330312211 カシウス・獣刻・ウロボロス人気投票ver. 御館様の手
まだ外は暗く、朝というには 早すぎる時間から、カシウスと マスターは朝食の準備をしていた
今日の任務は遠い場所まで行くため、 早めに出発する必要があった
マスターは半分寝ているが、 カシウスはいつも通りに見える
あくびとかしないかな と見ていると…
【カシウス】 御館様… 手が止まっている
と、カシウスに注意されてしまった ごめん、と謝りながら、 カシウスは眠くないの、と聞いてみる
【カシウス】 料理は消費と生産の円環の象徴… 繰り返される営みを、 ただなぞっているだけ
つまり、慣れている作業だから 眠くてもできるってことかな? と尋ねるマスター
【カシウス】 ……
マスターの問いに無言で 頷くカシウス
へー、すごいんだね とマスターが褒めると、
【カシウス】 …………
カシウスは少し照れた様子で、 黙々と料理の仕込み作業を続ける
マスターはその手さばきに見惚れつつ かぎ爪をつけていない姿にも 新鮮さをおぼえていた
そういえば、いつも付けている あのかぎ爪って重そうだよね と、マスターは聞いてみる
【カシウス】 …それほど重くはないわ
カシウスの返事は簡潔で、 話はすぐに終わってしまう
マスターは次の会話の糸口を 探そうとして、 カシウスの綺麗な手に目が止まる
【カシウス】 …御館様?
その視線に気づいたカシウスは、 いぶかしげにマスターを見ていた 思ったことを正直に伝えると…
【カシウス】 わたしの手が、綺麗? そっ、そう…
照れながらそういうと、 カシウスは嬉しそうに 自分の手をまじまじと見つめた
そして、何かを思い立ったように マスターを見る
【カシウス】 御館様の手も、見せて
えっと、いいけど… と、マスターが手を出すと カシウスは思いのほか熱心に見ている
よく見ると、自分の手は傷だらけで お世辞でも綺麗とはいえない
恥ずかしいから、もういいよね? と、マスターは手を後ろに隠す
【カシウス】 どうして? もっと見たいわ
カシウスは不思議そうな顔をするが、 マスターは、みんなが待っているから 朝食の準備をしないと、とごまかす
【カシウス】 準備なら終わっているの だから…
じゃあ、みんなを起こしてくるね と、カシウスの言葉をさえぎるように マスターは慌ただしくその場を離れた
残されたカシウスは、 自分の手を見ながら そっとひとりでつぶやいた
【カシウス】 御館様の手、わたしより大きかった… また、見せてもらえるかな…
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