320101212 ウコンバサラ・D. plug・ヴィネ 渦巻く蛇牙の強撃
【ウコンバサラ】 マスター みんなを呼んできて欲しいんだけど 頼めるかな?
拠点へと一度戻ったウコンバサラは 屈託のない笑顔でそう言った
【ウコンバサラ】 さっきちょっとだけ散歩しに行ったら 見つけたんだ すっごく良い場所を!
【ウコンバサラ】 ふふふ、見せたらきっと驚いちゃうね だからみんなを呼んできてほしいな?
かわいらしく上目遣いで マスターをじっと見つめる
しかし、その瞳は 底知れず広がる深い闇のように 暗く、誰も映ってはいない
【ウコンバサラ】 みんな集合したらすぐ出発するから 忘れ物とかしないようにね?
【ウコンバサラ】 あ、ほら 見えてきたでしょ
ウコンバサラが指さす 方向には城のような 建物がある
何の建物かな? とマスターが首を傾げる
【ウコンバサラ】 気になるから 早くみんなで調べに行こう
マスターの心配をよそに キル姫達の背中を押して 建物へと誘導していく
いつもの彼女なら、 仲間達を心配するあまり 不用意に近寄らせないだろう
何か裏があるのかもしれない いつものウコンバサラとは様子が違う マスターは違和感を覚えていた
【ウコンバサラ】 大丈夫、私がついているから だから早くみんなあそこに…
だがその違和感のことを 忘れさせる事態が 目の前に飛び込んでくる
【ウコンバサラ】 …なに、あれ
【魔獣】 グオオオオオオオオオッ!
魔獣の襲撃である ウコンバサラの留守を狙い 箱庭を侵略しに来たのだろう
すぐさま戦闘態勢に移る面々 マスターも前線へと飛び出す仲間に 指示を出す
【ウコンバサラ】 ど、どうして…私の箱庭が…塔が… 確かにあの時はいなかったはずなのに あそこは安全なはずなのに…
突然の強襲で連携が取れず 苦戦するマスターとキル姫達
【ウコンバサラ】 これじゃあまるで わ、私がみんなを危険に晒して…
【ウコンバサラ】 ちがう、そんなつもりじゃない そんなつもりじゃないんだ、みんな ゆるして…ちがうんだよ…
みんなを護る その信条を掲げる彼女にとって この事実は受け入れ難いものだった
そして、魔獣を前に 上の空状態の彼女は 格好の的となっていた
【魔獣】 ガアァッ!
【ウコンバサラ】 …きゃっ!
危ない! とマスターが飛びつく
間一髪で、 魔獣の攻撃からウコンバサラを 守ることに成功する
【ウコンバサラ】 あ…マスター、ごめ、ごめんなさい 私、みんなを… こんなつもりじゃ…っ!
落ち込むウコンバサラに マスターは慰めるのではなく 逆に発破をかける
ならここでみんなを助けてこそ ウコンバサラなんじゃないのか マスターは彼女に訴える
【ウコンバサラ】 えっ…
確かにこの状況は君が 招いたことなのかもしれない
でも、この状況を 打破できるのも 君しかいない
【ウコンバサラ】 でも、私は…みんなを…
守りたいんだろ!
【ウコンバサラ】 ……っ!!
その瞬間、 ウコンバサラの頭の中に あるひとつの光景が浮かぶ
大切なみんなとの 穏やかで笑い合う 日々
【ウコンバサラ】 私は、私はっ……! みんなを…
【ウコンバサラ】 守りたいんだああ!
【魔獣】 グガアアアアア……!
超反応で魔獣を屠るウコンバサラ むしろ事前に襲われることが 分かっていたような早さだった
【ウコンバサラ】 今見えたんだ キミの背中から血が溢れる未来…
【ウコンバサラ】 ごめんね、マスター 迷惑かけちゃって でももう安心していいよ…
【ウコンバサラ】 キミの言葉のおかげで 目が覚めたみたいだ
【ウコンバサラ】 もう、大丈夫 そんな不吉な未来… 全部私がぶっ潰してあげるから…っ!
ウコンバサラは気を取り直し 覚醒した闘将の如く 瞬く間に魔獣達を圧倒していく
そして、ものの数分で 全ての脅威を撃破し、 辺りは静まり返る
【ウコンバサラ】 はぁ… これで全部、かな
町へ戻ったウコンバサラ達は 心配そうな顔をして みんなのところへ駆け寄る
【ウコンバサラ】 みんな大丈夫?怪我してない?
先ほどまで圧巻の戦いをしていた 彼女とは変わり、今度はみんなの元へ 優しい笑顔で駆け回る
【ウコンバサラ】 ごめんね…私がいたのに、 こんなことになって…
【ウコンバサラ】 けど安心して? これからは私がいるから
【ウコンバサラ】 絶対何があっても みんなのことを護るよ いつでも私が駆けつけてあげる…
鬼気迫る表情から一変 慈愛のこもった微笑みで つぶやくウコンバサラ
しかし、ここは一体なんなのか 改めてウコンバサラに説明を求める マスターとキル姫達
【ウコンバサラ】 あ…あぁ、ここは、その… みんなが安全に暮らせるようにって 造った私の箱庭で…
【ウコンバサラ】 あの奥にある塔の中で 安心して暮らせたらって思って 私が建築したんだ…
【ウコンバサラ】 でもごめんね… 結果として、こんな目に合わせて… それに私、元々あそこにみんなを…
何かを言いかけた途中 みんなから称賛と感嘆の声が上がる
【ウコンバサラ】 え…ど、どうしてみんな… なんで褒めているの…
自身の予想に反して 周りの反応は暖かく 嬉しい大誤算だった
【ウコンバサラ】 でも、あの箱庭は もう必要なくなっちゃったね
え?どうして? と問いかけるマスター
【ウコンバサラ】 私は箱庭がなくたって みんなを守るって 決めたから
【ウコンバサラ】 だから、もうこの箱庭は 必要ないんだよ
そっか、と 微笑むマスター
【ウコンバサラ】 私に足りなかったのは みんなを守るって 決意だったんだ
【ウコンバサラ】 私は箱庭なんて なくたって みんなを守ってみせるよ!
そう言った 彼女の笑顔は 輝いていた
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