320021211 アイムール・D. plug・モート モノクロな日常
ブーン
穏やかな平原に、 虫の羽音が聴こえる そして、その背後に忍び寄る影
【アイムール】 眼前を飛び回る虫を捕捉しました 駆逐します
がごぉん! と、けたたましい音が鳴り響く
何事かと思ったマスターは 慌てて音がする方へ駆け寄った
そこには、 真っ二つに割れた大きな岩 そして、アイムールが立っていた
【アイムール】 おや、マスター いらっしゃったのですね
【アイムール】 問題ありません 虫がいただけです
【アイムール】 駆除は完了いたしましたので どうぞご安心を
虫の駆除は助かるけど、 物を不用意に壊しちゃいけないよ と、優しく注意するマスター
【アイムール】 …この身は冥界に等しく、 飢えと渇きを携えた私は 常に果てなき飢餓と共にあります
【アイムール】 じっとしていると 余計に意識してしまいますので
【アイムール】 ああ…お腹が、 お腹が空きました
空腹を訴えたアイムールは じゃらり、と 武器を持ち上げた
【アイムール】 マスター 戦いはどこですか? 戦闘のご命令をください
また何かを壊される前に マスターは慌てて 自分の朝食を差し出していた
【アイムール】 え…マスター? なんですか、このトーストは
【アイムール】 単なる空腹ではないのですが… 食せという命令であるならば いただきましょう
あまり気乗りはしないようだったが 少しは落ち着いてくれたようだ
おいしい? と、マスターが尋ねる
【アイムール】 食事とは、 エネルギーの補給に他なりません それ以外の感覚は特には…
味がわからないの? と、マスターは問いかける
【アイムール】 味はわかりますが、 美味しいという感覚が 私にはわからないのです
【アイムール】 私の役目は戦うこと そこに必要のない感覚は、 いつしか感じなくなりました
【アイムール】 しかし、問題ありません 戦闘には支障ありませんから
どうやら深い理由があるらしい 事情を聞かせて と、マスターは尋ねた
【アイムール】 私の過去に興味がおありですか? …マスターは今までの主人とは 少し違うようですね
【アイムール】 かしこまりました それでは、お話しいたします
淡々とした口調で話すアイムール マスターは彼女の話に耳を傾けていく
彼女の口から語られるのは 血塗られた闘争の昔話
【アイムール】 どのような戦況でも そして、いかなる相手でも 標的を逃すことはありませんでした
【アイムール】 逃げるならばどこまでも追いかけ、 命令とあらば、敵を駆逐し捕食します 私はそうやって生きてきたのです
アイムールは淡々と、淡々と しかし、重くのしかかる過去を 一切の感情の揺らぎを見せずに話す
彼女の語る暗く深い昔話に、 次第にマスターは、 引き込まれていくのだった…
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