210012202 マサムネ 怒りの矛先
夜─
マスターの隊は、 海からプールに移動してきていた
【マサムネ】 ………
プールに獲物はいないので、 潜らずにプールサイドに 腰掛けているマサムネ
そんな彼女に、マスターが声を掛ける
キミは泳がないの?
【マサムネ】 …! ……主君
【マサムネ】 ……拙者は
【マサムネ】 主君を守るための刀
【マサムネ】 すべての行動は、 そのためのみに存在するのです
確かに昼間海に潜っていたのも、 心肺機能を鍛える意味があるって 言ってたもんね…と、マスター
【マサムネ】 左様
【マサムネ】 それに、海中にて銛を振れば、 水中戦になった時の特訓にもなります
どこまでも鍛錬に余念のないマサムネ
【マサムネ】 なのに…
【マサムネ】 遊びにうつつを抜かすとは言語道断! それでキル姫を名乗るとは…!
苛立ちを含んだ声で話す彼女
さすがは憤怒の業を背負うマサムネ 真面目で、自分に厳しいんだね マスターが彼女に言う
【マサムネ】 当然です
でもその怒りは隊の姫じゃなくて… 自分に向けてのものじゃないの? …とマスターが問いただした
【マサムネ】 …!
【マサムネ】 ど、どういう意味です…!?
マスターに食って掛かる彼女
すると、マスターは答える だって、キミは言ってたじゃない
『夏は浮かれやすい季節、 何事も我慢が肝心』って
【マサムネ】 そ、そうですが… それがなにか?
つまりキミはなにか… “我慢”してるんだよね? そう指摘するマスター
【マサムネ】 !!
【マサムネ】 そ、そのようなことは…!
よかったら教えてよ、 キミがなにを我慢しているのか
【マサムネ】 そ…それは…
【マサムネ】 い、いえ…なりませぬ 拙者は主君の刀、 いらぬ心配をかけるようでは…!
刀を研ぐのも持ち主の役目だよ マスターが彼女に告げる
【マサムネ】 ……しゅ…主君
マスターの言葉に心揺らされ、 彼女がその想いを語り始めた
【マサムネ】 主君も知っての通り、 拙者のかつての主は かの黒奏官でした
【マサムネ】 その頃の拙者は… いわば“洗脳”に近い形で 主を守っていた…
【マサムネ】 ですが、今は…
【マサムネ】 主君の隊に入り、 “楽しい”という感情が 芽生え始めている……
【マサムネ】 本当は今日も… みなのように 海で遊ぶことが出来たら…
【マサムネ】 どれだけ楽しいかと…
一瞬、彼女が暗い影を落とす
【マサムネ】 い、いや!そのような 浮ついた気持ちでは、 主君をお守りすることは出来ぬ…!
【マサムネ】 …ハッ
我に返る彼女
【マサムネ】 こ、このように… ずっとモヤモヤしているのです
【マサムネ】 主君の仰せの通り…拙者の怒りは、 そんな迷いある己に対して だったのかも知れません…
本当はみんなのように遊びたい… その気持ちをグッと我慢していた彼女
武士道を重んじながらも、 普通の女の子っぽいところに いじらしさも感じる
そんな彼女に対し、マスターは言う
【マサムネ】 え? 無理のし過ぎは良くない…? で、ですが…
「変に気持ちを曲げると、 歪な形になってしまうよ」 …と、マスター
【マサムネ】 !!
【マサムネ】 心が…歪に……
【マサムネ】 せ、拙者は……
【マサムネ】 拙者の本心とは……
…と、 彼女が己の心に 向き合おうとした時…
【マサムネ】 !!
【マサムネ】 異族!
プールサイドに多数の異族が現れた
【マサムネ】 己との対話は一時休止 今は…
【マサムネ】 奴らを倒すのが先!
銛を剣に握り替え、 異族に向かって 駆けていくのだった
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