202212161 限定クエスト 雪下の騎士流離譚 雪下の騎士流離譚 ストーリークエスト 雪下の騎士流離譚 ストーリークエスト後編 3 - 雪下の騎士流離譚-2 雪下の騎士流離譚 後編-2 雪下の騎士流離譚 後編-2 戦闘前
【アロンダイト?】 どうしてこんな雪の山を? 合理性に欠けると思いますが
【アロンダイト】 …………
幻影はあくまで幻影 実体はなく、意味もまた存在しない
【アロンダイト?】 意味? そうですね、私に意味はなくとも あなたの事実はあったでしょう?
【アロンダイト】 …っ
すべて幻が語る嘘だ と言って除けることができたら どれほどよかっただろうと思う
【アロンダイト】 私の心を蝕むあなたの言葉は それが事実であったと… 私の過去であったと気付いてしまった
【アロンダイト?】 そう、あなたは―― いえ、私はすべてを破壊し 世界を終わらせようとしたんです
【アロンダイト?】 そんな私が…いまさら何を守ろうと?
【アロンダイト】 …………
【アロンダイト?】 どれだけ修正し、新生し やり直したところで世界の構造は 大して変わらないものです
【アロンダイト?】 あなただって怒りを抱いたでしょう?
【アロンダイト?】 世界に守る価値のあるものなんて もう、何ひとつないんですよ
【アロンダイト】 …そんなことはありません
【アロンダイト?】 はぁ、こんな世界の為に 自分だけが辛い思いをする 必要なんてどこにもないのに…
【アロンダイト?】 壊してしまえばいいのに 終焉こそが、救済なのですから
【アロンダイト】 終わらなかったから今があるんです 希望を繋いだからこそ、 この世界があるんです
アロンダイトは声を張る それだけは間違いないと そう信じているから
【アロンダイト】 シタもミトゥムも 私を救ってくれました
【アロンダイト】 村の人達も、子供達も こんな私を迎え入れてくれました
【アロンダイト】 他者を思いやることのできる 優しい人達が多くいる世界です
【アロンダイト】 あなたが過ごした かつての世界とは違う…
【アロンダイト】 この新しい世界は守るべきもの 努力し、維持すべきものです
【アロンダイト?】 あなたはまだ 見て見ぬ振りをするんですね
【アロンダイト?】 何故そうやって怒りを 誤魔化そうとするのですか?
【アロンダイト】 …………
【アロンダイト?】 わかりやすいところで言えば 家族の絆を妬んだり恨んだり 果ては自らの手で壊そうとしたり…
【アロンダイト?】 そのような者達がいる世界の どこが優しくて思いやりがあって 守るべきものなんですか?
【アロンダイト】 …………
【アロンダイト?】 そのような者達を 必要悪だなんて言いませんよね?
【アロンダイト】 かと言って、すべてを壊せばいいと 短絡的に考えている存在もまた 必要悪だとも思いません
【アロンダイト?】 それは勘違いですよ 破壊による終わりは必要悪ではなく 世の理を体現しているだけですから
【アロンダイト?】 不義にまみれた世界に 救いをもたらす終焉を
【アロンダイト】 …………
アロンダイトは口を閉ざし 幻影を振り払うように歩を進める
これ以上の口論は無駄だ そもそも自分が生み出した幻影との 会話なんて自問自答以下の無駄な行為
【アロンダイト】 …たしかに、この世界はまだ 不義にまみれているのかもしれません
【アロンダイト】 けれど、それ以上に 美しいものも多くあるはずです
【アロンダイト】 シタもきっと それを教えてくれようとしていた…
そしてアロンダイトも知っていた この世界にある美しいモノを
【アロンダイト】 …それを壊してしまうかもしれない 可能性を持った私はその美しさの そばにいるなんて許されません
【アロンダイト?】 …………
【アロンダイト】 追い打ちをかけるように 何かを言う訳でもないのが また厄介ですね、この幻影は
自身の内にある 醜い感情を踏み潰すように アロンダイトは歩き続ける
【アロンダイト】 …この感覚 自らへの怒りも危ういものですね
考えるな、考えるな、考えるな 歩け、歩け、歩け、ただ歩け
荒れ狂う吹雪は アロンダイトの感覚を奪っていく
【アロンダイト】 はじめてここに来た時と同じ この雪が皮膚の感覚のように 感情もいずれ消し去るでしょう…
いつも、感情の波を 堪えて乗り越えてきた
繋いだ絆を 切り離して進んできた
そうすれば新しい自分として 違う場所でやり直せる 始めることができるから
今回だって乗り越えられる この山を感情の波に見立てれば 越える頃にはきっと落ち着いている
【アロンダイト】 …シタ達とももう二度と会わず 新しい自分になれるはずです
そう信じ一歩踏み出した先に たった今、もう会わないと決めた 優しい少女の姿があった
【アロンダイト】 シタ…?
【シタ】 …………
シタはアロンダイトの声に応えない
【シタ】 …………
普段の温和な雰囲気とは かけ離れた様子でアロンダイトを 見つめているシタ
【アロンダイト】 あの、別れは済ませたはずです あなたもわかったと――
【シタ】 わたしのほうが慣れているとはいえ 先回りできる程度の山道に アロンダイトさんは苦戦していますね
【アロンダイト】 …………
【シタ】 そんなあなたが今夜ひとりで この山を越えられるとは思いません
【アロンダイト】 …シタの言う通り 経験の差はあるでしょうけれど 無茶だというほどではありません
【シタ】 引き返す気はないんですね?
数瞬の沈黙の後 アロンダイトは首肯で応える
【シタ】 そうですか でも、この山を越えたとしても あなたは何も変わりませんよ
【アロンダイト】 …っ!
【アロンダイト】 シタ、何を…くっ!
【シタ】 はっ!
【アロンダイト】 シタ! 何故こんなことを!
【アロンダイト】 今は…だめっ
脳裏にチラつくのは まだ鎮めることのできない感情
【アロンダイト】 こんな状態で キル姫として戦い続けたら…
【シタ】 ここは通しません あなたに山は越えられないのですから
【アロンダイト】 シタ…っ!
吹雪で白く染まる雪山に ふたりのキル姫の剣戟の音が響き渡る
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