50162211 フラベルム 屋上からの景色
これはまだ、マスターが 学園に来て間もない頃の話…
お昼休みに浮き足立つ教室内 みんなそれぞれのお弁当を広げて 楽しそうに笑いあっている
そんな中、マスターは急に ぽつん、と取り残されたような 気持ちになった
転入生ということもあり、 どこか疎外感を覚える
マスターは静かに席を立ち上がると 賑やかな教室を抜け出して 屋上へと向かっていった…
真っ白な日差しを浴びて マスターが一息ついたとき ふと、後ろから声がかかる
【フラベルム】 誰かと思えば… ここでなにをされてるんですか? マスター
太陽から零れ落ちたかのような 金色の髪をなびかせているのは フラベルムだった
【フラベルム】 地べたを這うのが似合いそうな あなたが屋上にいらっしゃるなんて… 場違いな感じがしますわ
彼女は超がつく毒舌家である だが、キツい言葉を気にすることなく マスターは笑顔を絶やさず接する
教室に居づらくて… とマスターが言うと
【フラベルム】 教室に…? そんな事情がありましたか 随分と小さな悩みですわね
【フラベルム】 まあ、羽虫のようなあなたには お似合いかもしれませんが
フラベルムはそう言うと マスターの前を通り過ぎ 離れた場所に座った
すると、 隣、座るね とマスターは彼女の横に腰を下ろす
【フラベルム】 …どうしてわざわざ わたくしの隣に座るのですか?
一人で食べるのも味気ないし よかったら話し相手に なってくれないかな、とマスター
【フラベルム】 一人でゆっくりとしたかったのですが …まぁ、いいでしょう
ありがとう、と マスターは彼女の傍に腰を下ろし お弁当を開け、食べ始める
フラベルムはよく屋上に来るの? とマスターは尋ねる
【フラベルム】 口の中に物を入れながら 話すと、ますます下品に 見えますわよ
僕ははじめて来たけど 景色はいいし、風は気持ちいいし いい場所だね、とマスター
フラベルムの毒舌を 全く気にすることなく話す マスターに諦めたのか、
【フラベルム】 そうですね 高いところからの景色は わたくしも好きですよ
ため息交じりになりながらも 笑顔を見せる彼女
へぇ、とマスターは 意外そうな声を出した
彼女が自然な笑顔を浮かべ、 刺の無い言葉を素直に言うなんて よほど好きなのだろう
マスターはお弁当をつつきながら 彼女が好きだと言う 屋上からの景色を、改めて見下ろした
眼下では生徒達が楽しそうに はしゃいでいる
生徒達が活き活きとしていて とてもいい景色だね とマスターは微笑んだ
【フラベルム】 …活き活きと?
【フラベルム】 なるほど まぁ、そういう見方もできますね
【フラベルム】 …流れる汗さえもキラキラと 輝いて見える それがまるで景色の一部のように
風景に対しての話なら 毒舌を吐かず、素直な気持ちを 口にしている
毒舌家の彼女が見せる 意外な一面を垣間見れて、少しだけ 得をした気持ちになるマスター
教室でもこうやって素直で いてくれたらいいのにな… と、マスターは思うのだった
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