310041212 草薙剣・獣刻・ヴリトラ 天地轟く雷蛇の剛剣
あの日以来、 草薙剣はずっと落ち込んでいた
【草薙剣】 ………
そんな彼女に、 マスターは甲斐甲斐しく 声を掛け続ける
【草薙剣】 ひとつ…尋ねても良いかの?
彼女は、 ずっと気に掛けてくれる マスターに想いをぶつける
【草薙剣】 そちはずっと 世界を平和に導くと 言っておるが……
【草薙剣】 一体どうやって 叶えるつもりなのじゃ……?
不安げな彼女の目を 真っすぐ見据え、 マスターは答える
確かに僕は戦闘においては、 皆より弱い未熟者だ でも、だからこそ……
自分にしか出来ないやり方で 夢を叶えてみせる…と
【草薙剣】 自分にしか 出来ないやり方……? それは……
采配だよ 笑顔で答えるマスター
【草薙剣】 ……!
隊の姫達の戦力、得手不得手、 精神状態などを誰よりも理解し、 戦局を見極め、作戦を組み立てる
そして、その先に勝利を手にする 絶対に誰も死なせやしない
仲間の死の上に成り立つ平和なんて、 意味が無いからね 真剣な目でマスターが答える
【草薙剣】 !!
【草薙剣】 ……そこまでの… 覚悟か
【草薙剣】 多少の犠牲はやむなし…… そう言った自分が嫌になるわ…
自身の甘さを思い知らされる草薙剣
【草薙剣】 じゃが余には、 マスターのような 姫達を見る目は無い……
【草薙剣】 では一体、どうすれば……? どうすればマスターのような 主に……
思い悩む彼女に、 マスターは告げる
悩まなくても大丈夫 君には、僕には無い力があるから
【草薙剣】 ……それは
『天地を覆い隠すもの』 そんな異名を持つヴリトラの力さ と、マスター
【草薙剣】 ……!
それに、 頼まれるとイヤとは言えない、 実は気立てのいい性格もね
と、微笑む
【草薙剣】 ………
【草薙剣】 もしかしたら余は……
【草薙剣】 自分には似つかわしくない道を 進んでいたのかも知れぬ……
そう呟いた後、彼女は宣言する
【草薙剣】 見ておけよ、マスター 次は…… 絶対にしくじらぬ……!
彼女の目に、力が戻ってきた
【草薙剣】 ふん…!ふん…!
それ以来、彼女は一人で 特訓を積むようになった
【草薙剣】 次こそは…必ずや!
そして数日後――
【草薙剣】 ……来たか
押し寄せる敵の大群
前回、苦杯を喫した 相手との再戦が始まる
【草薙剣】 マスター、一つ頼まれてくれるか
【草薙剣】 采配は、そちに任せる
…! 驚き、尋ねるマスター じゃあ君は……?
【草薙剣】 余は…… 頼まれたことを遂行する!
……わかった! じゃあ…遠慮なく頼もうかな! 笑顔で応えるマスター
【草薙剣】 うむ!なんでも来いじゃ!
その言葉通り、マスターの指示や、 姫達からの要請に応えながら、 戦う彼女
【草薙剣】 わかったぞ、マスター!
【草薙剣】 皆の上に立ち、 ただ偉そうに 指示をするのではない…
【草薙剣】 皆の声を聴き入れ、 それに応える
【草薙剣】 これこそが余の戦い方…… 余の進むべき道だったのじゃな!!
【草薙剣】 見えたっ! 余の主としての在り方がっ!!
【草薙剣】 新技! 『天地轟く雷蛇の剛剣』―――っ!!
新たな力に目覚めた彼女は、 見事 敵を撃破するのだった
戦闘後――
【草薙剣】 礼を言うぞ、マスター
【草薙剣】 なんのために戦うのか……
【草薙剣】 その答えを見い出せずにいた余に 進むべき道を示してくれて、 ありがとう
深々とマスターに頭を下げる彼女
【草薙剣】 これからは偉ぶることなく、 自分を鍛えていく
【草薙剣】 そうして、余が主としての 在り方を見つめ直す間…… そちを余と並ぶ者として認めてやろう
【草薙剣】 だから良いか?
【草薙剣】 長として未熟であろうとも…… 余はそちの主として、 恥ずかしくない者にならねばならぬ
【草薙剣】 それが、 そちを配下として囲った 余の責任というやつじゃ
【草薙剣】 余は…… マスターと共に、 世界を平和に導いてゆくぞ
笑顔で宣言し、 ドヤ顔を見せる彼女
その姿はとても可愛らしく、 輝いて見えた
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