202305020 初心者クエスト 不可思議仕儀ツークンフト 不可思議仕儀ツークンフト 第1部 前編 不可思議仕儀ツークンフト 第1部 前編 2 - 不可思議仕儀ツークンフト-1 不可思議仕儀ツークンフト 第1部-1 不可思議仕儀ツークンフト 第1部-1
【カシウス】 穏やかで、のどかで それでいて確かな人々の営みが 感じられる町ね
町に到着したカシウスは 早速周囲を見渡しながら歩く
それほど大きな規模ではないが 人通りも多く活気が感じられる町並み
【カシウス】 …………?
カシウスはそんな町並みの中で どったんがっしゃんと 一際賑やかな場所があることに気付く
【カシウス】 この声は…
騒ぎとも表現できる その一画からの物音の中から カシウスは馴染みのある声に気付く
【アルマス】 くっ、一筋縄ではいかないわね けど、ここまで追い詰められたら もう逃げ場はないわよ!
【ビコウ】 キキ…
騒ぎを起こしていたのは アルマスと猿…ビコウだった
【カシウス】 …………
【ビコウ】 …キ!
【カシウス】 …………?
【ビコウ】 キキィ…キッ!
【アルマス】 甘いわね! その動きは読めてわぁあ!?
【ビコウ】 キキーッ!
【アルマス】 …くっ、やるじゃない
【ビコウ】 キッキキ~
【アルマス】 でも、まだまだね!
【ビコウ】 キッ!?
【アルマス】 その動きは読めていた 私はそう言おうとしていたのよ!
【ビコウ】 キ、キィ…
【アルマス】 ここは袋小路、逃げるなら一方向 そこに罠を仕掛けておけば…え?
ビコウ相手に勝ち誇った顔で 解説を繰り広げていたアルマス
その流れで一部始終を眺めていた カシウスとバッチリ目が合った
【アルマス】 か、カシウス!?
【カシウス】 ええ、偽物ではないわ
【アルマス】 いや別に疑ってる訳じゃなくて… いるなら声かけてくれればいいのに!
【カシウス】 忙しそうだったもの
【アルマス】 あー別にこれは…
【ビコウ】 キキー!
『別に』という扱いに抗議するビコウ
【アルマス】 ま、まぁ後で説明するわ それより、この町に来るなんて… 何かの用事で来たの?
【カシウス】 見ているの
【アルマス】 何を?
【カシウス】 世界 それは世界の在り方でもあり 世界が導き出した――
【アルマス】 要は旅の途中ってことね
【カシウス】 それもひとつの答え…
【アルマス】 そろそろ約束の時間だわ… ね、ちょっと付き合ってくれない?
特に用事があるという訳ではない カシウスはアルマスの誘いに首肯する
【アルマス】 ほら、ビコウも
【ビコウ】 キキッ!
【アルマス】 ちょっと待って! そもそもケンカの原因はなんなの? そんな取っ組み合いするほど?
約束の時間だ、と歩き始めてすぐ アルマスは道端で起きていた いざこざに首を突っ込んでいた
【アルマス】 お互い引けない物はあると思うけど、 傷つけあうほどのことはないはずよ ちゃんと話し合って
【アルマス】 え、話し合った上でのこと…?
【アルマス】 ま、まぁそういうこともあるわね けど、手を出すのはよくないわ
【アルマス】 とにかく、このケンカは私が 預かるからね、今日はもう終わり!
アルマスに圧され ケンカをしていた当事者達は すごすごと引き下がって行った
【カシウス】 …………
【アルマス】 待たせたわね それじゃ行きましょうか
【アルマス】 ちょっと大丈夫!? 意識は…あるみたいね 貧血か何かかしら
再度歩き始めたアルマス達だったが 目の前で突然倒れてしまった老婆を アルマスが慌てて抱きかかえた
【アルマス】 荷物も多かったみたいだし 疲れが出たのかしら…そこのお店で 少し休ませてもらいましょう
【アルマス】 ごめんくださーい かくかくしかじかで…
【アルマス】 うん、ありがと それじゃあこの人のことお願いね
優しい店の主人に老婆を託し 再びカシウスのもとへ戻るアルマス
【カシウス】 …………
【アルマス】 お待たせ ちょっと心配だけど あの店の人は頼りになるから大丈夫よ
【カシウス】 そう…
【アルマス】 あれ、あなた どうしてこんなところに?
アルマスは通りの端で きょろきょろと周りを見ていた 女の子に声を掛けた
【女の子】 あ、アルマスおねえちゃん!
【アルマス】 まだお迎えが来る時間じゃないわよね
【女の子】 う、うん…ちょっとはぐれちゃって
【アルマス】 そう、それは 絶・グッドタイミングね!
【アルマス】 私達もこれから行くところなの 一緒に向かいましょう?
【女の子】 わかった… ありがとうアルマスおねえちゃん
女の子を加え、アルマス一行は 再び歩き出す
先頭を行くアルマス それに付いていくカシウス 女の子はビコウが相手をしていた
【カシウス】 …………
【アルマス】 腑に落ちないことがあるって顔ね 約束の時間だって言ったのに 寄り道ばかりって言いたいんでしょ?
【アルマス】 まぁいいのよ 向こうも理解してるし
【アルマス】 それに、この町に必要なことだから
【カシウス】 必要なこと?
【アルマス】 この町は大きい割に見ての通り のどかで過ごしやすくていい町なの 定住者もすごく多くてね
【アルマス】 けど、のどかってことは 自然に囲まれてるってことで 害獣とか危険も隣り合わせなの
【カシウス】 危険が…?
【アルマス】 それに隣町との距離も結構あって 最近はあちこちで魔獣も出るから 町と町の交流があまりなくて…
【アルマス】 キル姫を警護につけた商人が 時々やってくるくらいでなんだか 町が閉鎖的な雰囲気になっちゃってね
【カシウス】 でも、町の中は平穏そのもの 特に問題はないように見えるけれど
【アルマス】 それがそうでもないのよ 知らず知らずのうちに心の余裕が なくなっていざこざが起こりがちなの
【アルマス】 余裕がなければ助け合いの精神も それどころじゃないってなっちゃう
【アルマス】 さっきのお店の人みたいに 外との交流がある人はまだ なんとか頼めばよくしてくれるけどね
【アルマス】 カシウスの言う通り 平穏は平穏なのかもしれないけれど 不穏だって目に見えない物だから…
【カシウス】 見ているだけでは理解できない けど、見なければ識ることもできない
【アルマス】 まぁ、そういうことで私は ここに留まってできることをしてる って訳なのよ
【カシウス】 …………
考え込む仕草をするカシウスに アルマスはいつものこと、と思い 話を先に進める
【アルマス】 で、このビコウを 追いかけてたのは
【アルマス】 私と同じように この町で手伝いをしてる 如意金箍棒の頼みって話なの
【ビコウ】 キキーッ!
【カシウス】 ビコウと追いかけっこを頼まれる…?
【アルマス】 いや別に追いかけっこを 頼まれてた訳じゃないけど…
【女の子】 あ、もうすぐだね!
そんなやり取りをしていた アルマス達に声が掛かる
【如意金箍棒】 わ、心配してたんだよ!
如意金箍棒は女の子へ 一目散に駆け寄り抱きしめる
【アルマス】 ビコウを捕まえた帰りに出会ったの 大事にならずに済んでよかったわ
【如意金箍棒】 そう、アルマスちゃんが 見つけてくれたのね、ありがとう
【ビコウ】 キキッ
【如意金箍棒】 ビコウも? ふふ、ありがとう
【アルマス】 あんたは何もしてないでしょ
【如意金箍棒】 あれ、もしかして…?
【アルマス】 ああ、カシウス? カシウスもさっき町で出会ったの さっき着いたばかりみたい
【如意金箍棒】 そうだったのねっ とっても素敵な町だから ぜひゆっくりしていってね
【カシウス】 ええ、見させてもらうわ
【如意金箍棒】 見る…?
【アルマス】 町をいろいろ見て回るってことよ それより、そろそろ時間でしょ?
【如意金箍棒】 うん、何人かはもうお迎えが来てる この子の親はまだ、だけど…
【女の子】 うち、いつも遅いもん
【如意金箍棒】 うん、あなたのお父さんお母さん、 それに大人はみんな、お仕事とか いろいろあるからね
【如意金箍棒】 ちょっぴり寂しくても… 勝手にどこか行っちゃだめだよ?
【女の子】 うちは…うん、そうだね
【アルマス】 あれ…? ――まぁいいわ
【カシウス】 …………
【如意金箍棒】 という訳で 手が空いてきたから ビコウのことはもう大丈夫
【如意金箍棒】 面倒見てくれてありがとうね
【カシウス】 面倒を見るとは… 戦うこと…
【如意金箍棒】 ?
【アルマス】 な、なんでもないわ それじゃまた明日ね!
【如意金箍棒】 うん、また明日
【アルマス】 それで? 泊まるとことか決めてないでしょ? 紹介するから付いて来て!
【カシウス】 …………
ポンポンと話を進めるアルマスに 考え事をしながら付いていくカシウス
思考を止めないことこそが カシウスという存在であるのだが…
【カシウス】 アルマスと出会ってからのこともそう
【カシウス】 この思考は巡るでなく 考えれば考えるほど…
【カシウス】 何か… 澱みのようなものが溜まっていく…
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