520043212 パラシュ・擬彩 本当の理想像
でも君は… 本当に自分らしい理想に向かって、 進んでるのかな?と、
マスターに言われた彼女は尋ねる
【パラシュ】 どういうこと? ボクの理想が間違っていると…?
マスターは答える そういうわけじゃない、と
ただ、君の鍛錬法は、 誰かを必死に 模倣しているように見える
自分の理想を追っているというより、 誰かの背中を 追っているんじゃないかな?と
【パラシュ】 …!
【パラシュ】 どうして、分かったんだい…?
驚くパラシュ
【パラシュ】 確かにボクには、 憧れを抱いた理想の存在がいた
【パラシュ】 その人に近づきたくて、 今も必死に鍛えている
【パラシュ】 彼女がやっていた特訓を 必死に模倣している
【パラシュ】 だけど…
【パラシュ】 彼女のようには…なれない
【パラシュ】 理想の彼女に近づきたくて 懸命に走っても、 一向に距離が縮まる事はない
【パラシュ】 どれだけ頑張ってもボクは… 理想の存在には なれないということだ
パラシュは いつまでも理想に至れない 苦悩と葛藤を抱えていた
そして… そんな自分に苛立っていた
【パラシュ】 情けない話だよ
【パラシュ】 理想なき者への苛立ちは、 そんな自分への苛立ちの 裏返しなんだから
【パラシュ】 これがボクの…限界なのかな…
悔しさで涙ぐむ彼女
その苦悩に呼応するかのように、 空には黒い雲がかかり、 やがて雨が降り出すのだった
数日後――
マスターの隊は任務のため、 街へと向かう山道を歩いていた
先日の雨により道はぬかるんでいるが 進めなくはない しかし…
【パラシュ】 …あ
見ると、目の前の道が 大きな岩で塞がれている
大雨により、 落石したものだろう
なんとかならないかな? マスターがパラシュに問いかける
隊のことだけを考えれば、 避けて進めばいいだけだ
しかし、この山道は 街と街を繋ぐ重要な道である
道が塞がれていれば、 商人などの馬車は 進むことができないだろう
【パラシュ】 ここまで大きな岩は、さすがに…
だが、マスターは言う とても卑怯なことだけど、 あえて言わせてもらうよ
ここで簡単に諦めて進んでも、 本当に君の思い描く理想に 辿り着けるのかい?
【パラシュ】 …!
君の目指した理想の存在は こんなとき、 すぐに諦めるのかな?
マスターの言葉を聞いたパラシュは、 斧を取り出し、振り上げた
【パラシュ】 ボクの目指した理想は… ここで引き返したりはしない 断ち切るはずだ!
マスターの言葉に 何かを感じた彼女は、 巨大な岩を見事に粉砕するのだった
【パラシュ】 ……できた
パラシュのおかげで道が開け、 街へ進む中で マスターはパラシュに語る
もしかしたらさっきの巨岩は、 理想の彼女でさえも どうする事も出来ないかも知れない
でも君にならできると思ったんだ そして、君は出来た いや、君だから出来たことなんだ、と
【パラシュ】 ボクだから…
マスターは言う
君は理想の彼女を追い求めていたけど 君にしか出来ないことを 極めていけばいいんじゃないかな?と
【パラシュ】 !!
マスターの言葉に、 心がフッと軽くなる彼女
【パラシュ】 今までは…
【パラシュ】 理想の極致に辿り着こうと、 全てを犠牲にして 突き進んできた…
【パラシュ】 そうでもしないと、 頂には絶対に辿り着けないと 思っていたから
【パラシュ】 でも… マスターのおかげで そうじゃないと思えるようになった
【パラシュ】 ボクにはボクの道がある その先にある頂へ繋がる道が、 どれほど厳しいものでも…
【パラシュ】 誰かが隣で支えてくれたら、 登れるかも知れない
【パラシュ】 いや、きっと登れる
【パラシュ】 そう思えるようになったよ
【パラシュ】 キミのおかげでね
…と、 はにかんだ笑顔で マスターを見つめる彼女だった
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