906040001 地上編 6章 妬みの海 第4話 未来への別れ
【ティルフィング】
ヴァリン、少しいいですか？
【ヴァリン】
いいわよ
こっちの作業も一段落したから
【ヴァリン】
見て！
【ヴァリン】
天上世界に送り込むアタシ自身、
“デュアル・ヴァリン”
略して“デュリン”よ！
【ティルフィング】
可愛い！
妖精なんですねっ
【ヴァリン】
妖精じゃないわよ！
確かにサイズは
小さくなっちゃったけど…
【ヴァリン】
そうだわ！
『妖精じゃない』って
プロフに書き足しておきましょっ
【ティルフィング】
でも、どうしてこんなに
小さくなってしまったんですか？
【ヴァリン】
最大の問題は容量ね
どんな理屈か判明してないけど…
【ヴァリン】
通常のセフィロト・システムで
天上世界に上がったら
記憶が失われてしまう
【ヴァリン】
これはシステムが
ユグドラシルの力を
利用してる影響だと思うわ
【ヴァリン】
その証拠に、別ルートで上がってる
リベリオンは記憶を維持できていた
【ヴァリン】
その代わり、
生命エネルギーを消耗するから
長時間、天上世界には留まれないの
【ヴァリン】
その問題点を改善したのが、
このデュリンなのよ！
【ヴァリン】
サイズを小さくすることで
消費容量を極力減らして、記憶自体も
必要最小限のものだけに絞ったわ
【ヴァリン】
残りの記憶は圧縮ファイルみたいに
まとめて鍵を掛けたから、
特殊な条件下でのみ解凍される
【ヴァリン】
これでデュリンは天上世界に長い間、
留まることができるの
【ヴァリン】
私が天上世界で
キラープリンセスを
導いてみせるんだから！
【ヴァリン】
これ以上、
リベリオンを天上世界に
上げる必要なんてないのよっ
【ティルフィング】
あ…実をいうと、
そのことを謝ろうと
思って来たんです…
【ティルフィング】
リベリオンの実験のことを知ったとき
私、ついヴァリンを
責めてしまったから…
【ヴァリン】
なんだ、そんなこと
別に謝らなくても良いわよ
【ティルフィング】
それでも、謝らせてください
ごめんなさい…
【ヴァリン】
全く、律儀ね
…そうだ。だったら一つ、
頼みを聞いてくれない？
【ヴァリン】
まあ、その…
ちょっとしたことなんだけど…
【ティルフィング】
なんでしょうか？
私に出来ることなら
なんでも言って下さいっ
【ヴァリン】
あのね…さっきも話したけど、
天上世界に持っていける容量って
制限があるのよ
【ヴァリン】
だから、その、
少しでも軽くするためにねっ
呼び方をねっ…
【ヴァリン】
デュリンには、
ティルフィングのこと、
“ティル”って呼ばせたいのよ…
【ティルフィング】
私のことを…ティル、と…
【ヴァリン】
ほら！
少しでも容量を減らしたいから
【ヴァリン】
こういう小さな節約も
大切っていうか！
…イヤならやめるけど
【ティルフィング】
そんなことありません！
是非、ティルと呼んで下さい！
【ティルフィング】
もしよろしければ、
デュリンだけでなくヴァリンも！
【ヴァリン】
えっ？
いいの…？
【ティルフィング】
はい！
すごく嬉しいです！
【ヴァリン】
そっか。良かった…よし！
それじゃアンタもアタシのこと…
そういえば愛称ってないわね…
【ヴァリン】
じゃあ、敬語はなしにしましょう！
ずっと気になってたのよ
【ティルフィング】
そうだったんですか？
私も…なんだか遠慮してしまって…
【ヴァリン】
フフフ。変な話よね
アンタとは結構長い付き合いなのに…
【ヴァリン】
それじゃ、
改めてよろしくね、ティル
【ティルフィング】
はい！
よろしくお願いしま…えっと、
よろしくね、ヴァリン
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