520271212 アハト 『義眼』零戒視
任務中の戦闘を終え 一息ついて態勢を立て直すマスター達
【アハト】 …………
姫達の輪から外れ ひとりぽつんと立っているアハト
そんなアハトを見て マスターはふとあることを思いつく
【アハト】 …? どうしたんですか?
アハトに、姫達と交流してみては どうだろうかと持ち掛けるマスター
【アハト】 そのこと、ずっと考えてたんですか
慣れてないだけって言ってたから 少しずつ始めてみたらどうかな? と思ったのだとマスター
【アハト】 空き時間であれば、まぁ
アハトが返答を言い切る前に 周囲で聞き耳を立てていた 姫達が押し寄せてくる
アハトを取り囲む姫達が やったーと喜んでいる
【アハト】 ???
突然のことに困惑するアハト
姫達のほうはアハトと 仲良くなる機会を伺っていたらしい
【アハト】 空き時間に、とは言いました けど、今は任務中です
アハトの正論に一瞬たじろぐ姫達 しかし誰かがもうすぐお昼の時間 と言い始める
【アハト】 ごはんを食べながら、なら …そうですね
アハトの了解が得られ 昼食の支度を始める姫達
【アハト】 …なんだか任務の準備よりも みんなの行動が的確な気がします
こういうところの団結力は 戦闘時をも上回るからね と笑って返すマスター
でも、それもみんなが アハトと仲良くなりたいからなんだ とマスター
【アハト】 仲良く…
そうこうして始まった アハトとの交流会を兼ねた昼食
【アハト】 …むぐむぐ
アハトはマスターとの食事と同じく 黙々と料理を食べていた
その姿がかわいい! と姫達は大盛り上がりなのだが 本人は意に介していない様子だ
【アハト】 もぐもぐ、ごくっ
アハトとの交流なのか ただアハトを眺める集まりなのか マスターにはわからない
そうこうしていると 姫達はアハトのどんなところが 良いと思っているのか話し始める
「ちっちゃくてかわいい!」 「腕がカッコイイ!」 「クールな感じがステキ!」
姫達は思い思いの言葉を述べる 当のアハトはぽかんとした表情で それを聞いていた
【アハト】 …………
今こそ交流のための好機 とマスターはアハトにも 君は何かないかな?と促してみる
【アハト】 何か…何か、ですか
いきなりは難しかったかな とマスターはアハトに声をかける
【アハト】 いえ、その、 私はみんなのことを知らない それを再認識しました
【アハト】 厳密には、 知ろうとしていませんでした みんなのことを見ていませんでした
アハトは何ひとつ隠すことなく まっすぐに発言する
【アハト】 だから、私は みんなの良いところが わからな――
「じゃあこれから知ってほしいな」
アハトの言葉が結論に辿り着く前に 姫のひとりが放った言葉
【アハト】 知る…あの、私は――
私も、私も! と次々アハトへ向けて 自己アピールを始める姫達
【アハト】 だから私は…
何かを言いかけて止めたアハト その表情は笑っているようにも 泣いているようにもマスターは感じた
【アハト】 …慣れては、いないんです
マスターは、姫達へ向けて アハトの耳は10個もないんだから とさすがにやんわり制止する
交流してみようとは言ったけど こんなに盛り上がるとは… と苦笑するマスター
【アハト】 …団結力、ですね
アハトのその返答は 今までになく優しいものだった
【アハト】 お昼、そろそろ終わりです 任務に戻りましょう
主賓であるアハトの言葉に 「はぁい」と姫達は不満そうに答える
【アハト】 また、ごはんを食べましょう
小さく呟くアハト マスターはその姿を微笑ましく 見守るのだった
【アハト】 はあっ!
どんな手を使ってでも戦う そう表現できそうな アハトの独特な戦闘スタイル
それに加えて今のアハトは さらに洗練された動きをしている
【アハト】 これも作戦の内なのかは わかりませんが、上手くいってます
アハトの言葉の意味が すぐには理解できなかったマスター
しかし、アハトの動きから気付く
【アハト】 意識が向くようになれば 立ち回りにも変化が出ます
冷静に自身の戦いを評価するアハト それは戦闘能力の高い彼女だから 自覚できるのだろう
アハトは指示よりも先に 姫達の動きを読み、戦っている
だから、一番遠くで起きた 不測の事態にもすぐ気付く
【アハト】 っ!
マスター達を取り囲んでいた異族が 一部、姫達の攻撃を掻い潜り 陣形の内側へと入り込む
指揮を執るマスターを狙う異族 しかし、近くにいたキル姫が それを阻止する…
だが、その結果 マスターを助けた姫が態勢を崩す
助けられたばかりだというのに と、自分でも思いながら 姫の前に立つマスター
【アハト】 マスターが無理をする必要はないです
【アハト】 私なら、届きます
【アハト】 もっと、頼ってください
【アハト】 私は、仲間なんですから
そういうところが アハトの良いところ、だよね と思わず言ってしまうマスター
【アハト】 …っ!
【アハト】 今は戦闘中なんですから そういうのは、無しです
アハトとマスター 双方の信頼が共鳴したその時 アハトに新たな力が宿る
【アハト】 『義眼』零戒視!!!
力を解放したアハトは 異族を蹴散らすのだった
戦闘後、一息つくキル姫達 以前とは違い、アハトを中心に 自然と輪ができていた
【アハト】 …………
マスターはその光景に 自分のことのように嬉しいと述べる
【アハト】 自分のこと、じゃないんですか?
【アハト】 そこで不思議そうな顔をする マスターのほうこそ不思議です
【アハト】 だって、ついさっき マスターは死にかけたんですよ
【アハト】 …自分が死にかけても 誰かを気にするなんて、 そんな人はあまりいません
そうかな とマスター
【アハト】 そうです
【アハト】 でも、そういう人のそばにいるのは 悪くないとも、思ってます
直球なアハトの発言 彼女自身はあまり深く考えず 言っているようだった
【アハト】 …………?
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