210615120 インテグラルノア編サイド インテグラルノア サイドストーリー 暴走ゲハイムシュリフト オティヌス 暴走ゲハイムシュリフト オティヌス 3 - 2話 暴走ゲハイムシュリフト オティヌス-2 暴走ゲハイムシュリフト オティヌス-2
任務として、町長からの依頼を 受けたマスターとオティヌス
イタズラ好きだが、奏官として、 キル姫としては有能であったふたり
早々に任務を終え、 町へ戻っているところだった
【オティヌス】 それにしてもあの町長さ 絵にかいたようなヤな奴~ って感じじゃなかった?
実は同じこと思ってた と笑うマスター
【オティヌス】 あ、やっぱり? あのおっきなお腹が みょーに威圧感あるしさぁ…
【オティヌス】 小難しい顔しながら あたし達にあーだこーだ言って その間ずーっと暖炉突っついてて
【オティヌス】 「暖炉の火は癒される~」 とか言ってんの!
【オティヌス】 あたし、あれ見てたら 塊で焼くお肉ってこうやって 作るのかなーって思っちゃった
オティヌスの想像力豊かな発言に 思わず吹き出してしまうマスター
【オティヌス】 …あの町長もあんたのイタズラで わっ!て驚いたあとに笑顔になれば 良い人なのかもって思えるかも
そうかもしれないね と頷くマスター
町に戻ったら とっておきのイタズラで 町長を楽しませるか、とマスター
【オティヌス】 うん、それがいいよ♪
【オティヌス】 あんたのイタズラなら どんな嫌な奴も最後には いい笑顔になってくれるはずだから…
【オティヌス】 って、あれ? なんか町のほう明るくない?
本当だ、とマスター 町の方角が明るく そして逃げ出てくる人達が見える
【オティヌス】 …火事だ!
行くぞ! マスターが 町へ向けて駆け出す
【オティヌス】 うん!
すぐにマスターの後を追う オティヌス
【オティヌス】 マスター!町の中には まだ逃げ遅れた人達が いるんだって…助けないと!
急ごう、とマスターとオティヌスは 燃え盛る街の中へ入っていく
【オティヌス】 …マスター、町の人達は みんな無事だったって
【オティヌス】 はぁぁぁよかったぁぁぁ!
【オティヌス】 一時はどうなるかと思ったけど あたし達が間に合ってよかったね!
【オティヌス】 あたし達ふたりだけで みんな助けられちゃうなんて 驚き、だよね!
まあ、俺達のイタズラの方が もっと驚かせられるけどな と、にやりと笑うマスター
【オティヌス】 あはは そうだね
ススだらけの顔で よかった、よかったと喜び合う マスターとオティヌス
そんなふたりを見知らぬ奏官 そしてそのキル姫達が取り囲む
「こ、こいつらがやったんだ!」 とマスター達を指差し叫んだのは 町長だった
マスターとオティヌスは 町で起きた火災の容疑者として 町長が呼んだ奏官達に拘束された
火災によって帰る家を失った町人達 その観衆の前で取り調べを受ける マスターとオティヌスだった
【オティヌス】 だから! マスターは何もしてないって 言ってるでしょ!
【オティヌス】 それどころか 火事の最中に身を投げうってまで みんなのことを助けたのに…
だが、君とそのマスターは 常日頃イタズラを繰り返していた と確認するように述べる奏官
【オティヌス】 それは…そうだけど
町の人々はまだ町に来て日の浅い マスター達に対する認識は その程度だったことに違いはない
「あの火もイタズラだ!」 そのやり取りを見ていた誰かが言う
「世界中の人達を驚かせたい」 そう言っていたマスターの言葉を 聞いていた者もいた
その言葉は悪しきように取られ 「こいつらのせいだ」 という声が大きくなっていく
【オティヌス】 そんな、そんなことしないよ! だって、マスターはみんなの驚く顔 それと笑った顔が見たいんだから!
悲劇を作り、それを救い出せば 感謝もされ、笑顔が見られるもの また誰かが言う
「だから流れ者は嫌なんだ」 町長が言う
【オティヌス】 あんた…っ!
オティヌスに睨みつけられ 町長はスッと目を逸らす
奏官達の話によれば、 町長の家が一番の被害だったという
直前に任務を依頼されていたことも マスター達にとっては不利に働く 判断材料となっているようだ
【オティヌス】 でも、それであたし達は 町の外で依頼をこなしてた その時は町にいなかったんだ!
それなのに、いの一番に 火事の中の町へ駆けつけられたのは どうしてだ、と奏官が問う
【オティヌス】 それは任務が終わったからで…
「そんな簡単には終わらん!」 目を逸らしたまま町長が言う
【オティヌス】 だからそれは――
オティヌスの言葉は 町民達の怒声によって遮られる
「お前達のせいだ」 「お前達の仕業だ」 「罪を償え」「罪を償え」
町民達の膨れ上がった感情の矛先は すべてマスター達へと向けられる
マスター達の声は もう誰にも届かない ただ、ひとつの言葉を除いて
「オティヌスは関係ない、 俺がやった」 そう言い放つマスター
そして、マスターは最後に オティヌスに笑顔を見せた
イタズラが失敗した時に見せる 悲しい、笑顔だった
飛び出した町人のひとりに刺され マスターの口から血が吹き出す そこからは一瞬だった
【オティヌス】 …………
マスター達を拘束していた 奏官とキル姫達は激昂した 町民達を必死に抑えている
奏官達もマスターひとりの 責任だとしてオティヌスからは 一時的に目を離していた
【オティヌス】 マスター…ねぇ、マスター? あんた、聞いてるの?ねぇ?
マスターが頷くことは、もうない
【オティヌス】 マスター… そのイタズラ、驚きだよ…
マスターが笑うことは、もうない
【オティヌス】 あは、あはは
マスターとの繋がりは、もうない
【オティヌス】 あははははははハハハハハ!!!
オティヌスの中で何かが弾けた
弾けたそれはキラキラと舞い オティヌスの心の中を 埋め尽くしていく
【オティヌス】 …違う 埋め尽くしていくんじゃない
【オティヌス】 あたし、失ったんだ
気が付けば 否、気が付く間もなく オティヌスはすべてを消していた
【オティヌス】 アハハハハハハハハハ!!!
オティヌスは、暴走した
【オティヌス】 アハ、アハハハハ
一目散に逃げ出した町長を捕らえ オティヌスはトドメを刺す
本当は自分の火の不始末だった ただの肉塊となった『それ』は そんなことを言っていた気がした
【オティヌス】 ハハ、ハハハハ
オティヌスにはもう関係なかった もう、自分がなかったから
だが、その時に何かが オティヌスに響いた
【???】 世界を…………力が――
その何かが オティヌスをこの世界に引き留める
【???】 ――を、壊す…… ……………………?
【オティヌス】 あは…?
その何かの問いかけに オティヌスはあることを思いつく
それは、とても壮大な『イタズラ』
【オティヌス】 それがあれば…できる?
【???】 …………………………
オティヌスの中でまた キラキラしたものが舞う
それはマスターと過ごした 楽しかった日々のようで キラキラ、キラキラとしていた
あの人の笑顔を見るのが嬉しかった あの子達の笑顔を見るのが嬉しかった
マスターの笑顔を見るのが嬉しかった
何もかもを失ったオティヌス その心に再び湧き出たものは 『喜び』だった
【オティヌス】 ねぇ、その力をちょうだい あたしならできる 世界中の人達をあっと言わせてみせる
【オティヌス】 この世界を終わらせたら みんな驚くでしょ?
【オティヌス】 マスターも、喜んでくれるでしょ?
【???】 ――――っ!
オティヌスの身体に 想像を絶するほどの力が流れ込む
これなら、できる オティヌスは確信する
【オティヌス】 イタズラが上手くいって 誰かの驚く顔が見られれば それは喜ばしいことだよね
【オティヌス】 この喜びだけが… あたしとマスターの繋がり…
【オティヌス】 世界中のみんなが驚くその日まで あたしの弩と矢を貸してあげる
【オティヌス】 アハハハハハハハ♪
世界の終焉を告げる鐘の音がひとつ オティヌスが目醒めた瞬間だった
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