520031212 ラブリュス・暴走 終局を煽情する享楽の狂斧
ラブリュスが マスターの隊に入ってから、 数日が経過した
【ラブリュス】 ねぇねぇ、みんな~
笑顔が多く、いつも明るいラブリュス
【ラブリュス】 今日もライブやるよ~♪
時折、ライブと称しては、 姫達に歌を披露したりしている
しかし彼女は、 不思議と隊には馴染んでいない 雰囲気だ
【ラブリュス】 じゃ、次のライブは、 また来週ね
それは、ぶりっ子で 甘えたがりな性格のせいでもなく、
先日のような、戦闘での 暴走モードのせいでもない
【ラブリュス】 ………
もっと、なにか彼女の根幹が 原因しているような印象だった
【ラブリュス】 え?どうしたの、マスター?
そこでマスターは、 ラブリュスとじっくり 話をしてみることにした
どうして、この隊に入ってくれたの? みんなも不思議がってたよ そう彼女に尋ねるマスター
【ラブリュス】 え?入隊した理由?
笑顔を見せ、彼女は答える
【ラブリュス】 君と出会って目が覚めたの
【ラブリュス】 入隊したのは、 世界中を笑顔にして、 人々を幸せにするため♪
【ラブリュス】 それがラブリュスちゃんの 役目であって、希望だからね
しかし、マスターは言う 本当に…そうなのかな?
【ラブリュス】 え?どういうこと?
人々を幸せにしたいのに… どうして、君の目は そんなに悲しげなんだい?と
【ラブリュス】 …!
君の目は、希望とは真逆の… 絶望を湛えているように見える
まるで君の笑顔は… 作り物のようなんだ マスターが彼女に想いをぶつける
【ラブリュス】 ………
その言葉に、 彼女の顔から笑みが消えた
教えてくれないかな? 君の過去に何があったのか? とマスター
【ラブリュス】 ……ふふ、アイドルの本質を 見抜くなんて、君はいいマスター、 うぅん、いいプロデューサーだね
【ラブリュス】 いいよ、話したげる わたしが絶望に… “終焉”に出会った日のことを
彼女が、 自身の過去について 語り始めた
【ラブリュス】 君に出会う何年も前…
【ラブリュス】 わたしは他のキル姫と同じように、 ある奏官に仕えて任務をこなしてたの
【ラブリュス】 ただ、他と違ったのは… その奏官は、わたしのファンだった
【ラブリュス】 わたしのライブを見て、 推しになったって言って…
【ラブリュス】 そのまま入隊してくれないかって 猛烈にアピールしてきたの どう?変わってるでしょ?
【ラブリュス】 どうしよっかなって迷ったけど…
【ラブリュス】 戦闘を好まない彼の隊は、 町の復興とかの任務が多いって 言ったから…
【ラブリュス】 わたしは、 そんな彼の考えに共感して 入隊したの
【ラブリュス】 その時は…
【ラブリュス】 この人と世界中を笑顔にして、 人々を幸せにしようって、 本気で考えてた
【ラブリュス】 でもね…そんな日々は、 長くは続かなかった…
【ラブリュス】 わたしのファンだって言う 別のイカれた奏官が…
【ラブリュス】 わたしを独占したくて…、 自分のキル姫に命じて、 彼を殺してしまったの
【ラブリュス】 わたしの大事な人を奪ったソイツは… 笑ってた… 卑しい…欲望剥き出しの顔で……
【ラブリュス】 それを見た時… 世界が暗転しちゃった……
【ラブリュス】 気がついたら… ソイツや、町のキル姫すべてを 血祭りにあげてたの
【ラブリュス】 それ以来かな… わたしが本気で笑えなくなったのは…
【ラブリュス】 わかる?彼を失った時、 わたしの世界は終焉したの…
【ラブリュス】 その時、誓ったんだ
【ラブリュス】 賑やかなライブが好きだった 彼への手向けとして、
【ラブリュス】 世界やキル姫を殲滅する 終焉ライブを開催しようって
【ラブリュス】 絶望しかないこの世界に… ド派手な終焉をもたらしてやるって
彼女が語る凄絶な過去に、 静かに耳を傾けているマスター
真剣な眼差しで、 彼女に問い掛ける
だったら、どうして… 僕の隊に入ってくれたの? 世界を終わらせるため…?と
【ラブリュス】 ………
【ラブリュス】 なんでかな
【ラブリュス】 君と出会って…
【ラブリュス】 『ファンになったよ』って 言われた時…
【ラブリュス】 彼と重ね合わせてしまった… あの楽しかった日々を 思い出してしまった
【ラブリュス】 世界には… 絶望しかないって 分かってるのに…
暗い目を落とす彼女に、 マスターは突如 提案する 君の本気ライブを開催しようよ!
【ラブリュス】 …は?
数日後
マスターは彼女のため、 屋外の簡易ステージを用意した
【ラブリュス】 どういうつもりか 分かんないけど… せっかく準備してくれたんだし
姫達を前に、歌い始めるラブリュス
まだ距離はあれども、 彼女の歌は心に響くものがあり、 姫達は次第に盛り上がってくる
【ラブリュス】 ……!
その声を聞きつけ、 やってくる街の人々
ラブリュスの歌声に、 笑顔で盛り上がっている
【ラブリュス】 みんな、楽しそうに 笑ってる……
【ラブリュス】 キエチャエ…… ソンナモノ…全部…
【ラブリュス】 彼ヲ奪ッタ 卑シイ人間ノ笑顔ナンテ 全部!!
人々の笑顔に、 殺戮衝動が沸き上がってくる彼女
【ラブリュス】 ゼンブナクナッチャエ!
――と、その瞬間、 マスターが音楽を止めた
【ラブリュス】 …!
休憩と称し、 彼女を袖に連れて行く
【ラブリュス】 どういうつもり…? もう少しで彼らに終焉を…!!
猛る彼女にマスターは言う 大切な人を奪われ、 人間を許せなくなった気持ちはわかる
でもだからと言って、 君が他の人の大切な人を奪って いいことにはならない
君はまだ、本気で笑えないかも 知れないけど…… 見てごらんよ
みんな、君の歌で笑顔になっている 君の歌は人間を笑顔に出来る力がある
それは君の心の奥底に、 人間への情がまだ残ってるからだ
【ラブリュス】 …!
君の過去のマスターも、 世界の終焉ライブなんかじゃなく…
君が歌で世界をハッピーにすることを 望んでいるんじゃないかな? 真っすぐ彼女の目を見据えるマスター
【ラブリュス】 ………
ラブリュスは、 過去の奏官の笑顔と、 目の前の人々の笑顔を重ね合わせる
【ラブリュス】 彼がなにを望んでたかなんて、 もう分からないけど…
【ラブリュス】 それに、わたしの心の中に、 人間への情が残ってるかなんて 疑わしいけど…
【ラブリュス】 でも、どっちにしても……
【ラブリュス】 今はライブが楽しい
【ラブリュス】 わたしはアイドル…… ちゃんと最後まで歌い切るよ
観客の前に出ていく彼女
その熱唱に、 ライブは大盛況のまま 終演した
その後、マスターと二人、 語らっているラブリュス
【ラブリュス】 今日のライブは すごく楽しかったけど…
【ラブリュス】 やっぱり… わたしは、まだ 人間を許せない
【ラブリュス】 だから、思ったの 人類は…世界は滅ぶべきか、 救うに値するか…
【ラブリュス】 見極めていこうって
【ラブリュス】 これから…君のそばで… それで、いいかな?
マスターは答える いいよ、いつか君に、 本当の笑顔が戻るまで、ね
その言葉を聞き、微笑む彼女
【ラブリュス】 …うん
【ラブリュス】 わたしは壊すことでしか、 楽しさを感じられなかったけど…
【ラブリュス】 あなたとなら、 違う楽しいことを見つけられるかも
その笑顔は、 まだ心の底からの ものではない
だが彼女の瞳には、 今までに無かった輝きが 宿り始めて見えた
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