティル達が捕まってるのを 忘れないでよねっ
【ヴァリン】 …悔しいけど、 今はおとなしくしてるしかないわ
【アルン】 こんなにたくさんの料理、 とても食べきれるものではありません
【アルン】 町の人々に分け与えても 良いのではないですか?
【ヴァリン】 アルンまでっ …ああ、もう! なんなのよ、アンタ達は!
【マモン】 ガハハハハ! 面白いことを言うじゃねえか、チビ
【マモン】 いいか? この世のありとあらゆるものは 俺様の所有物だ
【マモン】 他の奴にくれてやる物なんざ 一欠片だってありゃしねえんだよ!
【アルン】 それでは、どうして 『スナッチゲーム』なんてものを 開催するんですか?
【アルン】 あれに一体、 なんの意味が?
【マモン】 決まってるだろう あれこそ生命の本質だからだ!
【マモン】 自分が生き残るために 他者の命を奪う それが生命の最も根源的な行為
【マモン】 動物、植物を問わず、 生きているものは 他者から命を奪って養分にする
【マモン】 力のあるものがないものから奪い、 生き残る 弱肉強食こそ、この世の真理だ
【マモン】 だから俺は人間達に それを思い出させてやっているんだよ
【マモン】 『スナッチゲーム』に参加した 人間達は皆、はっきり思い知る 自分の無力さを
【マモン】 俺の手下に追い立てられ、 死にものぐるいで逃げ惑うとき
【マモン】 初めて、自分達が 今まで自然の摂理に逆らって
【マモン】 生きてきた罪深い存在なのだと 理解することができるんだ
【マモン】 そして賢い奴は気づく 劣った種族である人間が 俺様からなにかを奪うなど不可能だと
【マモン】 だったらどうするか? 簡単なことだよなぁ?
【マモン】 同じ劣等種の人間同士で 奪い合えば良い!
【マモン】 劣った者同士、 ほんの僅かな力の差を誇示して 奪い合う
【マモン】 そのとき人間達は 生命として 本来あるべき姿に戻るんだ!
【ヴァリン】 …ひどい屁理屈だわ
【マモン】 ガハハハハ!お前はまだ 真理が理解できておらんようだな 愚かな人間の女
【ゼロ】 うるせぇっ! いい加減、本題に入れっ
【ゼロ】 俺達をここに 連れてきた理由はなんだ!?
【マモン】 ああ、確かに余計なお喋りが過ぎたな 小僧、お前らをここに連れてきたのは ちょっとした取引をするためだ
【アルン】 取引?
【マモン】 そうだ。お前らを 大樹ユグドラシルの根元まで 連れて行ってやろう
【マモン】 その代わり、ルシファーを殺せ
【ヴァリン】 なんですって!? …仲間を裏切るつもり?
【マモン】 仲間ぁっ?なにを言ってやがる! この世の全ては 俺様の所有物だと言っただろうが
【マモン】 ルシファーも他の魔王どもも 俺様の手下だっていうのに
【マモン】 ルシファーの野郎、 ユグドラシルの根元に ふんぞり返って偉そうにしてやがる
【マモン】 あげく俺様のユグドラシルを ぶっ壊そうとしてるじゃねえか
【マモン】 あいつは殺した方が良い お前らだって 玩具が壊れたら捨てるだろ?
【マモン】 所有者には 所有物を処分する権利があるからな
【ゼロ】 だったら自分でやればいい 悪魔同士、殺し合いでも 共食いでも勝手にやってろ!
【マモン】 小僧、勘違いするなよ 俺様はお前らに チャンスをくれてやろうと言ってんだ
【マモン】 確かに俺様が動けば簡単だ だが、それでいいのか?
【マモン】 小僧、お前、 自分の手でルシファーを 叩き斬りたくなかったのかよ?
【ゼロ】 …………
【マモン】 グハハハハハハ! 悪くない話だろう? 部屋でじっくり考えてみろ
【マモン】 ああ、城の中は 好きにうろついても構わねえぜ じゃあ、良い返事を期待してるからな
【アルン】 …マモンの言っていたことは 本当なんでしょうか?
【ヴァリン】 そうね…。可能性としては 十分あり得るわ。だけど…
【ゼロ】 おい! いつまでここにいるつもりだ!?
【ヴァリン】 ちょっと、ゼロ! アンタこそ 今までどこ行ってたのよっ?
【ゼロ】 脱出ルートを探していた
【ゼロ】 出口は見つからなかったが、 ティルフィング達が囚われている 牢屋の場所は突き止めたぜ
【ヴァリン】 このバカ! 一人で危険なこと してんじゃないわよっ
【ゼロ】 見張りの魔獣なんざ 大したことはねえ
【ゼロ】 それより、 あいつらを助け出して ここから出ようぜ
【アルン】 もしかして… すでに魔獣を斬ったんですか?
【ゼロ】 ああ。俺達の見張り役は さっき叩き斬ってきた。急ぐぞ!
【ヴァリン】 ゼロ!? …ああ、もう! 勝手なことばかりしてっ
【パラシュ♀】 城内の潜入に成功したよ リーダー、まずは牢屋に向かおう
【ブラフマーストラ♂】 なあ。考えてみたんだけど、 太陽って沈むでしょ?
【ブラフマーストラ♂】 でも朝になったら また昇ってくるでしょ?
【ブラフマーストラ♂】 だったら朝にならなかったら 太陽って昇ってこないのか?
【ブラフマーストラ♂】 それとも太陽が昇るから朝なのか? だとしたら――
【アスクレピオス♀】 いいから、さっさと行きなさい! 敵に見つかったら 怪我することになるわよ!
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