510143211 ティルフィング・擬彩 完全なる理想へ
けたたましい轟音
武器同士が激しくぶつかり合う 金属音が鳴り響く
戦況は思わしくない
窮地に陥ったマスターの前に、 一人の姫が現れた
【ティルフィング】 アナタも目覚めたのですね
【ティルフィング】 私は… 大地の声を聴いていました
【ティルフィング】 ここは偽りの地、 真実が隠された箱庭の楽園…
【ティルフィング】 …ですが、安心してください
【ティルフィング】 全ては調和され、 純潔な世界に生まれ変わるのです…
そう言ったかと思うと、 戦場に駆けて行き、 瞬く間に敵を斬り伏せる
彼女の出現のおかげで、 マスターの隊は見事、 逆転勝利を収めるのだった
【ティルフィング】 純潔な世界こそ、 完全なる姿
【ティルフィング】 新たなる世界の創造… それが世界の救済であり、 私の叶えるべき願いです
戦闘能力も高く、 世界を平和に導きたいという 理想も強いティルフィング
彼女が加入し、 マスターの隊は、 大きく強化された
そんな彼女を、姫たちは歓迎する
だが、ある日、 隊内で問題が発生した
戦闘時、一人の新入りの姫が、 恐怖に駆られ 足がすくんでしまったのだ
【ティルフィング】 どきなさい!
【ティルフィング】 はぁぁぁぁっ!!
そのせいで命の危険に晒された マスターを救ったのは、 ティルフィングだった
【ティルフィング】 …ふぅ
助かったよ、ティルフィング 礼を言うマスター
【ティルフィング】 ………
だが、彼女の表情は 今まで見たことが無いくらい 険しかった
【ティルフィング】 恐怖… それは心に生まれた 魂の濁りになります
【ティルフィング】 純潔なる世界に 穢れた者は不要です
【ティルフィング】 摘み取らなければなりません
マスターを危険に晒した姫に 罰を与えようと、 剣を向けるティルフィング
そんなことする必要ないよ! と、マスターはその姫の前に立つ
【ティルフィング】 いいえ
【ティルフィング】 “マスターを持つ” キラープリンセスは、 マスターを守るのが使命
【ティルフィング】 その使命を忘れ、 自分の身を優先するような者は 世界に必要ないのです
だからって、殺すことはない! と激しく反論するマスター
【ティルフィング】 分かって下さい これも…完全なる世界を 創造するためです
ダメだ! マスターは必死に姫を守ろうとする
【ティルフィング】 …これ以上、庇うようなら、 あなたごと斬りますよ
剣を振り上げ、殺気を放つ彼女
それに対し、一歩も引かないマスター
そんな彼に、 ティルフィングは 疑問をぶつける
【ティルフィング】 なぜ、助けたいのですか? 彼女はあなたの命を…
この子を助けたいだけじゃない 君も助けたいんだ とマスターは答える
【ティルフィング】 どういう意味です…?
心の闇にとらわれた君を救いたいんだ ティルフィングの目を見て、 マスターが言い放った
【ティルフィング】 !!
【ティルフィング】 ………
【ティルフィング】 …わかりました
暫しの沈黙の後、 彼女が剣を振り下ろした
――だが、それは、 マスターの寸前で止まっていた
【ティルフィング】 ………っ
どうして…? 尋ねるマスターに彼女は何も言わず、 どこかへと去ってゆく
マスターには、彼女の顔が 悲しげに見えた気がしたのだった
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