210614120 インテグラルノア編サイド インテグラルノア サイドストーリー 暴走ゲハイムシュリフト ロンゴミアント 暴走ゲハイムシュリフト ロンゴミアント 3 - 2話 暴走ゲハイムシュリフト アロンダイト-2 暴走ゲハイムシュリフト ロンゴミアント-2
【ロンゴミアント】 今日も街は穏やかで賑やか… 活気づいていますね、マスター
【ロンゴミアント】 近頃は大規模任務の用意で 他の奏官も見かけますが それもまた安全の証ですね
嬉しそうに街を見るロンゴミアント マスターと共に任務中…の寄り道だ
【ロンゴミアント】 何の変哲もない日常風景を見るたび この光景を守り続けることが 使命なのだと、感じるんです
マスターも同意する 先代…父親が守ってきたモノ それを自分も守るのだと強く思うと
【ロンゴミアント】 先代と言えば… 今日もまた屋敷を抜け出して どこかへ行ってるみたいですよ?
【ロンゴミアント】 それもお供のキル姫も連れずに… もう、自分のお歳を考えてほしいです
昔から自分が守った街を見るのが 好きな人だったから… とマスターは先代を語る
【ロンゴミアント】 …そうですね ふふ、懐かしいです 私も昔はよくご一緒しましたから
そろそろ任務に戻らないとね と促すマスター
【ロンゴミアント】 はい! では参りましょう、マスター
ロンゴミアントの活躍により 任務は無事に終了した
【ロンゴミアント】 おじ様! どうしたのですか?
任務後、 街の商店の主に声を掛けられた マスターとロンゴミアント
【ロンゴミアント】 そう、ですか 街の外れの林に…わかりました
主の話は、街の近くの林に 何かが潜んでいるように感じるので 調べてほしいというものだった
【ロンゴミアント】 いえ、お安い御用です 街の皆さんが平穏に暮らせるのなら それが一番ですから
それじゃあ頼んだよ と言い残しそそくさと去っていく主
【ロンゴミアント】 どうしたんでしょう 何か急いでいるようでしたが…
もう夕暮れだからね 店のことが気になるのかも とマスター
【ロンゴミアント】 …そうですね さて、我々も急ぎましょう 辺りが暗くなると危険ですし
【ロンゴミアント】 マスターの身は 私が必ずお守りいたしますので 決して離れないでくださいね
街外れの林を調べるマスター達 だが、これといった異変はない
道中遭遇した異族に 少々苦戦しつつも何もなかったと 調査を終え帰還することに…
【ロンゴミアント】 ひとまずは何もありませんでしたが 異族がいたということは 引き続き警戒が必要ですね
【ロンゴミアント】 今日はもう遅いですし おじ様への報告は明日にして 屋敷へ戻りましょう、マスター
そうだね、今日は疲れたよ とマスター
【ロンゴミアント】 ふふ、そうですね 無理をしてお身体に障るといけません 今日はもうゆっくり休みましょう
また明日からもよろしくね と、マスターはロンゴミアントに 微笑む
【ロンゴミアント】 もちろんです 私はいつまでもマスターのおそばに
【ロンゴミアント】 …屋敷が妙に静かですね 先代ももうお休みに なられているんでしょうか?
そうかもしれない 自分達も静かに動こう とマスター
【ロンゴミアント】 そうですね ふふ、屋敷で静かに…なんて 何か悪いことをしているみたいです
【ロンゴミアント】 マスターもそう思いませんか…
【ロンゴミアント】 っ……!? 危ないっ…!!
【ロンゴミアント】 マスター!? あ、あなた達は!?
突然の衝撃と痛み
薄れ行く意識の中で マスターが見たのは 哀し気なロンゴミアントの顔だった
鈍い痛みに意識を支配されながら 目覚めるマスター
ぼやけた視界に入ったのは 尊敬する父親と愛する母親 …だった物
【ロンゴミアント】 マスター!
苦しそうに声を上げるロンゴミアント
ロンゴミアントは 家に仕える奏官達のキル姫に 取り押さえられていた
【ロンゴミアント】 この者達…この者達は! 裏切ったのです… マスターと、この家のすべてを!
部屋には仲間のはずの奏官 そして見慣れぬ奏官の姿もあった
その中でもリーダー格の男が マスターに対し何かを言っている だが、その耳には届かない
【ロンゴミアント】 マスター、気をたしかに! 私がついていますから!
ロンゴミアントの声だけが届く けれど、どうしたらいいのだろう マスターの思考は閉ざされる
【ロンゴミアント】 マスター… くっ、あなた達! キル姫としての誇りはないの!
ロンゴミアントは自分を 取り押さえているキル姫達に吼える
無駄だ、と男が言う 道具であるキル姫に誇りなんてない
【ロンゴミアント】 そんな…
これだけの領地がありながら キル姫を甘やかすからこうなる と笑う男
その男に対し、マスターの家に 仕えていた奏官達がすり寄る
この地があれば 自分達にたしかな地位が 与えられるのか、と
それはここからの頑張り次第だな それにはまず… 邪魔なこいつらを消してからだ
そう言って、 男はマスターとロンゴミアントを 交互に睨みつける
【ロンゴミアント】 先代に奥様達…マスターまでも そんなことはさせない…っ!
ロンゴミアントは怒りに任せ 自身を抑えるキル姫ごと腕を振り その拘束を掃う
【ロンゴミアント】 マスター!
無理やり拘束を解いたせいで 腕が傷だらけのロンゴミアント
そのロンゴミアントを止めろ と男が叫ぶ
戸惑いながらも 始めてしまったことを完遂する為 奏官達はキル姫を差し向ける
【ロンゴミアント】 なんで、どうして…
【ロンゴミアント】 あなた達も間接的ではあれど 先代や私のマスターの優しさに 触れたはず…
キル姫達は答える 自分のマスターが望んだから、と
【ロンゴミアント】 …………っ!
【ロンゴミアント】 ならば…やるしか、ないのですね
【ロンゴミアント】 やあああああああっ!!!
ロンゴミアントは キル姫達を圧倒する
【ロンゴミアント】 くぁっ!
だが、狭い室内で 多勢に無勢…勝ち目はなかった
【ロンゴミアント】 私の勝利条件は勝つことではなく マスターを救い出し この場を切り抜けること…
【ロンゴミアント】 マスター、今そちらに!
【ロンゴミアント】 ―――─ぁ
キル姫との戦闘に気を取られた ロンゴミアントはマスターから 目を離していた
そのロンゴミアントが 次に見たマスターの姿
【ロンゴミアント】 マスター…
男のキル姫の剣が マスターの体に突き刺さっている
【ロンゴミアント】 あ、あぁ、あああああ…
脈々と受け継がれてきた マスター達との繋がりが消えていく
ロンゴミアントの心は 怒りに代わり哀しみで満ちていく
哀しみという名の感情が ロンゴミアントの瞳から零れ落ちる
ああ、零れ落ちる、零れ落ちる
哀しみは枯れることのない泉のよう 濁流のような苦しみが ロンゴミアントのすべてを押し流す
【ロンゴミアント】 オアアアアアアアアアアアア!
ロンゴミアントの哀しみが溢れ 零れるたび、その哀しみの雫が 命の灯を消していく
自身の守りたい世界が壊された哀しみ
その哀しみという感情の昂りは ロンゴミアントを暴走させる
だが、その時 ロンゴミアントに声が届く 哀しみに果てはない、と
【???】 ……終わらせ……力 世界を……
【ロンゴミアント】 …何?
【???】 世界……終わ……力――
【ロンゴミアント】 果てがないのなら すべてを壊してしまえばいい…
【ロンゴミアント】 その通り、ですね
マスターの笑顔が裏をよぎる これからもそばにいると誓った マスターの笑顔が
【ロンゴミアント】 ですが… もう、見ることは 叶わないのですね…
【ロンゴミアント】 それなら、私は受け入れます… 私利私欲に満ちたこの哀しき世界 そのすべてを消せる力を
【???】 ――――っ!
哀しみで満ちたロンゴミアントに ノイズのような痛みが響く
マスターとの間に感じたバイブス それとは真逆だが、強大な力
哀しみは濃く、歪んだ憎悪へと 姿を変え、ロンゴミアントを飲み込む
【ロンゴミアント】 キエロ、キエロ… ゼンブキエロォォォ!!!
ロンゴミアントは すべてを消し去る
かつて守った街に降り 丁寧にひとつずつ消していく
【ロンゴミアント】 あの奏官達が命乞いにと 言っていましたから
【ロンゴミアント】 あなた達も協力したのでしょう?
商店の主に槍を突き立て またひとつ命の灯を消す
【ロンゴミアント】 私は暴走してしまったはず… それなのに…
【ロンゴミアント】 まぁ、どうでもいいですけれど
哀しみで世界のすべてを 綺麗に洗い流してしまえるのなら この身体がどうなろうと構わない
【ロンゴミアント】 泣く誰かさえ この世界からいなくなる… そんな日が来ますように
【ロンゴミアント】 私はその為にこの槍を捧げましょう
世界の終焉を告げる鐘の音がひとつ ロンゴミアントが目醒めた瞬間だった
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