340061202 梓弓・獣刻・メデューサ 災いを祓う邪眼
数日経ったものの、 占いの結果が本当だったのかと 疑わしいほど、問題は起きていない
今も戦闘の途中だが、 普段よりも気合の入った斬ル姫達の おかげで危なげなく進んでいる
【梓弓】 わたくしの瞳の色、 しかとその眼に焼き付けなさい
大勢が決まったからか 敵の多くも撤退し始めている
【ハルモニア兵】 お前が、お前さえいなければっ…! 主よっ、私に力を―!
…え?
マスターから少し離れた物影― そこから、ハルモニアの兵士 が飛び出してきた
【梓弓】 マスター!
咄嗟のことで、 マスターは動けずにいた
周りの斬ル姫達も気付くが、 あまりに距離がありすぎていた
【ハルモニア兵】 くらえぇぇぇぇっ――!!
振り下ろされた凶刃が迫る そして―
【ハルモニア兵】 な、なんだ… これは…う、動け…動けっ!
眼を瞬かせるマスターの前で 刃がピタリと止まっていた
【梓弓】 マスターを傷つけさせは… しません
妖しく光る瞳を向け、 息を切らせる梓弓
【梓弓】 この瞳に止められない物など ありはしません
【梓弓】 マスターに危害を加えようとした罪… 地の底で購いなさい…
【ハルモニア兵】 ぐっ…主よ… 申し訳、ありません…
助けられ、お礼を言おうとする マスターだったが―
【梓弓】 ダメですっ… 来ないで下さいっ!
悲鳴のような声を上げ、 走り去る梓弓
そんな彼女を放っておけず、 マスターも急いで彼女を追った
息を切らせて追いかけるマスター そして、なんとか梓弓のもとに たどり着いた
だが…
【梓弓】 お願いです それ以上、近づかないで… 今は…
今は…? 入り口に立つマスターは尋ねる
【梓弓】 わたくしの邪眼が… 抑えられない…
【梓弓】 このままではマスターを 止めてしまう
【梓弓】 いつもわたくしが 戦闘で最前線に立つのも…
【梓弓】 味方に目を合わせなくするためです 邪眼で止めないですむから
【梓弓】 メデューサのこの力… どうしてわたくしがこんな… いらないのに…
【梓弓】 大きな災いは、 きっとわたくしのこと…
【梓弓】 ですから今は…来ないでください 落ち着けば大丈夫ですから
だから、一人にしてください そう突き放す梓弓に、 マスターは苦笑を返した
そして、彼女に近づく
【梓弓】 ど、どうしてですかっ…! 一人にしてくださいと 言っているではないですかっ…!
マスターの方を見ないまま 声を荒げる梓弓
隊の大切な仲間が苦しんでいるのに 見て見ぬフリなんて出来ない
それに、その力のおかげで 助かったんだから、 その力を怖がるつもりはないよ
そう言って、 マスターは梓弓の隣に座った
【梓弓】 マスター…
それに、大きな災いは梓弓のおかげで 切り抜けられたんだし、 今は安心だよね
【梓弓】 ふ、ふふっ…
そう笑うマスターに釣られて、 梓弓もかすかに笑みを浮かべた
【梓弓】 ですが… どうしてわたくしをここまで 信頼してくださるのですか?
【梓弓】 メデューサの力はとても強力です… わたくし自身にすら 影響を及ぼすほど…
そんなの簡単だよ
梓弓はその力で僕を助けてくれた その強い力は使い方次第、 梓弓が使う限り、大丈夫だよ
全幅の信頼の篭った言葉、 それが嬉しくて梓弓は眼を閉じて、 近くにあった鏡に触れた
【梓弓】 …ありがとうございます、マスター その言葉で、アズサは救われます
眼を閉じたまま笑顔を浮かべる 梓弓の表情は、見たことがないほど やわらかいものだった
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