40181203 ヨミ 『深淵からの声』
それからしばらく経った、ある日
マスターはヨミを連れて 夜の街へとくり出していた
【ヨミ】 マスター? こんな時間に何処へ行くの?
疑問でいっぱいのヨミを連れ たどり着いたのは喫茶店
しかもこの店は 夜だというのに煌々と明かりが灯り 営業中であることが見て取れた
【ヨミ】 こんな店が、街にあったなんて え? 入るの? わぁ! なにを頼んでもいいの!?
しばらくして、 お腹いっぱい甘味を楽しんだヨミは マスターとふたり、帰路についていた
【ヨミ】 そういえばあの日は 甘味と引き換えに部屋から 出たんだった
すっかり忘れていた、と笑うヨミ その笑顔は、夜の中でも輝くように マスターの目に焼き付いた
【ヨミ】 正直なことをいうとね、 こっちの世界でやっていけるかって 不安も、少しあったんだ
【ヨミ】 けど、ソチがいて 仲間たちがいて…
【ヨミ】 今はもう そんな不安は吹っ飛んじゃった
【ヨミ】 知らなかったよ 闇の化身であるボクにも まだこんな感情があったなんて
感慨深げにそう語るヨミ そんな彼女の手中にささやかな光が 灯り、ふたりを温かく包む
それは、ヨミの内に新たなスキル 『深淵からの声』が 誕生した瞬間でもあった
【ヨミ】 でも、さ
【ヨミ】 仲間たちのことは、 すごく気に入っているけど…
【ヨミ】 ボクの一番の… そう、一番の友達はソチだよ
【ヨミ】 ふふ、不思議な気分だ まさかこんな言葉を 口にする日が来るなんて…
【ヨミ】 ねえ、ソチは? ソチにとって、 ボクはどんな存在なのかな?
【ヨミ】 あっ、だんまりはずるい! ボクはもう言っちゃったんだぞ!?
【ヨミ】 言っとくけど、逃げ場はないよ? まだ夜道は長いんだから— じっくりと聞かせてもらうからね?
あの手この手でマスターから 本音を聞き出そうとするヨミに それを躱すマスター
そんなじゃれ合う二人の 着いたり離れたりする影が 月夜の下に写しだされていた
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