310041211 草薙剣・獣刻・ヴリトラ マスターと団長
マスターの隊に、 小さな姫が入隊した
【草薙剣】 そちがマスターか?
【草薙剣】 …ふむ 余の力が必要と言うのなら、 誠意が必要じゃとは思わんか?
誠意?と聞き返すマスターに 彼女は答える
【草薙剣】 そうじゃな…… ほれ、菓子とジュースを 寄こすがいい
言われた通り、 彼女の望むものを 手渡すマスター
【草薙剣】 いいじゃろう
【草薙剣】 ところで 聞かせてもらうが
【草薙剣】 そちはなんのために戦う?
なんのため? 彼女からの突然の質問に、 考え込むマスター
そして――
もちろん世界を平和に導くためだよ …と答えた
【草薙剣】 ……ほぉ?
【草薙剣】 余よりも大きな目標を持つなど、 生意気な奴じゃ
【草薙剣】 じゃが…… だから気に入ったっ!
【草薙剣】 大願を叶えるために 余の力を求めるとは、 そち、見る目があるではないか
【草薙剣】 余がそちの夢を叶えてやる! 今、この時より、 そちは余の配下じゃっ!
【草薙剣】 草薙剣・獣刻(ぷらんと)・ ヴリトラの力、見せてやろう!
よろしくね、と微笑むマスター ……が、
【草薙剣】 その代わり、 今日からこの隊は草薙団じゃっ! よいなっ!?
えぇぇっ!? ひょんな経緯からマスターの隊は、 彼女の配下になってしまったのだった
その後――
【草薙剣】 余はジュースが飲みたいぞ マスター、持ってくるがいい
マスターを従え、 我がまま放題に振る舞う彼女
【草薙剣】 なんじゃ、余に頼み事じゃと?
【草薙剣】 はっはっはっ、 そちも余の凄さが わかってきたようじゃな?
【草薙剣】 仕方ないのうっ、 何でも言ってみるがいいっ!
しかし、マスターも 彼女を上手くおだてるため、 満更でもない御様子
【草薙剣】 まったく余がいないとダメじゃの~ 任せよ、任せよ
偉ぶってはいるが、 根っから性格が悪いわけではなく、 頼まれるとイヤとは言えない
というより、 むしろ積極的に引き受けてくれる
ゆえに隊の姫達は皆、 そんな彼女をかわいいと 思っていた
だが、戦闘に出た時には――
【草薙剣】 さぁ、余の配下達! その力を余に見せるがいいっ!
【草薙剣】 喰らえぃっ!!
圧倒的な力で敵を蹴散らしていく
そして……
【草薙剣】 あっはっはっ! この勝利は草薙団のものだっ!
必ずや勝利に導いてくれるので、 皆、団長としての実力を 認めていたのだった
しかし、そんな ある日――
【草薙剣】 もっと声を出せっ!
姫達を率い、 戦闘の特訓に励んでいる草薙剣
【草薙剣】 前進あるのみじゃっ! 皆でぶつかれば、 大きな壁も必ずや突破できる!
全員で息を合わせて、 突撃する特訓を強いる草薙剣
その様子を見ていたマスターは、 休憩に入った時、彼女に尋ねてみた
随分と厳しい特訓だね?と
【草薙剣】 仕方あるまい この先、敵はどんどん強大に なっていくからの
【草薙剣】 ついてこられん者には申し訳ないが 戦いから外れてもらっておる
【草薙剣】 …大きな目標のためには、 多少の犠牲も致し方あるまい
そう言う彼女に、マスターは意見する 皆で息を合わせるのは、 もちろん大事だと思うけど……
それぞれの個性を伸ばす戦い方も 大事なんじゃない?と
【草薙剣】 ………
少し考えた後、 今度は彼女が マスターに尋ね返した
【草薙剣】 そちはなんのために戦う? 以前、そう尋ねた時……
【草薙剣】 『世界を平和に導くため』…… そちはそう答えた
【草薙剣】 それは素晴らしい答えじゃ
【草薙剣】 ならば、余もそれに 全力をもって応える所存じゃ
【草薙剣】 …おっと、 そろそろ休憩は終わりじゃ
【草薙剣】 すまぬの、マスター これが余のやり方なのじゃよ
姫達の元に戻ってゆく彼女の 背中は、いつもより 小さく感じられた
それから数日後――
【草薙剣】 ふ、不覚っ……!
戦場に倒れる草薙剣
彼女の言葉通り、 敵はさらに強大になって 姫達の前に現れていた
【草薙剣】 み、皆の者……! 今こそ前進あるのみじゃっ!
【草薙剣】 全員でぶつかれば、 大きな壁も必ずや突破できる!
……が、特訓の成果も無く、 傷を負っていく姫達
【草薙剣】 そ、そんな……
【草薙剣】 一体……どうすれば良いのじゃ……
彼女が絶望に覆われた時、 破ったのは――
皆、諦めないで!
マスターだった
戦いから外されていた姫達を 引き連れてきたのだ
姫それぞれの持ち味を 活かした作戦に切り替え、 采配するマスター
【草薙剣】 な、なんと……
瞬く間に陣を立て直し、 誰一人 死なせることなく、 姫達を退陣させたのだった
【草薙剣】 ………
それから、また 数日が経過した頃――
【草薙剣】 ……マスター
マスターが、 草薙剣の様子を見にやって来た
傷はまだ痛む? 容態を心配するマスター
【草薙剣】 ………
怪我はすっかり治っていたが、 手痛い敗北を喫したため、 彼女の心の傷は癒えていなかった
【草薙剣】 すまぬ…… 皆をひどい目に 遭わせてしもうた…
誰にだって失敗はあるさ 誰も大事に至らなくて良かった そう言って、マスターが慰めるも――
【草薙剣】 余は役立たずじゃ……
ひどく落ち込んでいる彼女
【草薙剣】 あれでは主失格…… 草薙団は今日をもって 解散する…
悲痛な表情で、 そう言い放つのであった
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