510251212 ムラマサ・獣刻・ヤマタノオロチ 自分との戦い
【ムラマサ】 姉上……
【ムラマサ】 拙者が超えたいのは、 我が姉マサムネなのです
【ムラマサ】 幼い頃を共に過ごし、 ずっと憧れの存在だった姉…
【ムラマサ】 拙者の目標は、 そんな彼女の剣技を超えること
【ムラマサ】 『大罪の獣』という力を 手にしたことで、 その夢は叶うと思いました
【ムラマサ】 でも…
【ムラマサ】 強くなりたい… 拙者の“強欲”は暴走するばかりで、 まったく上手く使いこなせません…
【ムラマサ】 それどころか… 自分の焦りを人にぶつけ、 怪我をさせてしまいそうに…
【ムラマサ】 情けなくて、 涙が出てきます…
俯くムラマサ
――と、
よかったら、僕も 修業を手伝おうか? とマスターが提案する
【ムラマサ】 ……え?
【ムラマサ】 そ、その… お気持ちはありがたいのですが…
もちろん僕じゃ君の相手は務まらない 練習相手になるんじゃなくて、
コーチのような、練習のメニューを 考える役割を担うって 意味だよ…と補足する
【ムラマサ】 ……コーチ
【ムラマサ】 そんなことで… 姉上に勝てるのか…
心配そうな彼女だが、 やる気満々のマスターの提案を 断りきることは出来なかった
だが……
【ムラマサ】 はぁ!はぁ!はぁ!
マスターが考えた稽古は 半端ではなかった
【ムラマサ】 い、意外っ…!
朝から走り込み、川で泳ぎの稽古、 千本の薪割りなどを終え、 ようやく剣を使った特訓に入る
しかも組手ではなく、 延々と素振りをするものだ
【ムラマサ】 うぅ…! これも…姉上を超えるため! それと…
【ムラマサ】 主君の期待に応えるため!
剣術の素人であるマスター だが色んな文献で剣術の鍛錬法を 一生懸命に調べてきてくれる
彼女はそんなマスターの好意を 無駄にしたくもなかった
【ムラマサ】 しかし… これはあまりにも 厳しい…
古(いにしえ)の剣豪が こなしたという鍛錬法に、 根を上げそうになる彼女
しかし、その度に 頑張って!マサムネを超えるんでしょ と言われ、
【ムラマサ】 はいっ!!
彼女は己を奮い立たせるのだった
そして、一か月後
【ムラマサ】 はぁぁ、はぁぁ、はぁぁ…!
マスターが考えた 特訓方法を全てこなし 疲労困憊のムラマサ
仰向けになり、 大の字に倒れ込んでいる
【ムラマサ】 お、終わった……
よく頑張ったね!と 彼女を褒め称えるマスター
【ムラマサ】 ふふ…これで… 姉を超えられましたかね…?
マスターは答える あとは…君次第かな、と
【ムラマサ】 …え?私…次第…?
【ムラマサ】 どういうことです…?
それはね――
――と、 マスターが答えようとした時、 敵の大軍が出現した
【ムラマサ】 うぅ…こんな時に…
体も頭も まともに動かないほどの 疲労困憊状態
【ムラマサ】 無理です これでは…勝てない…! マスター、逃げましょう
しかし、マスターは 首を横に振り、 逃げないと宣言する
そして、できるよ、きみなら 僕は信じてる と、ハッキリ言い切る
【ムラマサ】 な、なにを根拠に…
この場にはムラマサ以外の キル姫はいない マスターの命も危険な状態だ
不安を抱えながらも、 立ち上がるムラマサ
【ムラマサ】 はぁ…はぁ…
もはや剣も まともに握れない状態だ
【ムラマサ】 このままでは……
しかし彼女の心配をあざ笑うように、 敵は襲い掛かってきた
【ムラマサ】 …くっ!
次の瞬間―――
【ムラマサ】 !!
【ムラマサ】 これは…!?
黒きキツネに乗り、 軽やかに敵を斬り伏せた彼女
【ムラマサ】 体が勝手に…… 一体、なにが…
驚く彼女に、マスターは言う
今までの君は、 “姉上に勝ちたい”という 強い欲で戦っていた
でも、君がやってきた修行は “己に打ち克つ”ためのもの
【ムラマサ】 己に…打ち克つ
限界と思ったところから、 さらに一歩踏み出す訓練だ
諦めずに立ち向かい、 “自分に負けたくない”という欲に 昇華できた時…
君はさらに強くなれるんだ!! マスターの檄が飛ぶ
【ムラマサ】 すべては…己に勝つため… 弱き自分を乗り超えるため!!
【キツネ】 ―――――ッ!!
黒きキツネを自在に操り、 敵を駆逐していくムラマサ
【ムラマサ】 理解しました
【ムラマサ】 “誰か”ではなく、 己を超えたいと願う強欲… それがくれる力は……
【ムラマサ】 途方もなく強い!!
新たな力に目覚めたムラマサは、 全ての敵を討ち果たすのだった
【ムラマサ】 主君の想い、 しかと受け止めました
戦闘後、 ムラマサは夜の花畑にて、 マスターと語り合っている
【ムラマサ】 自分でも不思議なんです
【ムラマサ】 体は疲れ果て、 頭ではなにも考えられほど 追い込まれた時…
【ムラマサ】 体と心… そして、大罪の獣が 勝手に動きました
【ムラマサ】 主君は… 本当に拙者のことを よく見てくれているのですね
【ムラマサ】 あれが… 拙者の剣術だったのですね
【ムラマサ】 姉上とは違う拙者だけの剣術
【ムラマサ】 主君
マスターに向き直り、 彼女は宣言する
【ムラマサ】 姉上は拙者の憧れです その想いに変わりはありません
【ムラマサ】 ですが、姉上を超えるためだけに、 姉上の背中ばかりを追って剣を 振るうのは、もうやめます
【ムラマサ】 これからは自分自身の剣術を磨き、 極めるために
【ムラマサ】 ありがとう
【ムラマサ】 拙者の刃に、 新しき輝きが宿りました
はにかんだ笑顔は、 とても爽やかな風に 包まれていた
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