200041212 フリズスキャールヴ 終焉見届ける滅炎の高座
あの日以来、マスターの隊と 行動を共にするようになった フリズスキャールヴ
今日も一緒に来るの…？ 入隊したわけでもない彼女に、 一応マスターが尋ねてみる
【フリズスキャールヴ】
気にするな
そなたらの邪魔はしない
クールビューティーで、 常に高座に座っているような 気品と威厳に満ち溢れた彼女
気にするなと言う方が無理なのである
【フリズスキャールヴ】
ふむ、買い物か
【フリズスキャールヴ】
わらわも同行しよう
また、戦闘だけではなく ちょっとした買い出しにも ついてくるようになった
しかし、彼女… 見た目とは反して、 中は意外と庶民派だった
【フリズスキャールヴ】
酒が欲しいのか？
なら、この店じゃ
ここには良いワインが揃っておる
【フリズスキャールヴ】
待て、わらわに気を遣って、
そんな高価なものを買う必要はない
【フリズスキャールヴ】
値は張らなくても、
美味なものはいくらでもある
これなんかどうじゃ？
【フリズスキャールヴ】
ほぉ、そなたもいける口か
【フリズスキャールヴ】
ならば、付き合ってくれ
ひとりで飲むのも味気ないからな
安いワインを好む彼女 酒好きの姫達とすぐに打ち解けた
また……
【フリズスキャールヴ】
睡魔に抗うことも出来ぬとは…
まったく…世話が焼ける奴じゃ
意外と面倒見も良く、 まだ幼い姫達に気配りもしてくれた
そういえば初めて会った時、 薬草のある場所や、野営地を 案内してくれたのも彼女だったな
そんなことを思い返しているマスター
【フリズスキャールヴ】
ふっ、美しい景色じゃ
幼いキル姫を寝かしつけた彼女が、 ふと微笑む
【フリズスキャールヴ】
なにげない日常を楽しむ姿とは…
かくも美しいものなのだな
こうして彼女は、 次第に隊に打ち解けてゆくのだった
そんなある日――
……う～ん… なにやら思い悩んでいる 雰囲気のマスター
【フリズスキャールヴ】
なにをしておる？
あぁ、君か 最近、どう？ 姫達とは仲良くやってる？
彼女からの質問ははぐらかして、 逆に尋ね返すマスター
【フリズスキャールヴ】
誤魔化すな
【フリズスキャールヴ】
我がキラーズである
『フリズスキャールヴ』とは
【フリズスキャールヴ】
全世界を視界に捉える
神の高座じゃ
【フリズスキャールヴ】
わらわに見通せぬものはない
【フリズスキャールヴ】
そなた、悩んでおるのだろう？
言ってみるがよい
なんでもお見通しの フリズスキャールヴ
世話焼きな一面を持つ優しい彼女に、 マスターは話すことにした
次の戦闘は、 この前、君と出会った時の 戦闘より遥かに厳しい
今の布陣で勝てるかどうか… いや、勝たなければならない でも、どうすれば……
そう話すマスターに、 彼女はさらっと答える
【フリズスキャールヴ】
なにを頼りないことを…
そなたがしっかりせい
【フリズスキャールヴ】
兵を活かすも殺すも、
指揮官次第だろう
助言が現実的で的確ゆえ、 相手の心をえぐることもある彼女
そ、そうだよね、あはは… マスターもしっかりと えぐられてしまったようだ
そんなマスターの目を見据え、 彼女は尋ねる
【フリズスキャールヴ】
抗うと言ったであろう
あれは嘘か？
【フリズスキャールヴ】
ここで負ければ、
『終焉』に抗うことも
不可能になってしまうぞ
【フリズスキャールヴ】
わらわはそれでも構わぬが
そなたは違うのであろう？
マスターは答える
もちろん嘘じゃない 『終焉』に安息があるとは、 僕には思えないから…と
【フリズスキャールヴ】
………
続けざまにマスターは尋ねる
ねぇ、聞かせて欲しいんだ 君がどうして終焉を望むように なったのか、と
【フリズスキャールヴ】
………
彼女が自身の過去を語り出した
【フリズスキャールヴ】
わらわは…この目で
世界の悲劇を見てきた
【フリズスキャールヴ】
すべてを見渡せる眼を
持っていたため、戦争の惨さを
誰よりも見続けてきたのじゃ
【フリズスキャールヴ】
苦しい…解放されたい…
こんな世界なくなってしまえばいい…
【フリズスキャールヴ】
そういった人々の願いを見て、
一度世界を終わらせ無に帰すことが、
【フリズスキャールヴ】
わらわの中に宿った
人々の無念を晴らすことに繋がる
そう考えたのじゃ
【フリズスキャールヴ】
人間とは、儚くも強く
そして、恐ろしい生き物じゃ…
【フリズスキャールヴ】
戦争が続けば、力を手にした者は
同じ種族でありながら上下を定め、
力で他者を支配する
【フリズスキャールヴ】
それは死や
世界の終焉よりも恐ろしく、
屈辱的なこと…
【フリズスキャールヴ】
奏官は支配者ではない
そして、我らキル姫は
道具ではない…
【フリズスキャールヴ】
誰もが自由に生きるべきじゃ
美しい景色は保たれるべきじゃ
そうというのに争いは止まない
【フリズスキャールヴ】
そんな世界を見てきたからこそ、
もう見てはいられない、
だから安らかな終わりを与えたい…
【フリズスキャールヴ】
そう、『終焉』を……
【フリズスキャールヴ】
だが…
【フリズスキャールヴ】
それは違うと言い放った奴がいた
【フリズスキャールヴ】
そなたじゃ
【フリズスキャールヴ】
わらわは『抗う』と言い切った
そなたが気に掛かり、
ここまで付いてきた
【フリズスキャールヴ】
このフリズスキャールヴの目で、
どちらが正しいのかを
見極めたいがために
【フリズスキャールヴ】
だから見せてくれ
そなたの救済を
その言葉を聞いて、 少し吹っ切れたよ、 と微笑むマスター
君の言う通りだ マスターである僕が しっかりしなきゃね
抗って、抗って、抗い続けて… 絶対に勝利する その先に救済があると信じて
【フリズスキャールヴ】
………
そして、マスターは 言葉の最後に付け加える
あ、そうだ。君は終焉を望んでると 言ってるけれど… 本当はそうじゃないと思っている
【フリズスキャールヴ】
なぜ？
だって初めて出会った日、 一触即発のムードになったけど、 君は攻撃を仕掛けてこなかった
それに、僕達がどうなるのか 見るだけなら、その後に 治療する場所に案内したりはしないよ
あの時、 この人は無駄な争いは好まない人、 本当は心穏やかな人だと思ったんだ
君は、終焉ではなく… もしかしたら、 他にも道はあるんじゃないか…
そう思い悩んでいるんじゃ ないのかい？
【フリズスキャールヴ】
…！
じゃあね、助言ありがとう その場を後にしようとするマスター
【フリズスキャールヴ】
………
その背中に、彼女が声を掛ける
【フリズスキャールヴ】
わらわも…力を貸してやろう
……！ 驚き、振り向くマスター
どうして？ 死は安息、破滅は救済… 僕達に加勢はしないんじゃ…
そう彼女に尋ねる
【フリズスキャールヴ】
この目で見てみたくなった
【フリズスキャールヴ】
そなたの言う
『終焉』以外の救済…
その可能性を
そして、いよいよ決戦の日――
【フリズスキャールヴ】
食らうがよい
初めて、フリズスキャールヴの 戦う姿を目の当たりにした マスター達
皆、その巨大な力に圧倒されている
【フリズスキャールヴ】
ふっ、おかしな奴じゃ
【フリズスキャールヴ】
本当は終焉以外の、
新たな道もあるのではないか…
【フリズスキャールヴ】
まさか、その想いを見抜かれるとは…
【フリズスキャールヴ】
その道が、どんなものか…
今はまだ答えは出ない
【フリズスキャールヴ】
だが、そなたとなら…
【フリズスキャールヴ】
苦しみからの解放を受け入れず、
抗った先に未来があると信じ
戦っているそなたとなら…
【フリズスキャールヴ】
そして…
マスターの指揮を受け、 互いに助け合い戦う姫達に 目をやる彼女
【フリズスキャールヴ】
皆と力を合わせ…
戦闘においても、日常においても、
対等に仲間と接するそなたとなら
信じてみたい… その想いが生じた時、 彼女の中で新たなる力が覚醒
【フリズスキャールヴ】
覚悟はよいか？
『終焉見届ける滅炎の高座』
見事、敵を一掃するのだった
戦闘後――
君のおかげで勝つことが出来たよ と、お礼を言うマスター
だが彼女は返す
【フリズスキャールヴ】
いや、礼を言うのは
わらわの方じゃ
【フリズスキャールヴ】
そなたのおかげで、
“あの頃”を思い出せた
【フリズスキャールヴ】
終焉を受け入れる前……
人々と美しい世界を守るために
戦っていたあの頃の気持ちを
【フリズスキャールヴ】
そなた達と行動を共にして、
分かったのじゃ
【フリズスキャールヴ】
隊の姫達は皆、
そなたに救われておる
【フリズスキャールヴ】
そなたは、人々や世界だけではなく…
キル姫の平和も守れる存在じゃ
【フリズスキャールヴ】
しかし…
【フリズスキャールヴ】
まだ『終焉』を
否定したわけではない
【フリズスキャールヴ】
終焉は正しいのか、否か
【フリズスキャールヴ】
これからもそなたの隣にいて、
見極めて行こうと思う
ふっと微笑む彼女
【フリズスキャールヴ】
しかし、疲れたじゃろう？
【フリズスキャールヴ】
わらわが膝枕をしてやる
しっかりと休むがよい
照れると共に、 どこまでも面倒見の良い彼女に すっかり癒されるマスターだった
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