240171204 スイハ 零式・盛暑の冷涼
【スイハ】 敵はもう居なくなったとはいえ 先日のことを思えば 泳ぎはもっと鍛えておくべきです
あれから数日後 スイハはマスターを沖に連れ出し 泳ぎの特訓を施していた
【スイハ】 もう疲れましたか? …仕方ありませんね 浮き輪につかまってください
ぐったり気味のマスターの体を そっと抱き寄せたスイハの頬が 微かに赤らみ、そして緩む
【スイハ】 …マスターの肌ってあたたかい とても気持ちいい… 戻らず、ずっとこうしていたい
スイハの手に力がこもり 肌と肌が密着しあう
マスターが思わず身を離すと スイハもまた我に返って そっと顔を伏せた
【スイハ】 …失礼
【スイハ】 …しまった、やりすぎちゃった 絶対、変に思われた
なにごともなかったかのように 言葉少なにつぶやくが その心の内は千々に乱れていた
【スイハ】 マスターのそばにいたいけど 気を抜くと近寄り過ぎちゃうし… やっぱり私は、離れたほうが
その想いを、言葉にしようとしたとき 彼女の目は、かすかに震える マスターの様子を目ざとくとらえる
【スイハ】 お体が、冷えてしまいましたね
【スイハ】 …マスターが風邪をひいてしまう だったら、私がするべきことは
【スイハ】 …その、お嫌かもしれませんが…
【スイハ】 …これは、マスターのために
【スイハ】 …変に思われるかもしれないけど …マスターのためなら たとえ嫌われても、そばにいる
荒波よりも、なお高く恐ろしい 嫌われたくないという気持ちの壁
それを彼女は マスターを思う心で乗り越え… 少しだけ、マスターの方へと近づいた
ほんの少しの勇気だが、 そこには強い思いが込められていた
その熱い心が新たな力 『零式・盛暑の冷涼』のスキルとなっていた
【スイハ】 水着で触れ合うのは …少々、恥ずかしいですね
少々どころではない 頬の色で雄弁に語っていた
【スイハ】 …マスター、もう完全に泳げますね まだ浮き輪は要りますか? それとも、私が居た方が?
スイハの言葉にマスターは頷き、 君のおかげでもう大丈夫だよ、 とお礼を言った
【スイハ】 …はい、わかりました
マスターの優しい言葉に 言葉少なに応えながら…
スイハは複雑な想いを視線に乗せ 静かにマスターと見つめ合っていた
Next: 240191211